急性痛と慢性痛の違いについて解説

今回の記事では、高齢者やがん患者さんで問題となる疼痛の中で、急性痛と慢性痛の違いについて紹介します。

 

以前の記事で、がん患者さんは疼痛が高頻度で問題となるため、適切な対応が必要であることを解説しました。

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一方で、疼痛には急性痛と慢性痛という分類があります。

以前に慢性痛の方が急性痛よりも高齢者の身体機能に影響するということも紹介しましたね。

慢性痛は急性痛よりも高齢者の身体機能に影響する  

2022年6月18日

 

ところで、急性痛と慢性痛の違いというのをちゃんと説明できますか?

なんとなく、慢性痛の方が長く続いている痛みなんだろうな~っていうのはイメージできますけどね。

 

そこで、今回は、高齢者やがん患者さんで問題となる疼痛の中で、急性痛と慢性痛の違いについて紹介します。

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まとめ
・高齢者やがん患者さんで問題となる疼痛の中で、急性痛と慢性痛の違いについて紹介。

・急性痛は疾病や損傷など組織の障害に対する反応であり、慢性痛は痛みの原因がはっきりしない痛みのシステムの異常としての反応である。

・慢性痛は、痛みの軽減だけでなく、生活の質(QOL)や日常生活動 作(ADL)を向上させることが治療の目標となる.

・急性痛は痛みの原因に対して薬で治療しますが、慢性痛は痛みのシステムの異常に対して心身が対応できるように運動療法と心理社会的介入が中心となる。

急性痛と慢性痛の違い

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

こちらの表が、急性痛と慢性痛の違いを示しています。

 

痛みのシステムを火災報知機に例えると,痛みの原因である疾病や組織の損傷(火)があると痛みというアラームが鳴ります。

しかし,生命にかかわるような重篤な異常があってもアラームが鳴らないこともありますし、逆に,ほとんど異常がないにもかかわらずアラームが鳴りっぱなしになる場合もあります.

そのようにアラームが鳴りっぱなしの状態が慢性痛ということです.

 

実際に燃えている火(疾病や組織損傷)があれば,消す(治癒する)ことでアラームは鳴りやむ(痛みは消える)というのが急性痛の考え方になります。

しかし,慢性痛は火災報知機(痛みのシステム)の異常であるため,鳴り続けるアラームを何らかの方法で無視(軽視)するしかないというように対応方法も変わってきます。

 

つまり、単純に痛みが長く続いているかどうかで慢性痛とは判断できないということですね。

痛みが長く続いていても、そこに炎症や損傷などの痛みの原因があれば、急性痛が持続しているという判断になります。

あくまでも慢性痛というのは、痛みの原因となるものがはっきりしないにも関わらず、痛みが持続している状況という解釈になるようです。

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痛みの分類

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

原因がよくわからない慢性痛に対して「心因性疼痛」や「精神的疼痛」という説明をされる方もいるかもしれません。

こちらの2つの図は、痛みの三要素と呼ばれる神経障害性疼痛,侵害受容性疼痛,心因性疼痛を示していますが、確かに、心因性疼痛という概念は存在します。

しかし、これは原因不明の痛みという意味ではなく、一般的な痛みの原因の中に心理・社会的要因が含 まれているということです。

原因がよくわからない痛みの要因の中に心理的要因も含まれるかもしれませんが、イコールというわけではないということですね。

  

さらに、上の図のように日本では痛みの三要素を三 つの円のベン図で表すことが多いです.

私も知らなかったのですが,これは日本独自の図であるようで,三つの要素が様々な割合で包まれている下の図の方のような考え方が痛みのモデルとしてはふさわしいと考えられています.

確かに痛みの原因というのは複雑ですので、こんな円のようにきれいに分類されないでしょうね。

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治療の有効性

北原 雅樹. 高齢者の慢性痛(腰痛を含む)に対する薬物療法のピットフォール. Journal of Spine Research/13 巻 (2022) 6 号

慢性痛患者の痛みは、痛みのシステム自体の以上であるため、痛みをゼロにすることは困難となります。

痛みの軽減は慢性痛治療の最終目標の一つではありますがが、第一目標ではないということです.

そのため、痛みの軽減だけでなく、生活の質(QOL)や日常生活動 作(ADL)を向上させることが治療の目標となります.

 

慢性痛の治療で中心となるのは,運動療法と心理社会的介入であり、薬物療法は急性痛に対して効果的ですが,慢性痛の治療では補助的なものにしか過ぎないということになります.

慢性痛治療においては,最も効 果が高い薬(三環系抗うつ薬)でも有効性は約 30% で,しかもこの場合の有効性とは痛みが 「半分以下になる(無くなるとは限らない)」ということとなっています.

 

つまり、急性痛は痛みの原因に対して薬で治療しますが、慢性痛は痛みのシステムの異常に対して心身が対応できるように運動療法と心理社会的介入が中心となるということでしょうね。

急性痛と慢性痛は、その原因や治療方法が異なるということは理解しておくべきですね。

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まとめ
・高齢者やがん患者さんで問題となる疼痛の中で、急性痛と慢性痛の違いについて紹介。

・急性痛は疾病や損傷など組織の障害に対する反応であり、慢性痛は痛みの原因がはっきりしない痛みのシステムの異常としての反応である。

・慢性痛は、痛みの軽減だけでなく、生活の質(QOL)や日常生活動 作(ADL)を向上させることが治療の目標となる.

・急性痛は痛みの原因に対して薬で治療しますが、慢性痛は痛みのシステムの異常に対して心身が対応できるように運動療法と心理社会的介入が中心となる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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