がん診療連携拠点病院は痛みや困りごとへの対応がしっかりしている

今回は,がん患者さんに対する服薬指導や看護ケア、情報共有をどの程度行っているかを、がん診療連携拠点病院と一般病院で比較した論文を紹介します.

 

がん患者さんは痛みをはじめとして多くの問題を抱えています。

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ところで、看護師さんに対応してもらえることって病院によって違いがあるのでしょうか?

がん診療連携拠点病院の方が、しっかりと対応してもらえるイメージが勝手にありますが、どうなんでしょうかね?

 

そこで、今回は,がん患者さんに対する服薬指導や看護ケア、情報共有をどの程度行っているかを、がん診療連携拠点病院と一般病院で比較した論文を紹介します.

まとめ
・がん患者さんに対する服薬指導や看護ケア、情報共有をどの程度行っているかを、がん診療連携拠点病院と一般病院で比較した論文を紹介。

・インターネット調査会社にモニター登録している外来看護師400名を対象にアンケート調査を行った。

・一般病院と比較してがん診療連携拠点病院の方が、「オピオイド鎮痛薬の服薬指導」、「疼痛ケア」、「患者・家族への配慮」、「外来看護師への情報提供」がしっかり行えていることが明らかとなった。

・インターネット調査会社に登録している看護師さんのみで行ったアンケート調査なので、結果の解釈には注意が必要である。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、がん患者さんに対する服薬指導や看護ケア、情報共有をどの程度行っているかを、がん診療連携拠点病院と一般病院で比較した内容になっています。

「山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022 」 2022年に発行された最新の論文になります。

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対象

山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

対象者は,インターネット調査会社である株式会社インテージ(以下,インテージ)にモニター登録している外来看護師400名です。

対象者の適格基準は,病院の外来で勤務している者,がん患者と関わる機会がある者とし,除外基準は,診療所やクリニック,訪問看護ステーションで勤務している者です。

看護師さんへのアンケート調査もインターネット調査会社に委託して行える時代になっているんですね!

 

性別は,男性20名,女性361名,年齢の中央値[四分位範囲]は45[38-51]です。

がん拠点病院に勤務する看護師は145名,一般病院に勤務する看護師は236名でした。

男女比,年齢,看護師経験年数,専門看護師資格,認定看護師資格に有意差はありませんでした。

所属部署は,病棟47名(10.7%),外来376名(85.5%),がん相談室10名(2.3%)です。

がん患者と関わる機会は,常にある93名(24.4%),よくある123名(32.3%),時々ある165名(43.3%),あまりない0名であり,がん拠点病院の方が一般病院より有意に高くなっています。

一般病院でも、看護師さんががん患者さんと関わる機会は多いみたいですね。

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方法

調査項目は以下の通りです。

 

1)外来患者へのオピオイド鎮痛薬の初回導入と服薬指導の状況

外来患者へのオピオイド鎮痛薬の初回導入と服薬指導依頼の2項目を「常にある」~「わからない」の6段階で調査しています。

2)がん疼痛のある外来患者に対する横断的活動を行う看護師の活動

各外来を横断的に活動しながらがん疼痛患者へのケアを実施している看護師,および,各外来を横断的に活動しながらがん疼痛患者へのケアを実施している専門看護師または認定看護師が「いる」「いない」「わからない」で調査しています。

3)対象者が実践しているがん疼痛のある外来患者への看護ケア

疼痛ケア,患者・家族とのコ ミュニケーション,患者・家族中心のケアを「5.常に行っている」~「1.行っていない」 の5段階で調査しています。

4)がん疼痛のある外来患者への継続看護

外来看護師と病棟看護師,外来看護師と在宅ケア部門との継続看護として,患者情報の提供や情報活用の状況を問う5項目を「常に行っている」~「わからない」の6段階で調査しています。

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結果

山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

こちらの表は外来患者へのオピオイド鎮痛薬の初回導入と服薬指導の状況です。

「外来患者にオピオイド鎮痛薬の初回導入を行っている」,「外来患者にオピオイド鎮痛薬を初回導入する場合,処方医師が薬剤師,看護師などへ服薬指導を依頼している」の質問に対して,「常にある/よくある」および「常に行っている/たいてい行っている」の回答率はがん拠点病院の方が一般病院より高くなっています。

山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

こちらの表はがん疼痛のある外来患者に対する横断的活動を行う看護師の活動の結果です。

「各外来を横断的に活動しながらがん疼痛患者へのケアを実施している看護師がいる」,「各外来を横断的に活動しながらがん疼痛患者へのケアを実施している専門看護師または認定看護師がいる」,「横断的活動をしている看護師と外来看護師は連携して患者へのケアを実施している」,「横断的活動をしている看護師は外来看護師に対しがん疼痛看護を教育している」の設問に対して「いる」および「常に行っている/たいてい行っている」の回答率が、がん拠点病院の方が高くなっています。

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山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

こちらの表は対象者が実践しているがん疼痛のある外来患者への看護ケアの状況です。

以下の設問でがん拠点病院の方が回答率が高くなっていました。

疼痛ケア:「痛みの強さを評価している」,「痛みの出現状況を評価している」,「レスキュー薬の効果を評価している」

患者・家族とのコミュニケーション:「重要な話はプライバシーが保てる場所で行っている」,「オープンクエスチョンを用いている」,「病状の理解度を確認している」

患者・家族中心のケア:「患者・家族にとって大切なことは何かを知ろうとしている」,「患者・家族が何を希望しているかを知ろうとしている」,「患者・家族のつらさについて理解しようとしている」

山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

こちらの表はがん疼痛のある外来患者への継続看護の状況です。

「病棟看護師から退院患者の情報提供を受けている」の設問に対して,「常に行っている/たいてい行っている」の回答率ががん拠点病院の方が高くなっていました.

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結論

オピオイド鎮痛薬を初回導入された外来患者への服薬指導やがん疼痛看護ケアは,がん拠点病院が一般病院より実施している可能性が示された。外来でのがん疼痛看護ケアにおいては,がん疼痛看護ケアにおける困り事を相談できる支援と教育体制の整備,多職種連携の整備が課題と考える。

山中 政子, 鈴木 久美. がん疼痛のある外来患者に対するオピオイド鎮痛薬の服薬指導および看護ケアの実態調査 ─がん診療連携拠点病院と一般病院の比較─. 日本看護研究学会雑誌. 2022

一般病院と比較してがん診療連携拠点病院の方が、「オピオイド鎮痛薬の服薬指導」、「疼痛ケア」、「患者・家族への配慮」、「外来看護師への情報提供」がしっかり行えていることが明らかとなりました。

患者さんの重症度などによっても異なるんでしょうが、今回の結果だけ見ると、がん診療連携拠点病院の方が、看護師さんにしっかりと対応してもらえそうですね。

なかなか、自分で病院を選ぶというわけにはいかないでしょうが、がんに関連した困りごとが強い場合には、がん診療連携拠点病院へ相談することが望ましいようです。

ただし、今回のアンケートはインターネット調査会社に登録している看護師さんのみで行っていますので、病院全体を把握しているわけではないことに注意しておいてください。今回の結果が本当に正しいかはさらなる追加検証が必要だと思います。

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まとめ
・がん患者さんに対する服薬指導や看護ケア、情報共有をどの程度行っているかを、がん診療連携拠点病院と一般病院で比較した論文を紹介。

・インターネット調査会社にモニター登録している外来看護師400名を対象にアンケート調査を行った。

・一般病院と比較してがん診療連携拠点病院の方が、「オピオイド鎮痛薬の服薬指導」、「疼痛ケア」、「患者・家族への配慮」、「外来看護師への情報提供」がしっかり行えていることが明らかとなった。

・インターネット調査会社に登録している看護師さんのみで行ったアンケート調査なので、結果の解釈には注意が必要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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