サルコぺニアの診断基準について~超音波の筋厚計測も含めて~

前回はサルコぺニアの定義、疫学、骨格筋量の評価方法について紹介しました。

サルコぺニアの定義、疫学、骨格筋量の評価方法について

2023年2月26日

サルコペニアの有病率は若年成人で8~36%、高齢成人で10~27%であり、筋量の評価としてCT、MRI、DXA、BIA、超音波が挙げられましたね。

 

それでは、サルコペニアは具体的にはどのように評価し、診断するのでしょうか?

診断基準は年々変化していますので、アップデートしていくことが必要です。

 

そこで今回は、サルコぺニアの診断基準について、超音波の筋厚計測も含めて紹介します。

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まとめ
・サルコぺニアの診断基準について、超音波の筋厚計測も含めて紹介。

・骨格筋量と筋力/身体機能の評価結果で診断を行う。

・EWGSOP2:スクリーニングにSARC-F、骨格筋量はDXA、筋力には握力または5回立ち上がりテスト、身体機能には歩行速度またはSPPB、TUG、400m歩行時間が推奨。

・AWGS2019:サルコペニア疑いは下腿周径でも診断可能。正確には、骨格筋量はDXAまたはBIA、筋力には握力、身体機能には歩行速度または5回立ち上がりテスト、SPPBが推奨。

・ISarcoPRM:運動機能には握力、5回立ち上がりテスト、骨格筋量には超音波を使用して大腿筋厚/BMI(STAR)を計測する。

・各施設が有する機器に応じて、評価を行っていくしかない。

サルコペニアの診断基準

サルコペニアの定義は、「骨格筋量の加齢に伴う低下に加えて,筋力および/または身体機能の低下」ですので、その診断基準にも骨格筋量と筋力/身体機能が使用されています。

日本サルコペニア・フレイル学会国立長寿医療研究センター. サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂

 

こちらに記載されている、2010年のEWGSOPから始まり、9つの診断基準が確認されております。

 

特に有名なのはEWGSOP、EWGSOP2、AWGS、AWGS2019の4つではないでしょうか。

 

骨格筋量の評価は必須であり、握力と歩行能力のどちらかが基準を満たさない場合がサルコペニアと診断されることが多いようです。

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EWGSOP2

サルコペニアの定義は、「骨格筋量の加齢に伴う低下に加えて,筋力および/または身体機能の低下」ですので、その診断基準にも骨格筋量と筋力/身体機能が使用されています。

 

日本サルコペニア・フレイル学会国立長寿医療研究センター. サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂

こちらは新しい診断基準であるEWGSOP2とAWGS2019の診断基準のカットオフ値になります。

 

EWGSOP2では、スクリーニングにSARC-Fが使用され、骨格筋量はDXA、筋力には握力または5回立ち上がりテスト、身体機能には歩行速度またはSPPB、TUG、400m歩行時間が推奨されています。

 

日本サルコペニア・フレイル学会国立長寿医療研究センター. サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂

SARC-Fは質問紙によるサルコペニアのスクリーニング法となります。

たった5問の質問に答えてもらうだけで、スクリーニングができるのでとても簡単です。

Strength(S;力の弱さ),Assistance walking(A;歩行補助具の有無),Rising from a chair (R;椅子からの立ち上がり),Climbing stairs(C; 階段を登る),Falls(F;転倒)について“まったく ない”から“とても難しい”まで 0~2 点で回答させ, その合計点(10 点満点)を算出します。

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AWGS2019

日本サルコペニア・フレイル学会国立長寿医療研究センター. サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂

近年使用される頻度が多いのは、こちらのAWGS2019ではないでしょうか?

 

個の診断基準のポイントとしては

  1. 骨格筋量の診断装置なしでサルコペニアのスクリーニング・診断を行い,サルコペニアのリスクがある対象者を簡便に特定する方法を推奨した。具体的には,筋力(握力)低下または身体機能(5回椅子立ち上がりテスト: 5 Chair Stand; 5CS)低下によって「サルコペニアの可能性あり」と診断できるようになっている。
  2. 骨格筋量の測定が可能な診療施設・研究施設では,基本的にAWGS2014 の診断基準を踏襲し,サルコペニア,重症サルコペニアの定義を明確にしている。
  3. 身体機能の評価方法として,通常歩行速度に加え,5CS,Short Physical Performance Battery(SPPB)を追加し,これら3つの測定法のうちいずれの方法で身体機能を評価しても可としている。
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ISarcoPRM(2020)

下腿周径での評価は簡便であり、骨格筋量と相関しているという報告もあるのですが、浮腫が強い患者さんに使用したりする場合には、正しく骨格筋量を反映していない可能性があります。

 

BIAやDEXAもまた、浮腫が強い患者さんに対する精度は疑問が持たれます。

 

かといって、サルコペニアの評価に毎回CTやMRIを使用することもあまり現実的ではありません。 

 

そこで最近では超音波を使用した筋量評価が注目されており、超音波での筋厚の結果をもとにしたサルコペニアの診断基準も作成されました。

Kara M, Kaymak B, Frontera W, et al. Diagnosing sarcopenia: Functional perspectives and a new algorithm from the ISarcoPRM. J Rehabil Med. 2021; 53(6):jrm00209.

具体的には高齢者のうち、握力:男性32kg未満,女性19kg未満および5回立ち上がりテスト:12秒以上の患者が運動機能低下ありとして、筋量の評価に進みます。

 

大腿筋厚を超音波で測定し、大腿筋厚/BMIでSonographic Thigh Adjustment Ratio(STAR)を計算します。

 

STARが男性1.4未満,女性1.0未満であれば筋量低下と判断され、サルコペニアと診断されます。

 

さらに、歩行速度が0.8m/s未満、起立不可であれば重症サルコペニアとなります。

Hida T, Ando K, Kobayashi K, et al.  Ultrasound measurement of thigh muscle thickness for assessment of sarcopenia. Nagoya J Med Sci. 2018 Nov;80(4):519-527

こちらが実際の超音波の測定方法と結果になります。

超音波の画像は慣れていないと難しいですが、この1点の測定であれば何とかなりそうな気がしますね。

 

今回はサルコペニアの診断基準について紹介しました。

施設の機器に応じて、評価を行っていくしかないですね。

機器がなければ下腿周径でも評価できますが、可能であればBIAか超音波で筋量評価は行いたいところですね。

まとめ
・サルコぺニアの診断基準について、超音波の筋厚計測も含めて紹介。

・骨格筋量と筋力/身体機能の評価結果で診断を行う。

・EWGSOP2:スクリーニングにSARC-F、骨格筋量はDXA、筋力には握力または5回立ち上がりテスト、身体機能には歩行速度またはSPPB、TUG、400m歩行時間が推奨。

・AWGS2019:サルコペニア疑いは下腿周径でも診断可能。正確には、骨格筋量はDXAまたはBIA、筋力には握力、身体機能には歩行速度または5回立ち上がりテスト、SPPBが推奨。

・ISarcoPRM:運動機能には握力、5回立ち上がりテスト、骨格筋量には超音波を使用して大腿筋厚/BMI(STAR)を計測する。

・各施設が有する機器に応じて、評価を行っていくしかない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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