フレイル肝がん患者の病院内での運動の効果は?

今回は、フレイルに陥った肝細胞がん患者さんの病院内での運動の効果について調査した論文を紹介します。

前回はがん患者さんに推奨される運動時間について解説しました。

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2022年4月17日

なかなか高齢がん患者さんは、推奨される運動時間には達していないことも紹介しましたね。

高齢がん患者は運動に意欲はあるが実施率が低い!

2022年4月16日

日本でのがんリハビリといえば、残念ながら外来リハビリは認められていないので、入院中のリハビリを意味することが多いです。

それでは、入院中に病院内で行うリハビリは効果はどうなのでしょうか?

そこで今回は、フレイルに陥った肝細胞がん患者さんの病院内での運動の効果について調査した論文を紹介します。

まとめ
・フレイルに陥った肝細胞がん患者さんの病院内での運動の効果について調査した論文を紹介。

・入院中の肝細胞がん患者さんのフレイルやサルコペニアは約70%の有症率であった。

・20-40分間の運動を平均4日間行うことでも、フレイルを改善させる因子となっていた。

・さらにフレイルの改善には女性であり、BCAAを摂取することが関係していた。

・短期間の入院でも運動を行うことが重要であり、BCAAの摂取も検討したほうがいいかもしれない。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、フレイルに陥った肝細胞がん患者さんの病院内での運動の効果について調査した内容になっています。

「Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194」、2021年に発行された新しい論文です。日本で行われた研究ですね。

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対象

We enrolled 181 consecutive patients with HCC who are admitted for HCC treatment from December 2018 to March 2020. Hospitalized patients who met the following criteria were included in this study: (1) 20 years of age or older, (2) agreed with the evaluation of LFI as at admission, (3) were treated with hepatic arterial infusion chemotherapy, TACE, or small-molecule tyrosine kinase inhibitors, and (4) hospitalized for 6 days or more. Patients were excluded if they had: (1) hepatic encephalopathy grade 2–4 according to the West Haven Criteria [30], (2) risk of esophageal variceal rupture, (3) heart failure, or (4) respiratory failure.

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

2018年12月から2020年3月までに肝がん治療のために入院している患者181名を対象としています。

条件は(1)20歳以上、(2)入院時のLFIの評価に同意、(3)肝動脈注入化学療法、TACE、低分子チロシンキナーゼ阻害薬による治療、(4)6日以上入院となっています。

除外基準は(1) West Haven Criteria [30]による肝性脳症グレード2~4、(2) 食道静脈瘤破裂のリスク、(3) 心不全、または (4) 呼吸不全を有する患者となっています。
医師、看護師、理学療法士により全患者に運動が推奨された。運動に同意した患者を運動群(n = 114)、同意しなかった患者を非運動群(n = 67)とした。

 

患者さんの特徴としては、運動群の患者さんは非運動群の患者さんより有意に高齢でした。

男女比やBMIは両群間に有意差はありませんでした。

肝疾患の病因、肝細胞癌の治療法、腫瘍節転移(TNM)ステージは、両群間に有意差は認められませんでした。

アルブミン・ビリルビン(ALBI)値や分岐鎖アミノ酸(BCAA)補給の有無も,両群間に有意差を認めていません。

ヘモグロビンA1c(HbA1c)値や推定糸球体濾過量(eGFR)などの生化学的検査についても、運動群と非運動群で有意な差は認められませんでした。

運動群では、ベースライン時のLFIスコアが非運動群に比べ有意に高かったが、プレ・フレイル/フレイルの有病率は両群間に有意差はありませんでした。

LFIは肝疾患の患者さんに使用されるフレイルの評価方法でしたね。

①握力②5回立ち座り③3種類のバランステストの3つの項目の点数で、フレイルの有無を判定します。

がん患者の運動機能低下~フレイルについて~

2022年2月21日

70-80%の患者さんがプレフレイルかフレイルに該当していました。

 

また、サルコペニアや内臓脂肪面積(VFA)の有無についても、両群間に有意な差はありません。

60-80%の患者さんがサルコペニアに該当していました。

がん患者の運動機能低下~サルコぺニアについて~

2022年2月22日
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方法

Stretching Patients performed a series of stretches that targeted the muscles of the quadriceps femoris muscles, hamstrings, hip adductor muscles, gastrocnemius, back muscles, and shoulder muscles. Each stretch was held for 10–20 s. Patients progressed each stretch until a feeling of tightness and slight discomfort was felt [14,15]. The physical therapist showed a role model of the stretch and checked the stretching form, tightness, and discomfort. The total stretching time was 3–5 min .

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

運動は20-40分間/日で、実施期間は平均4日、運動実施率の中央値は100%となっています。

大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節内転筋、腓腹筋、背筋、肩の筋肉をターゲットとした一連のストレッチを患者を3~5分実施しています。

Resistance Training The training included the following four generic exercises: (1) hip hinge movement (good-morning exercise), (2) towel air pull-down, (3) squats, and (4) calf raises. One set comprised of 10 repetitions, and a maximum of 3 sets was performed. Physical therapists adjusted the method of exercises and environment to be able to complete 10 repetitions for the exercise. Exercise load was own weight or own manual resistance. The total resistance training time was 5 min

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

レジスタンストレーニング トレーニングは(1)ヒップヒンジ運動、(2)タオルエアープルダウン、(3)スクワット、(4)カーフレイズであるの4種類を10回を1セットとし、最大3セットまで実施しています。

レジスタンストレーニングの総時間は5分です。
バランストレーニングは平行棒と手すりを使い、片足立ちとタンデム立ちの両方で実施しています。

片足立ち、タンデムとも1分間は体勢を維持して、バランストレーニングの総時間は5分です。

有酸素運動は,自転車エルゴメーター,リカンベントクロストレーナー,または歩行で実施しています.

運動強度は、Borgスケールで11~13点の自覚的労 働感度評価を維持するように調整されました。

運動時間は、徐々に15分まで実施できるように増加させています。

Nutritional care for patients was conducted according to the guidelines on nutritional management for Japanese patients with liver cirrhosis [34]. Details of these guidelines include: (1) energy requirements of 25–35 kcal/kg (ideal body weight) per day, (2) required protein intake of 1.0–1.5 g/kg/day (if there is no protein intolerance), (3) a required fat intake with a lipid energy ratio of 20–25%, and (4) a 200 kcal late evening snack as a divided meal as recommended by the Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Liver Cirrhosis

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

栄養ケアは、「日本人の肝硬変患者の栄養管理に関するガイドライン」に従って実施しています。

(1)必要エネルギー量は1日25~35kcal/kg(理想体重)、(2)必要タンパク質摂取量は1.0~1.5g/kg/日(タンパク質不耐性がない場合)、(3)脂質エネルギー比率20~25%の必要脂肪摂取量、(4)肝硬変に関するエビデンスに基づく臨床実践ガイドラインで推奨されている分割食として200kcal深夜間食を実施する、などです。

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結果

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

入院日から退院日のLFIの変化を調査したところ、運動群では非運動群に比べ、LFIが有意に低下していました。

つまり、運動を行った方がフレイルが改善しやすいという結果です。

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

LFI の改善に関連する独立因子を、運動の有無、性別、肝機能で解析したところ、運動を行うこととと女性がLFIの改善に関連する独立因子として同定されました。

つまり、肝機能に関わらず、入院中に女性が運動を行うとフレイルが改善されやすいということです。

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

決定木分析という解析を行って、LFIの改善に関連する項目を検討しています。

LFIの改善は、運動群の患者の74%に見らました。

一方、運動しない群では、LFIの改善は54%にみられています。

運動しない群では、LFIの変化に関する2番目の分岐変数として性別が選択されました。

LFIの改善は、女性の73%、男性の41%に見られています。

女性では、BCAA補給がLFIの変化に関する3番目の分岐変数として選択されました。

BCAAを摂取した患者の89%でLFIの改善が見られ、BCAAを摂取していない患者の65%でLFIの改善が見られた。

つまり、フレイルの改善には運動を行うことが最も選択されますが、運動を行わない場合には女性であり、BCAAという栄養摂取を行っているとフレイルが改善しやすいという結果です。

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結論

In conclusion, we showed that in-hospital exercise improved frailty in patients with HCC, which was confirmed by the propensity score matching analysis. In addition, BCAA supplementation was a factor associated with the improvement of frailty in female patients with HCC. Thus, in-hospital exercise may improve physical function in patients with HCC. Moreover, BCAA supplementation may be beneficial for female patients with HCC.

Tsuchihashi J, Koya S, Hirota K, et al. Effects of In-Hospital Exercise on Frailty in Patients with Hepatocellular Carcinoma. Cancers (Basel). 2021 Jan 7;13(2):194

結論として、病院内の運動が肝細胞がん患者のフレイルを改善することを示した。

また、BCAA の補給は女性肝細胞がん患者の虚弱体質の改善と関連する因子であった。

運動を行うことが最も優先されますが、女性に対してはBCAAという栄養補給を行うことでさらに効果が期待できそうという結論でした。

結局、運動と栄養が大事ということは、どの論文でも紹介されているとおりですね。

4日間の運動でも効果があるということは、どんなに短期間の入院であっても運動したほうがいいということです。

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まとめ
・フレイルに陥った肝細胞がん患者さんの病院内での運動の効果について調査した論文を紹介。

・入院中の肝細胞がん患者さんのフレイルやサルコペニアは約70%の有症率であった。

・20-40分間の運動を平均4日間行うことでも、フレイルを改善させる因子となっていた。

・さらにフレイルの改善には女性であり、BCAAを摂取することが関係していた。

・短期間の入院でも運動を行うことが重要であり、BCAAの摂取も検討したほうがいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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