がんの検査・治療に伴う有害事象に対する運動療法の効果【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの検査・治療に伴う有害事象に対する運動療法の効果ついて記載している内容を紹介します。

前回は、がん患者さんの運動療法は有害事象を引き起こすのかについて記載している内容について紹介しました。

がん患者の運動療法は有害事象を引き起こすのか【ガイドライン解説】

2022年8月2日

がん患者に対する運動は,一般的に安全で重篤な有害事象は起こりにくいと考えられますが,まれに有害事象が発生する場合があるので、注意は必要とのことでしたね。

 

一方で、運動を行うことで消化器症状や倦怠感などの身体症状が改善することも報告されています。

がんの痛み、消化器症状に対する運動療法の効果

2022年7月27日

がんの倦怠感に対する運動療法の効果【ガイドライン解説】

2022年7月28日

消化器症状や倦怠感などは、検査や治療に伴う有害事象でもありますので、そちらにも効果がありそうな気がしますね。

 

そこで今回は、がんの検査・治療に伴う有害事象に対する運動療法の効果ついて記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの検査・治療に伴う有害事象に対する運動療法の効果ついて記載している内容を紹介。

・運動は,乳がん患者などの治療中・後のリンパ浮腫の軽減,肺がん患者の術後合併症の軽減,入院期間の短縮などに有用であると考えられる。

・検査・治療等に伴う有害事象に関する研究やサンプル数の限界があるため,今後さらなる質の高い研究が必要である。

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がん種混在に対する効果

まずは、がん種が混合された患者さんを対象とした報告をまとめています。

 

①乳がん,前立腺がん,頭頸部がんの治療中・後の患者を対象に,メタアナリシスを行った結果,抵抗運動は上下肢の筋力強化に大きな効果があり,腕のむくみやリンパ浮腫の軽減に対して有意な効果がありました。

介入期間は12 週間(2 件),4~ 6 カ月(4 件),1 年(4 件)で,週2~3 回でした。

 

やはり、リンパ浮腫に対しては運動が効果的ということですね!!

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乳がん患者に対する効果

① 乳がん術後のリンパ浮腫患者を対象に,文献的考察を行った結果,数日~13 週間の運動は,リンパ浮腫の改善(1 年間)に有意な効果がありました。

運動は,有酸素運動,水中リンパ療法,ダンス療法,理学療法,多機能運動,包括的リハビリテーション,ウエイト・リフティングの7 種類で,理学療法や多様な運動の組み合わせが多かったようです。

 

②リンパ浮腫あるいはそのリスクを伴っている乳がん患者を対象に,筋力トレーニングの介入効果に関するメタアナリシスを行った結果,低・中等度の筋力トレーニングの介入は安全であり,対照群と比較して,腕の容積や乳がん起因によるリンパ浮腫の出現を悪化させることなく,上下肢の筋力を有意に強化させていました。

筋力トレーニングの介入期間は5 週間~1 年間で,運動強度は主に低・中程度の運動であり、全患者は,指導下による圧迫包帯を活用していました。

 

こちらでも、リンパ浮腫に対する運動の効果が認められていますね。

圧迫も行いながら運動するように注意しましょうね。

がんのむくみ、リンパ浮腫に対して運動は効果あるの?

2023年6月30日
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肺がん患者に対する効果

①手術前後の非小細胞性肺がん患者を対象に,メタアナリシスを含む文献的考察を行った結果,運動介入群は対照群と比較して,術後合併症の軽減,入院期間の短縮がみられていました。

運動の種類として,すべての研究に有酸素運動(主にウォーキングやサイクリング)が含まれており,その他に抵抗運動(1 件)や呼吸運動(9 件)がありました。

1 日2 回~1 週間2 回,1 回10~45 分の頻度で運動プログラムが実施されていました。

手術前の運動の効果も以前紹介しましたが、ガイドラインでもその効果が認められているようですね。

フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果はあるのか?

2022年5月21日
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小児がん患者に対する効果

①小児・青年期(19 歳以下)の急性リンパ性白血病などのがん治療中・後の患者を対象に,文献的考察を行った結果,運動介入群は対照群と比較して,副作用症状の軽減に有効でありませんでした。

運動は,身体活動トレーニングでさまざまな運動を含み,介入期間は10 週間~2 年間,頻度は1 回15~60 分でした。

 

小児がん患者さんへの運動療法の研究は、まだまだ数が少ないのでなかなか結果が出ないようですね。

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まとめ

運動は,乳がん患者などの治療中・後のリンパ浮腫の軽減,肺がん患者の術後合併症の軽減,入院期間の短縮などに有用であると考えられます。

しかし,小児がんの治療に伴う副作用症状に関しては有用ではありませんでした。

検査・治療等に伴う有害事象に関する研究やサンプル数の限界があるため,今後さらなる質の高い研究が必要です。

 

今回はリンパ浮腫と手術後の合併症予防に対して運動の効果が期待できるような内容でした。

以前にも紹介した内容の復習になりますが、ガイドラインでまとめられていると信頼性が上がりますね。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)よがんの検査・治療に伴う有害事象に対する運動療法の効果ついて記載している内容を紹介。

・運動は,乳がん患者などの治療中・後のリンパ浮腫の軽減,肺がん患者の術後合併症の軽減,入院期間の短縮などに有用であると考えられる。

・検査・治療等に伴う有害事象に関する研究やサンプル数の限界があるため,今後さらなる質の高い研究が必要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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