アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者に骨吸収抑制薬は推奨されるか?【ガイドライン解説】

今回は、乳癌診療ガイドラインより、アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者に対する骨吸収抑制薬の使用について記載している内容を紹介します。

前回は乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果について紹介しました。

乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果は?【レビュー解説】

2022年10月27日

ゾレドロン酸やデノスマブといった骨吸収抑制剤の効果は期待できるという結果でしたね

特に骨量低下でよく問題となるのが、やはり、アロマターゼ阻害薬になるのですが、乳癌には診療ガイドラインというものが執筆されています。

乳癌診療ガイドラインには骨粗鬆症の治療や予防のことについて記載されているのでしょうか?

 

そこで今回は、乳癌診療ガイドラインより、アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者に対する骨吸収抑制薬の使用について記載している内容を紹介します。

まとめ
・乳癌診療ガイドラインより、アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者に対する骨吸収抑制薬の使用について記載している内容を紹介。

・T-Scoreや若年平均成人値(young adult mean; YAM)などによる骨塩量評価や臨床的な因子をもとにリスクを評価し,本邦のガイドラインを参考に使用を考慮することが望ましい。

・使用する薬剤としてはビスホスホネートとデノスマブが挙げられる。

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ビスホスホネート

ビスホスホネートの経静脈的投与については,術後療法としてレトロゾールを内服する1065人の早期乳癌患者に対し,内服開始と同時にゾレドロン酸を投与する群(immediate群)と,骨塩量減少(T-scoreで-2.0以下)もしくは骨折イベントが起こってから投与する群(delayed群)を比較すると、投与後36か月時点での腰椎骨塩量がimmedeiate群は4.39%増加したのに対してdelayed群では4.9%減少し,有意な差を認めました。ただし骨折の発生率に有意差はありませんでした。

経口ビスホスホネート剤では、リセドロン酸35mg週1回(本邦では適応外の用量)の内服とプラセボを比較したランダム化比較試験が複数行われており、いずれの試験においても骨塩量変化率において有意にリセドロン酸群で骨塩量が増加していることが示されています。

また、アレンドロン酸70mg週1回(本邦では適応外の用量)の有効性を検証した試験では、早期にアレンドロン酸を内服した骨粗鬆症もしくは骨減少症の患者では有意に骨塩量が増加しており、正常骨密度でアレンドロン酸を内服しなかった患者群では、有意に骨塩量が減少していました。

メタアナリシスにまとめられた11の試験や5年の長期フォローアップが行われた試験においても,経静脈的および経口的ビスホスホネート投与の追加がカルシウム,およびビタミンDの摂取のみと比較して骨密度増加に有効であることが報告されています。

ただし,これらの経静脈的、経口ビスホスホネートに関する試験のエンドポイントはいずれも骨塩量や骨関連指標の変化であり,観察期間中の骨折のイベント数は予防投与群も治療的投与群も同等とするものや,報告されていないものもありました。

このことから,アロマターゼ阻害薬に対するビスホスホネートの追加投与により骨塩量が回復,または維持されても,骨折頻度については減らない可能性があります。

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デノスマブ

デノスマブは転移性骨腫瘍に保険承認されており,その使用法は120 mgを4週間に1回の皮下投与であるが,骨粗鬆症に対しては,60 mgを6カ月に1回皮下投与であり,使用法の違いに注意する必要があります。

Ellisらにより252例のアロマターゼ阻害薬使用患者におけるデノスマブの骨塩量減少の予防効果が報告されたが,ABCSG-18では初めて骨折のアウトカムについて評価されており,アロマターゼ阻害薬投与中の乳癌患者3420例に対してデノスマブとプラセボを無作為に割り付けて投与したところ初回の臨床的骨折までの期間がデノスマブ群で有意に延長したと報告しています。

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その他

タモキシフェンと同様に選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)であるラロキシフェンは閉経後女性における骨粗鬆症の治療薬として日本でも広く使用されています。

しかし,ATAC試験においてタモキシフェンとアナストロゾールの併用で有害事象が増加し,さらにアナストロゾールの乳癌再発抑制効果を阻害することが明らかとなりました。

ラロキシフェンも理論上アロマターゼ阻害薬との相互作用が懸念されるため,アロマターゼ阻害薬使用時のラロキシフェン併用は推奨されていません。

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まとめ

本邦の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では乳癌患者に限ったものではないが,脆弱性骨折の有無、骨密度測定値が薬物治療開始基準に用いられています。

よって,T-Scoreや若年平均成人値(young adult mean; YAM)などによる骨塩量評価や臨床的な因子をもとにリスクを評価し,本邦のガイドラインを参考に使用を考慮することが望ましいとされています。

 

使用する薬剤としてはビスホスホネートとデノスマブが挙げられます。

また,カルシウムとビタミンDなどのサプリメントの摂取が骨折をどの程度減少させるかについての確実なデータはないが,欧米のガイドラインでは一日量で200 mgのカルシウムの摂取と800 IUのビタミンDの摂取を勧めています。

 

前回紹介したレビューと同じような内容が記載されているようですね。

やはり、アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者さんは骨粗鬆症に注意が必要ですので、定期的に骨密度を測定して、必要があれば治療を行うようにしておきましょう!!

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まとめ
・乳癌診療ガイドラインより、アロマターゼ阻害薬を使用している乳がん患者に対する骨吸収抑制薬の使用について記載している内容を紹介。

・T-Scoreや若年平均成人値(young adult mean; YAM)などによる骨塩量評価や臨床的な因子をもとにリスクを評価し,本邦のガイドラインを参考に使用を考慮することが望ましい。

・使用する薬剤としてはビスホスホネートとデノスマブが挙げられる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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