がんの倦怠感に対する運動療法の効果【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの倦怠感に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。

前回は、がんの痛み、消化器症状に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介しました。

がんの痛み、消化器症状に対する運動療法の効果

2022年7月27日

痛みに関しては、乳がんや頭頸部がん患者の治療に関連した肩の痛みの軽減が期待できましたね。

消化器症状や呼吸器症状に対しての効果の記載はあまりありませんでしたが、尿失禁などの泌尿器症状に対して効果があるという結果でした。

 

がん患者の問題点の一つとして、他には倦怠感が挙げられます。

倦怠感とは、いわゆる「だるさ」ですね。

 

身体がだるいとなかなか動けませんし、だるさには身体的以外にも、精神的や認知的な倦怠感も含まれます。

「やる気が起きない」なんかが、精神的倦怠感にあたります。

 

倦怠感はがん患者の多くが経験する症状であり、予後にも影響すると報告されていますので、運動でそれが改善できたら素晴らしいですね。

 

そこで今回は、がんの倦怠感に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの倦怠感に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介。

・大腸がんを除く,乳がんや肺がん,造血器腫瘍,さまざまながん 一般の症例に対して,がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であると考えられた。

・まとめた印象としては、軽度の有酸素運動や抵抗運動を2~6ヶ月程度行うことで、倦怠感の軽減が認められるようである。

・高強度の運動は倦怠感にとっては逆効果になる可能性もあるようですので注意しましょう!

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がん種混在を対象とした効果

まずは、がん種が混合された患者さんを対象とした報告をまとめています。

 

①造血器腫瘍,前立腺がん,乳がんの 治療中・後の患者を対象に行ったメタアナリシスでは、治療中(43 件, 3,235 例)と治療後(27 件,1,646 例)の運動介入群は対照群と比較して有意に倦怠感が軽減していました。

運動介入群は指導下あるいは自宅で実施されており,介入期間は11.7~ 12.6 週間,週2.9~3.4 回,1 回42.3~49.6 分でした。

 

② コクランのシステマティックレビューでは,乳がん,前立腺がん, 造血器腫瘍,その他のがんを含んだ治療中の患者を対象にメタアナリシスを行っています。

その結果,中等度あるいは激しい運動は軽 度の運動に比較して,倦怠感の軽減に有意な効果を示しています。

運動は,ウォーキング 単独,サイクリング,抵抗運動,耐久運動,ヨガ,気功などの併用がありました。

 

③コクランのシステマティックレビューでは,がん治療中・後の患者 を対象に,メタアナリシスを行っています。

その 結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果がありました。

乳がんと 前立腺がんにおいて倦怠感の軽減に運動は有効でしたが,造血器腫瘍では有効でなかったようです。

さらに,有酸素運動は倦怠感の軽減に有効でしたが,抵抗運動や代替型運動 では有効ではなかったようです。

 

⑤がん治療中・後の患者(悪性リン パ腫1 件,乳がん12 件)を対象に,ヨガの効果を比較したメタアナリシスにおいて、ヨガは倦怠感の軽減に有意な効果があったようです。

介入期間は約7 週間(範囲:6 週間~6 カ月)で,1 回約30~120 分でした。

 

⑥乳がん,前立腺がん,頭頸部が んの治療中・後の患者を対象に,メタアナリシ スを行った結果,抵抗運動はがんによる倦怠感の軽減に有効でした。

介入 期間は12 週間(2 件),4~6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,主に週2~3 回でした。

 

⑦乳がん(8 件)やその他のがん(5 件)を対象に,メタアナリシスを行った結果,太極拳(8 件)や気功(5 件)は,倦怠感の軽減に有効であったようです。

介入期間は 5~12 週間でした。

 

⑧造血器腫瘍,固形がんの治療 中・後の患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有意な効果がみられました。運動は,有酸素運動(14 件),ウォーキング(19 件),ヨガ(9 件),抵抗運動(3 件),混合運動(22 件),その他(5 件)でした。

 

⑨ 乳がん(6 件),前立 腺がん(2 件),悪性リンパ腫(1 件),その他多様ながん(2 件)患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,指導下の有酸 素運動と抵抗運動の混合,または指導下の有酸素運動,抵抗運動とストレッチングの混 合運動は,倦怠感を有意に軽減させていました。

介入期間は3~48 週間,週1~5 回,1 回 20~120 分でした。

 

様々ながん種に対して、多くの運動療法が倦怠感の軽減の効果が認められています。

この結果だけを見ると、どのがん種であっても、どんな運動方法でもよいので実施するのが、まずは大事ということになりそうですね。

ただし、実施期間は数か月行っているものばかりなので、がんばって長期間行うことが必要なようです。

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乳がん患者に対する効果

①化学療法や放射線治療中の乳が ん患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,運動介入群が対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効でした。

特に,1 週 間に90~120 分以上の比較的軽い運動(<12 MET h/week)は激しい運動より倦怠感 の軽減に有効でした。

運動は,有酸素運動(16 件)と抵抗運動(7 件)の単独や併用, ヨガ(3 件)でした。

介入期間の平均は17±8 週間(範囲:5~26 週間),1 週4±1 回 (範囲:2~6 回),1 回39±10 分(範囲:23~60 分)でした。

 

②化学療法中の乳がん患者を対象に, メタアナリシスを行った結果,有酸 素運動による運動介入群(522 例)が対照群(492 例)と比較して,倦怠感が有意に軽減していました。

 

③25 年間の乳がんサバイバーに関する51 件の 報告の文献的考察を行った結果,乳がんサバイバーに対する運動介入は,倦 怠感の軽減に有効でした。

主な運動は有酸素運動と抵抗運動でした。

 

乳がん患者さんにの倦怠感に対する運動療法の効果は認められるようですね。

激しい運動よりも比較的軽めの運動の方が効果があるのは驚きましたね。

疲労がたまりすぎない程度の運動で、リフレッシュするくらいが倦怠感改善に望ましいのかもしれないですね。

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肺がん患者に対する効果

①肺がん患者を対象にした 10 件の文献を分析では,7 件が倦怠感の軽減に運動が有効でした。

運動で最も多かったのが有酸素運動で,その他にエルゴメーター, 呼吸運動,リラクセーションなどでした。

介入期間は6~14 週間,週2~5 回,1 日 1~2 回,1 回5~45 分でした。

 

②手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,メタアナリシス を含む文献的考察を行った結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感が有意に軽減していました。

すべての研究で有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング) が活用されており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)でした。

多くの研究で運動は週2 回,1 日2 回,1 回10~45 分行われていた。

 

肺がん患者さんにの倦怠感に対する運動療法の効果は認められるようですね。

こちらもウォーキングなどの有酸素運動が主体となっているので、やはり軽めの運動が効果があるようですね。

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造血器腫瘍患者に対する効果

①幹細胞移植治療前・中・後の 造血器腫瘍患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効でした。

運 動は,耐久運動や抵抗運動,日常生活の身体活動,漸進的リラクセーションやストレッ チングでした。

介入期間は4 週間~6 カ月でした。

 

②悪性リンパ腫の治療前・中・ 後の患者に身体活動とフィジカルフィットネスの2 種類の介入を行った13 件(2,450 例) の文献的考察を行った結果として,有酸素運動は実行可能で安全な介入であり,倦怠感の軽減に対して有効であったと結論付けています。

しかし,低レベルの身体活動やフィジカルフィットネスは,倦怠感を助長させていました。

 

③幹細胞移植治療中の造血器腫瘍 患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,運動介入群は対照群と比較して,倦怠感の軽減に有効でした。

主な運 動は,有酸素運動や抵抗運動,混合運動で,運動強度は軽度・中等度でした。

介入期 間は4 週間~6 カ月,週2~10 回,1 回20~70 分でした。

全体的に運動介入プログラ ムは幹細胞移植治療中の造血器腫瘍患者に対して安全であることが報告されていました。

 

④コクランのシステマティックレビューでは,造血器腫瘍患者 (幹細胞移植中6 件含む)を対象に,有酸素運動の介入に関するメタアナリシスを行った結果,有酸素運動介入群は対照群と比較 して,倦怠感の軽減に有効でした。

主な有酸素運動はさまざまな歩行プログラムで, 運動強度や介入期間は異なっていた。

 

造血器腫瘍患者さんに対して、有酸素運動は安全に実行可能で、倦怠感に対して効果があるということですね。

一方で、低レベルの身体活動やフィジカルフィットネスは,倦怠感を助長させていましたということは、ある程度の負荷はかけないといけないということでしょうか??

倦怠感にはウォーキング程度の軽い運動で効果があると思っていますけど、どうなんでしょうね?

 いかもですね。

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大腸がん患者に対する効果

①大腸がん患者を対象としたメタアナリシスを行った結果,運動介入群 は対照群と比較して,倦怠感を軽減しませんでした。

運動は,中等度・高度の有酸素運動と 抵抗運動でした。

介入期間は2 週間(2 件),12 週間(2 件),16 週間(1 件),週2~ 5 回,1 日20~50 分であった。

 

大腸がん患者さんに対しては、メタアナリシスで運動の倦怠感改善効果を認めなかったとのことですね。

1編だけですが、メタアナリシスなのである程度信用はできると思います。

運動方法が中~高強度となっていますので、やはり負荷が強い運動だと効果が少ないのかもしれないですね。

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前立腺がん患者に対する効果

①前立腺がん患者を対象に運動介入 を行った12 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,運動介入は倦 怠感の軽減に有効でした。

運動は,主に有酸素運動や抵抗運動の単独や混合 運動などで,介入期間は4~52 週,週2~5 回でした。

 

アンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者を対象に,副作用症状の軽減に運動を介入した10 件文献的考察を行った結果,運動介入は倦怠感の軽減に有効でした。

運動は,有酸素運動,抵抗運動,ヨガ,ストレッチングなどでした。

介入期間は12~24 週,週1~5 回,1 回15~60 分でした。

 

前立腺がんも運動介入による倦怠感の効果があるようですね!!

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まとめ

以上より,運動は,大腸がんを除く,乳がんや肺がん,造血器腫瘍,さまざまながん 一般の症例に対して,がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であると考えられます。

ただし, 運動の種類や強度,回数,運動実施の時期,期間,倦怠感の尺度などによって倦怠感に対する効果は異なると考えられます。

また,主に有酸素運動や抵抗運動が活用されており,こ れらの運動は既存のガイドラインで推奨されている運動でもあり,今後臨床現場や研究 での活用が期待できます。

 

まとめた印象としては、軽度の有酸素運動や抵抗運動を2~6ヶ月程度行うことで、倦怠感の軽減が認められるようですね。

軽度の運動なので、身体的な効果だけでなく、精神的な倦怠感に対しても効果があるのかもしれません。

高強度の運動は倦怠感にとっては逆効果になる可能性もあるようですので注意しましょう!

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの倦怠感に対する運動療法の効果について記載している内容を紹介。

・大腸がんを除く,乳がんや肺がん,造血器腫瘍,さまざまながん 一般の症例に対して,がん治療中・後の倦怠感の軽減に有用であると考えられた。

・まとめた印象としては、軽度の有酸素運動や抵抗運動を2~6ヶ月程度行うことで、倦怠感の軽減が認められるようである。

・高強度の運動は倦怠感にとっては逆効果になる可能性もあるようですので注意しましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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