抗がん剤治療後のしびれで転びやすくなる?転倒を防ぐためにできること

今日は、抗がん剤治療による末梢神経障害(CIPN)と転倒リスクの関係について調査している論文を紹介いたします。

  

抗がん剤治療を受ける方の中には、CIPNと呼ばれる手足のしびれや痛みなどの症状が出る方がいます。

しびれの症状は改善しにくく生活に支障を及ぼし、治療を受ける方にとって大変つらいものです。

牛山 浅美, 小島 淳夫, 鎌田 順道, 他. 抗がん剤による末梢神経障害に対する圧迫療法の効果に関する検討. 静脈学/32 巻 (2021) 1 号

 

重篤な状態では日常生活が困難 となり,写真のように手足の変形と拘縮により治療用 装具を必要とする場合もあります.

 

しびれがあると、バランスが悪くなって転びやすくなる印象ですが実際はどうなのでしょうか?

そこで今回は、それらの調査を行った論文を紹介しますので、CIPNがあると転倒に注意しなければならないかを確認していきましょう。

ちなみに、以前CIPNに対する圧迫療法の効果も紹介しています。

症状で困っている方はスリーブやストッキングを使用してみてもいいかもですね。

圧迫療法は化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の症状を軽減させる

2022年7月22日
Xserverドメイン

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、乳がん、卵巣がん、肺がんの患者さんを対象に、電話でしびれの症状や転倒の有無確認し、抗がん剤治療による末梢神経障害(CIPN)と転倒リスクの関係について調査した内容になっています。

「Kolb NA, et al. The Association of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Symptoms and the Risk of Falling. JAMA Neurol. 2016 Jul 1;73(7):860-6」 2016年に発行された論文になります。

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方法

この研究では、乳がん、卵巣がん、肺がんの患者さんを対象に、抗がん剤治療中に電話で症状や転倒の有無を調査しました。

具体的には、患者さんは、抗がん剤治療を開始すると同時に、電話で「Symptom Care @ Home」というシステムを使って、毎日自分の症状を報告しました。

このシステムでは、しびれや痛みなどのCIPNの症状について、0から10までの段階で評価することができます。また、転倒したかどうかも報告することができます。

この研究では、しびれや痛みの程度が3以上で、10日以上続いた患者さんをCIPNの症状があると判断しました。それ以外の患者さんは、CIPNの症状がないとされました。

統計的な分析では、「Cox回帰モデル」という手法を使って、CIPNの症状がある患者さんとない患者さんの転倒リスクを比較しました。

この手法では、年齢や性別などの影響も考慮することができます。

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結果

Kolb NA, et al. The Association of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Symptoms and the Risk of Falling. JAMA Neurol. 2016 Jul 1;73(7):860-6

116人の患者さんのうち、32人(28%)がCIPNの症状があると判断されました。

そのうち、34.3%の患者さんが転倒しました。

 

Kolb NA, et al. The Association of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Symptoms and the Risk of Falling. JAMA Neurol. 2016 Jul 1;73(7):860-6

一方、CIPNの症状がない患者さんのうち、15.4%が転倒しました。

つまり、CIPNの症状がある患者さんは、症状がない患者さんよりも、約3倍転倒するリスクが高かったことになります。

 

Kolb NA, et al. The Association of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy Symptoms and the Risk of Falling. JAMA Neurol. 2016 Jul 1;73(7):860-6

また、CIPNの症状がある患者さんは、転倒によるケガをしたり、医療機関を受診することが多かったこともわかりました。

具体的には、CIPNの症状がある患者さんの25%が、転倒によるケガのために医療機関を受診しました。一方、CIPNの症状がない患者さんでは、7.1%でした。

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結論

CIPNの症状がある患者さんは、症状がない患者さんよりも、転倒するリスクが約3倍高かったことがわかりました。

この結果から、CIPNの症状がある患者さんは、転倒によるケガを防ぐために、注意が必要です。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 転倒防止のための指導を受ける
  • 足元がしっかりした靴を履く
  • 家内の段差や散らかりを整理する
  • 適切な照明を確保する

また今回の研究のように、症状を毎日モニタリングできるシステムを活用することも有用ですね。

自分の症状をモニタリングしながら、医師や看護師に相談するようにしましょう。

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CIPNの発症,症状,評価についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。

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CIPNの予防・治療についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。

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まとめ
・乳がん、卵巣がん、肺がんの患者さんを対象に、電話でしびれの症状や転倒の有無確認し、抗がん剤治療による末梢神経障害(CIPN)と転倒リスクの関係について調査した。

・CIPNの症状がある患者さんは、症状がない患者さんよりも転倒するリスクが約3倍高かった。

・CIPNの症状がある患者さんは、転倒によるケガをしたり、医療機関を受診することが多かった。

・自分の症状をモニタリングしながら、医師や看護師に相談するようにしましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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