以前、抗がん剤治療後の神経障害(CIPN)の評価方法としてVASが有用であることを紹介しました。
CIPNは、化学療法によって引き起こされる副作用の一つで、手足のしびれや痛みなどの症状が現れることがあります。
これらの症状は、患者さんの日常生活に大きな影響を与えることがあります。
しかし、CIPNの診断や評価は複雑で、医師による評価だけでは正確な判断が難しいことがあります。
そこで、今回紹介する論文では、患者さん自身が評価する質問票(PNQ)を用いて、CIPNの評価を行うことができるかどうかを調べています。
PNQは、患者さん自身が自分の症状を評価することができる質問票で、CIPNの診断や治療決定に役立つ可能性があるようです。
この論文は、乳がん患者さんにとって非常に重要な内容です。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
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今回紹介する研究の概要
今回紹介する論文は、患者さん自身が評価する質問票(PNQ)を用いて、CIPNの評価を行うことができるかどうかを調べた内容になります。
「Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91」 2009年の少し古い論文になります。
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方法
この研究では、300人の女性が参加しました。
彼女たちは、乳がんの初期治療としてタキサン系の化学療法を受けました。
研究者たちは、化学療法前後に、患者さん自身が評価する質問票(PNQ)や他の質問票でCIPNの評価を行いました。
Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91
PNQは、患者さん自身が自分の症状を評価することができる質問票です。
この質問票は、感覚障害と運動障害の2つの項目からなり、患者さんはそれぞれの項目について、自分の症状をA(無症状)からE(重度)までの5段階で評価します。
また、この研究では、統計的な方法も用いられました。
具体的には、質問票の完成率や医師と患者さんによるCIPNの評価の一致度、PNQと他の質問票との関連性などが調べられました。
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結果
Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91
Table 1は、この研究に参加した300人の女性の患者さんと腫瘍の特徴を示しています。
表によると、患者さんの平均年齢は51.7歳で、乳房温存手術を受けた人が57.7%、乳房切除手術を受けた人が42.3%でした。
また、リンパ節転移が1~3個の人が55.0%、4~9個の人が26.7%、10個以上の人が18.3%でした。
さらに、表によると、放射線治療を受けた人が52.3%、エストロゲン受容体陰性の人が74.7%、プロゲステロン受容体陰性の人が13.3%でした。
HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)の状態も示されており、陰性の人が27.3%、1+が16.7%、2+が6.0%、3+が18.7%でした。
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Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91
Table 2は、患者さんが自分で評価したPNQと、医師が評価したNCI-CTCのスコアの分布を示しています。
この表から、PNQのスコアはAからEまでの全範囲に分布しているのに対し、NCI-CTCのスコアのほとんどは0と1の間に分布していることがわかります。
つまり、医師のCIPNの評価としては症状が強くないという判断になっています。
特に、10人の患者さんが感覚障害について最大の重症度(E)を報告しましたが、9人の医師はそれらの患者さんが無症状(0)であると評価し、1人の医師は軽度(1)であると評価しました。
同様に、9人の患者さんが運動障害について最大の重症度(E)を報告しましたが、すべての医師はそれらの患者さんが無症状(0)であると評価しました。
この表から、医師は患者さんが自分で報告するCIPNの重症度を過小評価する傾向があることがわかります。
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Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91
Table 3は、Spearmanの相関係数による、各サブスケールスコアの相関行列を示しています。
この表から、PNQの感覚スコアと運動スコアは、それぞれNtxサブスケールスコアと強く相関していることがわかります(r=0.66およびr=0.51)。
さらに、PNQの感覚スコアはNCI-CTCの感覚スコアとも有意に相関しています(r=0.44)が、PNQの運動スコアはNCI-CTCの運動スコアとは相関していません(r=0.16)。
この表から、PNQは他の質問票とも妥当な関連性があることがわかります。
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Shimozuma K, et al. Feasibility and validity of the Patient Neurotoxicity Questionnaire during taxane chemotherapy in a phase III randomized trial in patients with breast cancer: N-SAS BC 02. Support Care Cancer. 2009 Dec;17(12):1483-91
Table 4は、FACT/GOG-Ntx、PNQ、およびNCI-CTCの各サブスケールの平均スコアが時間の経過とともにどのように変化するかを示しています。
この表から、各サブスケールのスコアは時間の経過とともに増加していることがわかります。
特に、PNQの感覚スコアと運動スコアは、治療サイクルが増えるにつれて有意に増加しており、時間の経過とともにCIPNが悪化していることを示しています。
この表から、PNQは時間の経過とともに患者さんが感じる症状の変化を測定する能力があることがわかります。
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結論
この研究では、「患者神経毒性質問票(PNQ)」という新しい質問票が使用されました。
この質問票は、患者さん自身がCIPNの程度を評価するために作られたものです。
研究の結果、PNQはCIPNの診断と評価に有用であることがわかりました。
また、医師は患者さんが自分で報告するCIPNの重症度を過小評価する傾向があることもわかりました。
これは、患者さん自身が日常生活におけるCIPNの影響についてより敏感であるためです。
一方、医師は感覚異常や筋力低下の絶対的なレベルを重視する傾向があります。
この研究から得られた知見は、医師が治療に関する決定を下す際に役立ちます。
例えば、薬剤の量を調整したり、治療を中止したりする必要があるかどうかを判断する際に、PNQのスコアが参考になります。
また、患者さん自身もPNQを使用してCIPNの程度を評価し、医師と共有することで、より適切な治療が受けるようになるかもしれません。
もし乳がん治療中でCIPNのような症状がある場合は、医師に相談してみましょう。
そして、PNQを使用して自分自身でCIPNの程度を評価し、医師と共有することも検討してみてくださいね。
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CIPNの発症,症状,評価についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
CIPNの予防・治療についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
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