慢性痛の対処法のポイントについて解説

今回の記事では、慢性痛の対処法のポイントについて解説します。

 

前回の記事で、慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴について紹介しました。

慢性痛の治療を行うときに注意すべき高齢者の特徴

2022年7月10日

高齢者の慢性痛を治療する場合には,身体諸機能の低下(腎機能障害,肝機能障害,消化管機能障害,脳機能低下など),様々な合併疾患とその治療薬,社会的因子の問題(経済的問題,独居,老々介護など)について考慮する必要があるということでしたね.

 

しかし、慢性痛を抱える高齢者の特徴がわかっても、対応するのはなかなか難しそうですよね。

 

そこで、今回は、慢性痛の対処法のポイントについて解説します。

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まとめ
・慢性痛の対処法のポイントについて解説。

・急性痛の原因となりそうな器質的疾患を見逃さない事が最も重要である。

・慢性痛治療において第一目標は生活の質 (QOL)や日常生活動作(ADL)の向上であり, それを目的として治療方針を立てていく。

・非ステロイド性抗炎症薬やベンゾジアゼピン系薬剤などの薬剤の整理も必要である。

・場合によっては、患者だけでなく家族に対しても心理・社会的サポートが行われるように配慮することも検討する。

器質的疾患を見逃さない

慢性痛は、急性痛(≒原因が特定できる痛み)の可能性を除外してはじめて慢性痛として治療が行われますので,急性痛の原因となりそうな器質的疾患を見逃さない事が最も重要です。

急性痛ではその治療を行うために正確な診断が極めて重要となります。

一方で、慢性痛は,急性痛や癌性痛ではないこと,すなわち積極的な治療対象となる病変が存在しないのを明らかにすることが大事となります。

そして、積極的な治療対象となる病変が存在しないということは、運動療法と心理社会的介入が治療の主体になるというわけです。

「治療のために原因の究明をしてほしい」という慢性痛の治療の本質からはずれないように注意しましょう。

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治療目標(ゴール)の設定が重要

慢性痛治療において第一目標は生活の質 (QOL)や日常生活動作(ADL)の向上であり, それを目的として治療方針を立てていきます.

 

まず重要なことは,「痛みで困っている」という訴えを具体的に特定していくことです.

「家事が痛みでできない」と訴え たら,どのような家事のどのような動作を行おうとしたらどこの痛みでそれができないのかまでを特定しなければなりません.

 

さらに,本当に「痛いからできない」の か,それとも他の理由(意欲がなくなっている,も ともと体力的に無理,など)でできないのかまで考える必要があります.

 

痛みで困っていると訴える患者さんの中には、「いつも痛い」「ふとした時に痛い」というように、特定の動作での痛みが表現できない方も多いです。

自分の痛みの状況を整理してもらうことが大事になってきます。

 

次に,現実的な治療目標を設定することが大事です.

慢性痛を完全に無くすことはまず不可能であることを患者・家族と共有したうえで,今は痛みでできなくなっている事のうち,どんなことをできるようになりたいか, を話し合い治療目標としていきます.

 

その際に気を付けねばならないことは,「老い」を受容できていないために,非現実的な ゴールを要求していないかです.

加齢による影響を理解してもらい、それを加味しながら、現実的な目標を設定していきます。

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適切な治療手段の選択

慢性痛では薬物療法の効果が限定的で,補助的にしか過ぎません.

特に、高齢者では,前述し たような身体諸機能の低下,併存疾患,社会的因子 の問題により薬物療法の危険性がさらに強くなることも多いです.

 

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

なので表のような生活習慣改善ポイントを指導し、理解してもらうことが重要となります。

具体的にはどこをどう変えたら良いのかを説明し,サポートしていきます.

例えば、運動習慣をつけさせるために,患者に運動日記をつけてもらい、その内容を検討しフィードバックしていきます.

 

続いて薬剤の整理も重要になります.

非ステロイド性抗炎症薬は機序として炎症に伴う痛みに著効を示しますが,ほとんどの慢性痛は炎症を伴わないため効果が少ないので、あまり効果がありません.

その一方で,消化管障害,腎機能障害,凝固能障害,心機能障害など副作用は多いので減薬を検討します.

 

ベンゾジアゼピン系薬剤は,鎮痛作用は機序として認められていない一方,依存性,認知機能低下,抑うつ,転倒など数多くの重大な副作用があるので、こちらも減薬を検討します

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

こちらの表は慢性痛治療に用いられる薬剤の作用と副作用を記載しています。

あくまで、薬物療法がメインの治療ではありませんが、補助的な治療として理解しておく必要はあるでしょう。

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社会因子への対応

高齢者の慢性痛の要因として,ロコモシンドローム(廃用症候群)があります.

これに対しては適切な運動療法が不可欠であり,そのためには介護保険を用いた通所リハビリテーションの導入が有用な場合があるので検討が必要です.

 

独居老人,老老介護,認認介護,その他家族の負担が極めて大きいと考えられる場合には,病院のソーシャルワーカーや地域包括医療センターと連絡をとり,患者だけでなく家族に対しても心理・社会的サポートが行われるように配慮する必要もあります.

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以上のことを参考に、慢性痛の対処方法を検討してみましょう!

まとめ
・慢性痛の対処法のポイントについて解説。

・急性痛の原因となりそうな器質的疾患を見逃さない事が最も重要である。

・慢性痛治療において第一目標は生活の質 (QOL)や日常生活動作(ADL)の向上であり, それを目的として治療方針を立てていく。

・非ステロイド性抗炎症薬やベンゾジアゼピン系薬剤などの薬剤の整理も必要である。

・場合によっては、患者だけでなく家族に対しても心理・社会的サポートが行われるように配慮することも検討する。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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