今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの睡眠障害に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。
前回は、がんの倦怠感に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介しました。
軽度の有酸素運動や抵抗運動を2~6ヶ月程度行うことで、倦怠感の軽減が認められるようであるという結果でしたね。
がん患者の問題点の一つとして、他には睡眠障害が挙げられます。
がんによる痛みや倦怠感によって睡眠障害になったり、治療に伴う嘔気などの副作用から睡眠障害になったりなど多くの場面で出現します。
さらに、がん患者さんは精神症状も出現しやすいですので、それにともなって不眠になることも少なくありません。
そのような睡眠障害に対しては、睡眠薬が処方されることが多いですが、薬に頼りたくないという方も多いですので、運動で改善できるのであれば素晴らしいですね。
そこで今回は、がんの睡眠障害に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。
記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。
・がんサバイバー,進行がん,小児がんに対して運動療法を行うことが睡眠障害を改善させるという報告があり、運動は,睡眠障害の軽減に有用かもしれないと結論付けられている。
・他のガイドラインでも乳がんや造血器腫瘍患者に対して、運動が睡眠障害に効果的であり、推奨されている。
睡眠障害に対する運動療法の効果
主に乳がんや悪性リンパ腫などのがん治療中・後の患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,睡眠に対するヨガの効果は少なからずみられたが,対照群との比較では差は見られませんでした。
ヨガの介入期間は約7 週間(範囲:6 週 間~6 カ月),1 回約30 分です。
急性リンパ白血病の小児がん 治療中の患者を対象に,文献的考察を行った結果,1 件のみ,運動介入は睡眠の改善に有効でした。
運動プログラムの種類は多様で,介入期間は6週間~2 年,週1~5 回,1 回15~120 分です。
造血器腫瘍,固形がんの治療 中・後の患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,運動介入群は対照群と比較して,睡眠障害の改善に有効でした。
運動は,有酸素運動,ウォーキング,ヨガ,抵抗運動,混合運動 です。
ヨガの睡眠障害の改善に関する臨 床試験や無作為化比較試験の文献的考察を行なった結果,がん患者やがんサバイバーに対するヨガの介入は睡眠障害の改善や睡眠の質を改善させていました。
低・中等度のヨガで呼吸療法や瞑想などを含んだセッションを4~ 26 週間,週1~5 回,1 回50~120 分実施することで,睡眠障害や睡眠の質の改善に効果があるかもしれないと結論づけています。
よって,運動は,睡眠障害の軽減に有用かもしれないと結論付けられています。
私たちもよく不眠の患者さんに、日中運動することを推奨することがありますが、その根拠になる内容ですね。
適切な運動方法や運動時間がはっきりしないのが残念ですが、今後の研究に期待したいところですね。
どこでもエクササイズできる Activ5他のガイドラインの記載内容
American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines(2010)では,化学療法や放射線治療中の乳がん患者の睡眠障害の改善に運動は有効であると記載されています。
しかし,成人の造血幹細胞移植治療中の睡眠障害の改善には有効ではなく、研究数に限りがあり推奨には至っておりません。
がんのリハビリテーションガイドライン(2013)では,乳がん術後の化学療法や放射線治療中・後の患者に対して,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは睡眠障害を改善させるため,行うよう強く推奨されています(推奨グレード A)。
また,造血器腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,指導下もしくは在宅での自主トレーニングにてエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,睡眠障害の改善がみられるため,行うよう推奨されています(推奨グレードB)。
他のガイドラインでも睡眠障害に対する運動療法はその効果が認められていたり、推奨されているようですね。
他の項目でもそうですが、やはり乳がんや造血器腫瘍は研究が盛んにおこなわれているため、その効果がわかっており推奨されることが多くなっていますね。
さらに多くのがん種で、その効果がわかったらいいですね。
どこでもエクササイズできる Activ5・がんサバイバー,進行がん,小児がんに対して運動療法を行うことが睡眠障害を改善させるという報告があり、運動は,睡眠障害の軽減に有用かもしれないと結論付けられている。
・他のガイドラインでも乳がんや造血器腫瘍患者に対して、運動が睡眠障害に効果的であり、推奨されている。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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