乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果は?【レビュー解説】

今回は、乳がんと前立腺がんのがん治療による骨量減少についてまとめたレビューより、乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果について記載している内容を紹介します。

前回は乳がんと前立腺がんの治療による骨密度低下や骨折のリスクについて紹介しました。

乳がんと前立腺がんの治療による骨密度低下や骨折のリスクは?【レビュー解説】

2022年10月23日

抗エストロゲン療法、アロマターゼ阻害薬、アンドロゲン除去療法といった、ホルモンに関係する治療が骨量低下や骨折を起こしやすいという結果でしたね。

それでは、骨量低下に対して効果的な治療方法はないのでしょうか?

骨粗鬆症の治療の一つとして、薬物療法が選択されることがありますが、乳がん・前立腺がん患者さんに対しても効果はあるのでしょうか?

 

そこで今回は、乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、Cancer Treatment-Induced Bone Loss in Women With Breast Cancer and Men With Prostate Cancer. Taxel P, Faircloth E, Idrees S, Van Poznak C. J Endocr Soc. 2018 May 21;2(7):574-588、から引用させていただいております。

まとめ
・乳がんと前立腺がんの治療による骨密度低下や骨折のリスクについて記載している内容を紹介。

・ゾレドロン酸といった骨吸収抑制剤やデノスマブといった抗RANKL抗体製剤の効果が期待できる。

・副甲状腺ホルモン、テリパラチド、アバロパリチドの作用を模倣する同化薬やエストロゲンを含む薬剤は、がん再発のリスクを高めるので注意が必要である。

・薬剤の効果も期待できますが、やはり、食事や運動も重要ですので意識するようにしましょう!!

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乳がん患者に対する骨吸収抑制剤の効果

以前も紹介しましたが、閉経前の女性に使用されるGnRH療法や卵巣摘出術は、閉経後の状態を作り出し、エストロゲンの循環レベルの急激な変化に伴い、骨量が大幅に減少します。

これらの若い女性に対して、選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるタモキシフェンは、同様に骨損失率を減少させることができます。

一方で、アロマターゼ阻害薬はは骨量の減少を加速させます。

 

それに対して、ゾレドロン酸という骨吸収抑制剤を使用することで、卵巣機能不全による早期の急速な骨量減少を緩和することが実証されてます。

閉経前女性において、GnRHアゴニスト/タモキシフェンまたはGnRHアゴニスト/アロマターゼ阻害薬にランダムに割り付けられた試験において、6カ月ごとにゾレドロン酸を投与する2度目のランダム化により、3年間の試験中、両群の骨密度が維持されました。

ゾレドロン酸を投与しなかった群では、GnRHアゴニスト/タモキシフェン群で9%、GnRHアゴニスト/アロマターゼ阻害薬群で13%以上骨密度が減少していました。

また、アロマターゼ阻害薬補助療法を受けるホルモン受容体陽性乳がんの閉経後女性が、6ヶ月毎にゾレドロン酸を先行投与すると、骨密度が増加したが、骨折率は治療群間で統計的な差はなかったことが明らかにされています。

 

治療内容がタモキシフェンでもアロマターゼ阻害薬でも、ゾレドロン酸を使用することで骨密度低下を予防することができるようですね。

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デノスマブという抗RANKL抗体製剤を6ヶ月間隔で投与する方法は、現在、骨粗鬆症性骨折のリスクが高いアロマターゼ阻害薬投与中の女性に対して推奨されています。

オーストリア乳癌研究グループの第III相試験では、アロマターゼ阻害薬アジュバント療法を受けている早期BCaの閉経後女性を対象に、3420人の研究参加者を6ヶ月ごとにデノスマブ(60mg、皮下投与)(n = 1711)またはプラセボ(n = 1709)に無作為化して調査しています。

最初の臨床的骨折までの時間は、ベースラインの骨密度の結果にかかわらず、デノスマブ投与群で減少していました。

さらに、36ヶ月の追跡調査において、アロマターゼ阻害薬とデノスマブ投与群の約5%が骨折を経験したのに対し、アロマターゼ阻害薬とプラセボ投与群では約10%が骨折を経験しました。

そして、デノスマブは腰椎、股関節、大腿骨頚部の骨密度を増加させることが確認されました。

 

このように乳がん患者に対して骨粗鬆症治療薬が効果が期待できますが、副甲状腺ホルモン、テリパラチド、アバロパリチドの作用を模倣する同化薬やエストロゲンを含む薬剤は、微小転移性潜伏腫瘍細胞の増殖を促し、乳がん再発のリスクを高める懸念から、乳がん患者には使用しません。

これは前立腺がん患者についても同様の考え方となるので注意しましょう。

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前立腺がんに対する骨吸収抑制剤の効果

多くの無作為化比較試験で、GnRHアゴニスト投与中の前立腺がん患者における骨保存のための抗骨吸収療法の有効性が評価されています。

ゾレドロン酸を用いた初期の研究では、毎年1回の投与で有効性が示されていますが、前立腺がん患者集団におけるビスフォスフォネートの骨折予防の有効性を示す証拠はまだ限られています。

 

1400人以上の男性を対象とした3年間の無作為化比較試験で、デノスマブを投与された男性は、プラセボと比較して、腰椎、股関節、橈骨遠位1/3の骨密度がそれぞれ7.9%、5.7%、6.9%有意に増加していました。

さらに、デノスマブ群では36ヶ月の時点で椎体骨折の発生率が1.5%であったのに対し、対照群では3.9%が新たに椎体骨折を経験しました。

 

前立腺がん患者さんに対しても、デノスマブの効果は実証されているようですね。

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骨吸収抑制剤使用時の注意点

Cancer Treatment-Induced Bone Loss in Women With Breast Cancer and Men With Prostate Cancer. Taxel P, Faircloth E, Idrees S, Van Poznak C. J Endocr Soc. 2018 May 21;2(7):574-588

こちらのグラフで分かるように乳がん女性および前立腺男性における骨量減少のリスクは、抗骨吸収療法により改善されることが証明されています。

骨吸収抑制治療の基本は、一般的な骨粗鬆症患者の転倒・骨折予防に推奨されているように、十分なカルシウム(1日1000~1200mg、サプリメントより食品由来が望ましい)およびビタミンD~800~1000単位/日の摂取または25-OHビタミンDレベル30~40ng/mlの達成が含まれています。

十分なカルシウムおよびビタミンDの摂取は、抗骨吸収療法の設定における低カルシウム血症のリスクを減少させるために重要です。

十分な体重負荷と抵抗運動も重要であり、乳がんを有する閉経後女性の骨量減少を抑えることが示されており、骨折リスクは証明されていないものの、奨励されるべきです。

GnRHアゴニストの投与を受けている前立腺がんの男性はサルコペニアを経験しており 、したがって体重を支える活動は、バランスを維持し転倒リスクを減少させるために重要です。

 

薬剤を使用しつつ、食事や運動の重要性も記載されていますね!!

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まとめ

乳がんと前立腺がん患者に対する骨粗鬆症治療薬の効果について紹介しました

 

ゾレドロン酸といった骨吸収抑制剤やデノスマブといった抗RANKL抗体製剤の効果が期待できるようですね。

一方で、副甲状腺ホルモン、テリパラチド、アバロパリチドの作用を模倣する同化薬やエストロゲンを含む薬剤は、がん再発のリスクを高めるので注意しましょう。

 

そして、薬剤の効果も期待できますが、やはり、食事や運動も重要ですので意識するようにしましょう!!

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まとめ
・乳がんと前立腺がんの治療による骨密度低下や骨折のリスクについて記載している内容を紹介。

・ゾレドロン酸といった骨吸収抑制剤やデノスマブといった抗RANKL抗体製剤の効果が期待できる。

・副甲状腺ホルモン、テリパラチド、アバロパリチドの作用を模倣する同化薬やエストロゲンを含む薬剤は、がん再発のリスクを高めるので注意が必要である。

・薬剤の効果も期待できますが、やはり、食事や運動も重要ですので意識するようにしましょう!!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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