抗がん剤後のしびれがある患者の生活の質を上げる方法は?:週に○分以上の運動が大事!

以前、抗がん剤治療後の神経障害(CIPN)の患者さんは転倒しやすくなることを紹介しました。

抗がん剤治療後のしびれで転びやすくなる?転倒を防ぐためにできること

2023年6月8日

 

転びやすくなるということは日常生活の質を下げる原因になってしまいますよね。

転んで骨折でもしたら本当に大変です。

 

転びにくくするためにはやっぱり運動が大事ですよね。

CIPNの患者さん以外では、運動を行うことが生活の質(QOL)を上げることが報告されています。

 

運動は、健康な生活を送る上で非常に重要ですが、末梢神経障害がある場合、運動することが困難になることがあります。

それでもCIPNの患者さんにとって運動は重要でしょうか?

 

そこで今回は、運動が神経障害の症状を軽減することができるか、QOLを改善するかどうかを調査した研究を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、大腸がん患者さんに対して、運動が神経障害の症状を軽減することができるか、QOLを改善するかどうかを調査した内容になります。

「Mols F, et al. Chemotherapy-induced peripheral neuropathy, physical activity and health-related quality of life among colorectal cancer survivors from the PROFILES registry. J Cancer Surviv. 2015 Sep;9(3):512-22」 2015年の少し古い論文になります。

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方法

2000年から2009年に大腸がんと診断された患者さんを対象に、運動量とCIPNの症状について調査しました。

患者さんは、運動量を測定する質問紙と、末梢神経障害の症状を評価する質問紙を記入してもらいました。

この研究では2種類の質問紙が使用されました。

1つは、運動量を測定するための質問紙で、患者さんが1週間にどのくらいの時間を歩く、自転車に乗る、庭仕事をする、家事をする、スポーツをするなどの活動に費やしたかを尋ねるものでした。

 

もう1つは、末梢神経障害の症状を評価するための質問紙で、患者さんが過去1週間に手足のしびれや痛み、手足の弱さなどの症状をどの程度感じたかを尋ねるものでした。

 

統計解析には、まず患者さんを運動量が多いグループと少ないグループ、抗がん剤治療を受けたグループと受けていないグループに分けました。

次に、それぞれのグループでCIPNの症状がどのように異なるかを調べるために、ロジスティック回帰分析という統計手法が使用されました。

この手法は、2つのグループ間である特定の結果が起こる確率が異なるかどうかを調べるために使用されます。

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結果

TMols F, et al. Chemotherapy-induced peripheral neuropathy, physical activity and health-related quality of life among colorectal cancer survivors from the PROFILES registry. J Cancer Surviv. 2015 Sep;9(3):512-22

まず、抗がん剤治療を受けた患者さんと受けていない患者さんを比較すると、抗がん剤治療を受けた患者さんは、受けていない患者さんに比べて、若く、診断からの期間が短く、大腸がんの割合が高く、ステージが高く、放射線治療を受ける割合が低く、体格指数が高く、就業率が高く、運動量が多いことがわかりました。

 

Table 2には、運動量と抗がん剤治療によるCIPNの症状の関係が示されています。

抗がん剤治療を受けた患者さんと受けていない患者さんのそれぞれで、運動量が少ないグループと多いグループに分けられています。

その結果、抗がん剤治療を受けた患者さんでは、運動量が少ないグループは、多いグループに比べて、手足のしびれや痛み、手足の弱さなどの末梢神経障害の症状が多く報告されました。

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TMols F, et al. Chemotherapy-induced peripheral neuropathy, physical activity and health-related quality of life among colorectal cancer survivors from the PROFILES registry. J Cancer Surviv. 2015 Sep;9(3):512-22

Fig. 1には、運動量と抗がん剤治療によるCIPNの評価スコア(EORTC QLQ-CIPN20)の関係が示されています。

 

抗がん剤治療を受けた患者さんでは、運動量が多いグループは、少ないグループに比べて、感覚および運動スケールのスコアが低く、つまり良好でした。

 

また、抗がん剤治療を受けていない患者さんでも、運動量が多いグループは、少ないグループに比べて、感覚・運動・自律神経スケールのスコアが低く、つまり良好でした。

 

抗がん剤の有無に関わらず、運動量が多い方がCIPNの症状が少ないというわけですね!

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さらに、運動量とCIPNの症状による健康関連QOLの関係が示されています。

運動量が少ない患者さんは、多い患者さんに比べて、身体的・役割・感情的・認知的・社会的機能や全体的健康状態・QOLが低く、倦怠感・疼痛・呼吸困難・食欲不振・下痢などの苦しみが多く報告されました。

 

そして、これらの差は末梢神経障害の症状が多いグループ(上位30%)ではより顕著でした。

つまり、CIPNの症状があるほど、運動を行った方がQOLが向上するという結果ですね!

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結論

この研究の結果は、運動が大腸がんサバイバーの健康にとって重要であることを示しています。

運動量が多い患者さんは、少ない患者さんに比べて、CIPNの症状が少なく、健康関連QOL(生活の質)が高いことがわかりました。

つまり、運動量が多くおこなうことが、末梢神経障害の症状を減らし、健康関連QOLを向上させることが示されました。

 

大腸がんサバイバーの皆さんには、運動を取り入れることをお勧めします。

抗がん剤の治療に関係なく、運動することは効果が期待できるようですよ。

 

例えば、散歩や自転車に乗る、ガーデニングや家事をする、スポーツをするなどがあります。

これらの活動は、週に150分以上行うことが望ましいです。

推奨される運動量についてはコチラの記事にも記載さえていますよ。

がんサバイバーに推奨される運動量は?ガイドラインを解説!

2023年2月28日

 

ただし、運動を始める前には、医師や理学療法士に相談してくださいね。

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注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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