骨転移の痛みを軽減させる放射線治療とは

前回は、がんサバイバーも知っておきたい鎮痛薬について紹介しました。

がん患者の痛みに対する鎮痛薬の使い方

2022年2月26日

痛みというのはがん患者さんにとって悩みの種ですが、その中でも疼痛が生じやすいのが骨転移です。

骨転移とは、簡単に言うと、がんが骨にまで拡大してしまっている状態ですね。

骨転移については以前の記事でも、どのようながん患者さんのどの部位に生じやすくて、どのような症状が出現しやすいかを説明しましたね。

そんな痛みが生じやすい骨転移ですが、疼痛の治療としては、まずは鎮痛薬が選択されます。

特に、骨転移は炎症を生じる痛みに分類されますので、オピオイドだけでなくNSAIDsまで使用することも検討していいでしょう。

しかし、骨転移の疼痛に対しては、鎮痛薬以外にも放射線治療の効果が期待できます。

そこで今回は、がんサバイバーも知っておきたい骨転移に対する放射線治療について紹介します。

首・肩・腰の痛みを寝てるうちに治したい!

骨転移に対する放射線治療の目的

放射線治療は、骨転移に限らず、がんの治療に用いられる手段の一つです。

化学療法と同様に、がんを縮小させる効果が期待できます。

骨転移に関していえば、①疼痛の緩和、②脊髄圧迫による麻痺の予防と改善、③切迫骨折に対する骨折の予防などが効果として期待できます。

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疼痛の緩和

放射線治療で骨転移の疼痛が軽減するメカニズムは、がん細胞が縮小したり、炎症が抑えられたりしていることが考えられています。

もちろん、放射線治療を行って、骨転移の部分が小さくなって、疼痛が軽減するという結果もありますが、実際には、画像上では骨転移が小さくなる前にも疼痛が軽減している場合も多いですので、骨転移を縮小させる作用だけではないんでしょうね。

 

では、骨転移に対して放射線治療はどの程度効くのでしょうか?

日本緩和医療学会のガイドラインでは、その有効率は60-90%と記載されています。

かなり効果が期待できるみたいですね。

Sze WM, Shelley MD, et al.: Palliation of metastatic bone pain: single fraction versus multifraction radiotherapy–a systematic review of randomised trials. Clin Oncol 15: 345-52, 2003.

こちらが、骨転移の疼痛に対する放射線治療の効果をまとめた結果になります。

7つの論文を吟味し、疼痛の消失が20-60%程度、疼痛の軽減が55-90%程度に認められています。

完全に疼痛が焼失しないまでも、疼痛軽減という意味では効果がかなり期待できるのでしょうね。

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放射線治療の回数

それでは、放射線治療は何回くらい行うのがいいのでしょうか?

さきほどの表で用いた研究は、治療回数は5-10回くらいでした。

従来の治療方法としては、10回くらい、期間にすると2週間くらいの治療が一般的ですね。

しかし、最近では1-2回の放射線治療でも効果が期待できるのではないかと言われています。

少ない回数にする分、一回の線量は多くなるんですけどね。

Sze WM, Shelley MD, et al.: Palliation of metastatic bone pain: single fraction versus multifraction radiotherapy–a systematic review of randomised trials. Clin Oncol 15: 345-52, 2003.

こちらの表は1回だけの照射と5-10回の照射で、疼痛の軽減に差があるかを比較しています。

右側にある四角やひし形が、縦線より左に行けば1回照射が効果あり、右に行けば複数回照射が効果ありという結果になります。

1つずつの結果を見ると、左寄りになっている(1回照射が効果あり)の結果が多いような気もしますが、全体の結果のひし形は縦線に引っかかっていますので、1回照射も複数回照射も効果に差はないという結果になります。

1回でも複数回でも効果が変わらないのであれば、1日で終わる方を選択したい気もしますね。

そこで、さらに1回と複数回の放射線治療の長期成績も比較されています。

Rades D, Stalpers LJ, Veninga T, et al. Evaluation of five radiation schedules and prognostic factors for metastatic spinal cord compression. J Clin Oncol. 2005 May 20;23(15):3366-75

こちらは疼痛ではなく、骨転移の脊髄圧迫による運動機能低下の出現が照射回数で変わるかどうかを調査しています。

こちらの結果では、10回以上の照射の方が1回だけの照射よりも、2年後の運動機能低下を防げ津¥るということになっています。

急速に疼痛を取るだけであれば1回の治療でもいいのかもしれないですけど、長期の効果を考えるのであれば、従来通りの10回照射がいいのかもしれないですね。

10回くらい治療ができる余裕があればそちらの方がよさそうです。

 

骨転移に対する放射線治療の効果は、まだ麻痺の予防改善や骨折の予防などが含まれるのですが、疼痛緩和に関する項目だけでだいぶん長くなってしまったので、残りは次回に書くことにします。

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まとめ
・がんサバイバーも知っておきたい骨転移に対する放射線治療について紹介。

・①疼痛の緩和、②脊髄圧迫による麻痺の予防と改善、③切迫骨折に対する骨折の予防などが効果として期待できる。

・1回照射でも複数回照射でも疼痛の軽減はそれほど変わらない。

・複数回照射の方が長期的な成績がいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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