がんの症状に対してアロマテラピーは効果があるのか?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するアロマテラピーの効果について記載している内容を紹介します。

前回はがんの症状に対するマッサージの効果について記載している内容を紹介しました。

がんの症状に対してマッサージは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年7月25日

身体症状や精神症状を改善させる可能性があり、明らかな有害事象も認められていないので、効果があるのであれば、マッサージを補助的に活用するのはいいかもしれないということでしたね。

 

マッサージと同じくリラクゼーション効果がある治療としてアロマテラピーが挙げられます。。

マッサージが効果がある可能性があるのならば、アロマテラピーも可能性はあると思うのですがどうなのでしょうか?

 

そこで、今回は、がんの症状に対してアロマテラピーの効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するアロマテラピーの効果について記載している内容を紹介。

・アロマテラピーは、がん患者の痛みを軽減させるかもしれないが,有用であるとは結論づけられない。

・他の項目に関しては、アロマテラピーは有用であると結論付けられないようである。

・皮膚症状などの有害事象に注意が必要である。

・単独の効果は強くは言えないが、併用すると比較的効果が期待できそうな結果ではあるので、検討してもいいかもしれない。

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アロマテラピーの概要

アロマテラピーは植物の花,葉,種子,果皮,樹脂などから抽出 された精油(エッセンシャルオイル)を用いて,疾病の治療や予防,心身の健康やリラ クセーション,ストレスの解消などを目的とする療法です。

アロマテラピーの利用方法として,アロマポットなどを使用し香りを楽しむ芳香浴, 入浴や足浴時に精油を使用する沐浴法・吸入法,精油を植物油(キャリアオイル)など で希釈して行うマッサージ法などがあります。

アロマテラピーの資格は,公的資格ではなく 各団体が独自の基準を設けて任意で与える民間資格であり,日本において医薬品 として日本薬局方に収載されている精油はハッカ油など少数のみで,多くの精油が雑貨 扱いとなっています。

 

アロマテラピーを実施するにあたって、以下の点に注意が必要です。

 

  • 精油は直接肌に塗布せず希釈して使用する。
  • パッチテストを行うことが望ましい。
  • 光感作性のある精油(柑橘系など)を使用した場合は直射日光を避ける。
  • 目には使用しない。
  • 妊娠中(特に初期)は,ケトンやホルモン類似物質を含むものは避ける。
  • 経口投与は専門医の指示のもとに行う。
  • 禁忌(高血圧,てんかんなど)のある患者への使用は注意が必要。
  • 同一の精油の連用を避ける。
  • 精油の保管は高温多湿を避け冷暗所で行う。
  • アロマテラピー・マッサージは,局所の悪性腫瘍や炎症部位,放射線治療部位への施 行,出血傾向のある場合などは避ける。。

 

緩和ケア領域でもアロマテラピーの効果の報告が散見されるようになっていますが、ちゃんと勉強された方に行ってもらうのがよさそうですね。

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身体症状に対する効果

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

5編のシステマティックレビューをスクリーニングして、最終的に3編のレビューから検討しています。

また、10編のRCTをスクリーニングして、最終的に8編の論文から検討しています。

痛み

痛みに対しては、システマティックレビューでは,短期的な疼痛緩和のみの評価で,長期的な効果が明らかとなっていません。また,アロマテラピーのグループだけでなくマッサージのグループで も症状の改善が認められ,アロマテラピーの上乗せ効果が示されない試験があり,すべての レビューで質の高い長期的な効果を検証する大規模試験が必要であると結論されています。

無作為化比較試験では,化学療法中の大腸がん患者に,タイ式アロマテラピーを行うと痛みの有意な改善がみられていますが、長期的な効果ははっきりしないようです。

他には、緩和ケアを受けているがん患者 に,週1 回30 分で4 週間の植物油(キャリアオイル)を使用したマッサージを受ける マッサージ群,ラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを受けるアロ マテラピー・マッサージ群,介入を行わない対照群で比較すると、マッサージ 群,アロマテラピー・マッサージ群ともに2 回目の介入後に有意な改善がみられていますが,長期的な痛みの改善は認められなかったようです。

さらに,がん患者を対象に,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピーを 4 週間行っても痛みの改善は明らかではなかったとされています。

よって,アロマテラピーは,がん患者の痛みを軽減させるかもしれないが,有用であるとは結論づけられないとされています。

 

消化器症状

消化器症状に対しては、システマティックレビューでは,短期的な悪心緩和のみであり,長期的な効果が明らかとなっていません。

また,がん患者を対象に,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピーを 4 週間行っても悪心・嘔吐の改善は明らかではなかったとされている。

進行期がん患者の便秘に対する毎日15~20 分,5 日間 の腹部アロマテラピーの有効性に 対する無作為化比較試験では,Constipation Assessment Scale(CAS),McGill quality of life for Hong Kong Chinese(MQOL— HK)得点を腹部マッサージ,対照群に比較して有意に低下させたが,少人数での検討で あり大規模試験が必要であるとされています。

よって,アロマテラピーは,がん患者の消化器症状の軽減に有用であると結論づけはできないとされています。

 

呼吸器症状・泌尿器症状・睡眠障害

呼吸器症状、泌尿器症状に対しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

倦怠感

倦怠感に対しては、化学療法中の大腸がん患者に,タイ式アロマテラピーと通常の支持療法を1週間行うと、倦怠感の有意な改善がみられていますが、長期的な効果ははっきりしないようです。

また,がん患者を対象に,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピーを 4 週間行っても倦怠感の改善は明らかではなかったとされています。

よって,アロマテラピーは,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけはできないとされています。

 

睡眠障害

睡眠障害に対しては、緩和ケアを受けているがん患者に,週1 回30 分で,4 週間のラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを行うと、睡眠障害の改善が認められましたが、マッサージだけを行う群と比較すると差はなかったとのことです。

よって,アロマテラピーは,がん患者の睡眠障害の軽減に有用である根拠はないとされています。

 

アロマテラピーは痛みの改善に有効な可能性はあるようですが、それ以外は論文が少ないためか効果がはっきりは言えないようですね。。

特に睡眠障害に関しては、効果が期待できそうな印象はありますが、今後の研究に期待ですね。

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精神症状に対する効果

不安・抑うつ

不安・抑うつに対して、システマティックレビューでは,短 期的な不安・抑うつの緩和を示していますが,長期的な効果が明らかとなっていません。

化学療法中の大腸がん患者に,タイ式アロマテラピー・マッサージと通常の支持療法を1 週間実施すると、ストレス・不安の有意な 改善がみられています。

また、腫瘍科外来通院中のthe Hospital Anxiety and Depression scale(HADS) 8 点以上のがん患者に、資格を有するアロマセラピストが実施する週に1 回 8 回のアロマテラピーを行うと、不安・抑うつが改善しています。

さらに、がん患者を対象に,通常の支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピー・マッサージを 4 週間行うアロマテラピーを行うと、6 週間後は不安・抑うつの改善がみられたが,10 週間後では長期的な効果は示されなかったようです。

緩和ケアを受けているがん患者に,週1 回30 分で,4 週間のラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを行うと、不安の長期的な改善が認められましたが、マッサージだけを行う群と比較すると差はなかったとのことです。

よって,アロマテラピーは,がん患者の不安や抑うつの軽減に有用であるとは結論づけはできないとされています。

  

アロマテラピーは痛みや不安・抑うつやストレスの改善に有効である報告はあっても、効果があると結論付けはできないようですね。

しかし、アロマテラピーのみの効果は明らかにできなくても、併用することで精神的な効果は期待できそうな印象ですね。

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QOLに対する効果

QOLに対しては、緩和ケアデイケアセンターに通院する患 者を対象として、週に1 回30 分間,4 週間のアロマ テラピーを行うと、QOL の改善が認められましたが、通常ケアと比較すると差はなかったとのことです。

緩和ケアを受けているがん患者に,週1 回30 分で,4 週間のラベンダーを加えたキャリアオイルを使用したマッサージを行うっても、QOLの長期的な改善はみとめられていません。

また,がん患者を対象に,支持療法に加え週に1 回1 時間のアロマテラピーを 4 週間行ってもQOLの改善は明らかではなかったとされています。

よって,アロマテラピーは,がん患者のQOLの改善に有用であると結論づけはできないとされています。

 

前述した身体症状や精神症状の改善が結論付けられないので、QOLの改善も強くは言えないという結果のようですね。

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アロマテラピーの有害事象

システマティックレビューでは,精油の使用による有害事象として 接触皮膚炎や光毒性による皮膚反応,可逆性の女性化乳房を起こした報告が挙げられてます。

また、スイートアーモンドオイルにラベンダー, カモミールを1%でブレンドしたオイルを使用したアロマテラピー後の発 疹が1 件報告されています。

さらに、リンパ浮腫の苦痛に対するアロマテラピーの有害事象として皮膚反応が1 件報告されています。

いずれも重篤な有害事象は出現していないため,アロマテラピーによる有害事象は軽微であると考えられるとされています。

 

アロマテラピーは単純なマッサージと違って、様々な種類の成分の精油を使用するので、皮膚症状等に注意が必要なようですね。

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治療等に伴う有害事象に対する効果

血液がん患者を対象に, アロマテラピーを行うとコルチゾール値とプロラ クチン値が有意に低下していたが,マッサージのみと比較して差はなかったようです。コルチゾールを低下させるということは,心理的に良好な状態にする可能性が示唆されたということになります。

化学療法中の大腸がん患者を対 象に,週に1 回ごとに3 回のタイ式アロマテラピーを行うと、支持療法群に比較して、介入後のリンパ球値が有意に高く、痛み,倦怠感,ストレス・不安で有意な改善が みられました。タイ式のアロマテラ ピーは,化学療法中の大腸がん患者のリンパ球を増やすことで免疫機能に 有益であり,痛み,倦怠感,を改善する可能性があるとされています。

いずれも今後大規模で長期的な研究が必要とのことで,がん患者の検査・治療等に伴う有害事象の軽減に有用であるとは結論づけはできないとされています。

 

ホルモンや血球の数値で改善の効果が出たのは驚きですね!!

主観的な評価だけでなく、このような客観的な評価の報告が増えてくれば、効果が強く言えるようになりそうですね。

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アロマテラピーの予後に対する効果

予後に対して、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

 

アロマテラピーは基本的にはリラクゼーション目的の印象ですので、一時的に身体症状や精神症状が改善したとしても、予後の改善までは難しいのかもしれないですね。

 

アロマテラピーの効果が認められる論文は散見されるのですが、通常ケアやマッサージのみの群と比較すると、あまり差が出ないため、アロマテラピー単独の効果が強くは言えないようですね。

しかし、併用すると比較的効果が期待できそうな結果ではあるので、検討してもいいかもしれません。

単独のマッサージより有害事象の可能性が高いようですので、実施するのは細心の注意を払ってくださいね。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対するアロマテラピーの効果について記載している内容を紹介。

・アロマテラピーは、がん患者の痛みを軽減させるかもしれないが,有用であるとは結論づけられない。

・他の項目に関しては、アロマテラピーは有用であると結論付けられないようである。

・皮膚症状などの有害事象に注意が必要である。

・単独の効果は強くは言えないが、併用すると比較的効果が期待できそうな結果ではあるので、検討してもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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