骨転移患者は運動を行った方がいいのか?ダメなのか?

以前の記事では、骨転移患者さんが注意すべきがん種や部位、症状について解説しました。

注意すべき点はわかりましたが、では実際運動はしてもいいの?って気になりますよね。

今回は「がんのリハビリテーションガイドライン第2版」に記載されている、骨転移の運動療法について紹介します。

 

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ガイドラインでの推奨度

ガイドラインにおいて、骨転移によりADLやQOLが障害されている患者に対して、リハビリテーション治療(運動療法)を行うことを提案されています。

このガイドラインでは、骨転移の患者さんにリハビリテーション治療(運動療法)を行うことが効果があるという根拠の強さは「2C(弱い推奨、弱い根拠に基づく)」とされています。

 

やはり、以前紹介したような病的骨折や麻痺を生じる危険性があるので、特別な配慮が必要となっていますね。

実際のリハビリの場面でも、注意しながらリハビリを行うことは非常に重要だと感じておりましたが、実際にガイドラインでも弱くは推奨されているようです。

運動の実施に対して、リスクも高いので強くは推奨できないといったところでしょうか。

 

ここからは、骨転移患者さんのリハビリがどのような効果があるのか、詳細を見ていきましょう。

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機能予後の改善

機能予後の改善は、「重要度7、根拠の強さ:C」とされています。

機能予後の評価項目としては、椅子からの立ち上がりテスト、移乗などの介助量、ADL、筋力、歩行能力などが選択されています。

1つのランダム化比較試験、5つの観察研究で、骨転移患者さんにリハビリを行うことで上記の項目の改善が認められています

 

ある程度日常生活が自立している患者さんを対象にして運動機能や日常生活動作が改善している報告もありますが、麻痺が出現して歩行が困難になった患者さんの日常生活改善の効果も認めています。

麻痺が出現しても、リハビリで多少の改善は期待できるのかもしれません。

 

しかし、ランダム化比較試験は、脊椎転移患者に傍脊柱筋の筋トレを行うことで、椅子からの立ち上がりテストで有意に改善したという1件(Rief H, Omlor G, Akbar M, et al. Feasibility of isometric spinal muscle training in patients with bone metastases under radiation therapy – first results of a randomized pilot trial. BMC Cancer. 2014;14:67.)のみとなっています。

それ以外は観察研究と言って、比較対象がなく経過を追ってみたら改善しましたよという研究です。

 

これだと、リハビリを実施していない群がないので、改善した理由がリハビリを実施したからですと強くは言えないわけです。

リハビリしなくても良くなってたんじゃないの?っていう疑問が残るわけですね。

そのため、根拠の強さとしてはやや低めになっているようです。

 

でも、比較対象がなくてもリハビリを実施している患者さんの機能改善が認められたということは、リハビリをすることに効果を期待できる重要な結果ですね。

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病的骨折や脊髄圧迫による麻痺の発生

病的骨折や脊髄圧迫による麻痺の発生は、「重要度9、根拠の強さ:C」とされています。

 

この項目では、骨転移患者さんにリハビリを行うことのリスクについての検証を行っております。

ランダム化比較試験1件のみが対象の論文となっています。

先ほどと同様の脊椎転移患者に傍脊柱筋の筋トレを行うランダム化比較試験(Rief H, Omlor G, Akbar M, et al. Feasibility of isometric spinal muscle training in patients with bone metastases under radiation therapy – first results of a randomized pilot trial. BMC Cancer. 2014;14:67.)が採用されています。

 

週に5回の筋トレを2週間実施しても、骨折や麻痺の増悪は認められませんでした。

ただし、この論文は骨転移の運動のリスクを検証することは最も主要な評価項目ではなく、副次的な評価項目であったことと、症例数が60例と少ないことから根拠の強さは低めとなっているようです。

しかし、重要度が9と高いことからも、骨転移患者さんに対して骨折や麻痺に注意して運動することの重要性が伺えます。

たった1つの論文ではありますが、問題なくリハビリができたという結果を聞くと少し安心できますね。

 

この論文は、医師が診察して適切な運動処方を行っていますので、骨転移の患者さんが運動をするためには、まずは医師や理学療法士に骨転移の状態及び適切な運動内容を確認することが必要でしょう。

骨転移患者さんが運動を行うことは、特別に注意する必要はありますが、不安になって動かなさ過ぎても体が弱るだけでなく、下肢に血栓ができたりする危険性もあるので、リスクをしっかりと把握したうえで、可能な限り運動や活動を行うことが望ましいでしょう。

 

ガイドラインでは弱い推奨という結果でしたが、今後はどんな研究結果があったのかを具体的に紹介したいと思います。

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まとめ
・ADLやQOLが障害されている骨転移患者は、リハビリテーション(運動療法)を行うことが弱く推奨されている。

・リハビリを行った骨転移患者さんの経過を追うと、椅子からの立ち上がりテスト、移乗などの介助量、ADL、筋力、歩行能力などの改善が認められた。

・ランダム化比較試験が少ないため、リハビリの効果があるとは強くは言えない。

・骨転移患者さんに筋トレを行っても、病的骨折や脊髄圧迫による麻痺の発生がなかったというランダム化比較試験が1件認められた。

・骨転移患者へのリハビリの効果や安全性は強くは言えないが、活動性低下によるデメリットやリスクも高いと考えられるので、骨転移の状態やリスクに配慮しながら、医師や理学療法士の指示の下で運動を行うことは必要と考えられる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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