がんの症状に対して音楽療法は効果があるのか?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対する音楽療法の効果について記載している内容を紹介します。

最近はがんの症状に対するホメオパシーやアニマルセラピー、リラクセーションといった様々な治療の効果について記載している内容を紹介しました。

がんの症状に対してホメオパシーは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年8月5日

がんの症状に対してアニマルセラピーは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年8月6日

がんの症状に対してリラクセーションは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年8月7日

多くの治療は論文数も少ないためか、ガイドラインとしては、効果があるという根拠が乏しいことが多いようでしたね。

その中でもリラクセーションは、論文単体を見ると、精神症状や有害事象に対して効果がありそうでした。

 

リラクセーションの一環になるかもしれませんが、最近の学会では音楽療法に関する発表もチラホラ見かけるようになりました。

世の中には気分を落ち着けるための音楽なんかもありますので、効果が期待できそうですよね。

 

そこで、今回は、がんの症状に対して音楽療法の効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対する音楽療法の効果について記載している内容を紹介。

・リラクセーションががん患者の症状を改善させるといった十分な根拠は認められなかった。

・論文ごとに見ると、身体症状や精神症状、有害事象に対して効果があり、QOLも改善させる可能性はあると思われる。

・自律神経を整えるリラクセーションは効果を期待してもよさそうである。

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音楽療法の概要

日本音楽療法学会は,音楽療法を「音楽のもつ生理的,心理的,社会的働きを用いて,心身の障害の回復,機能の維持改善,生活の質の向上,行動の変容などに向けて,音楽を意図的,計画的に使用すること」と定義しています。

近年は,ホスピスや緩和ケア病棟における終末期医療,緩和ケア領域で果たし得る役割にも注目が集まっています。

しかし,医学的な観点から音楽療法を捉えた場合,わが国では音楽療法士が医療職ではないため、治療を目的としたtherapy を単独で行うことは法的に許容されていません。

この問題に対処すべく,医師の指示の下に自由診療として行う場合や作業療法のなかに組み込む場合があるが,ホスピスや緩和ケア病棟などの入院患者を対象とした音楽療法の多くは,内容が優れていてもtherapy ではなくservice として位置づけられているのが現状となっています。

 

実施する際の一般的な注意事項として、

  • 明確な意思表示ができない,あるいは移動能力の乏しい対象者は音から逃げられない。
  • 聴力障害(老人性難聴・各種疾患による聴力障害)の存在。
  • 聴覚過敏(自閉症などによる)の存在。
  • 反応性てんかん発作の可能性。
  • 身体的,心理的負荷増大の可能性。
  • 保険適用がない。

などが記載されていますので注意しましょう。

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身体症状に対する効果

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

15編のシステマティックレビューをスクリーニングして、最終的に10編の論文から検討しています。

 

痛み

小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行った結果、音楽療法は不安,つらさ,ストレス,痛みなどを軽減することにより患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめています。

 

7 件の手術患者,3 件の薬物療法患者,1 件の手術・薬物療法患者,4 件の集中治療患者,2 件の妊婦について文献的考察を行った結果、悪性疾患以外の対象者も含まれているが,これによれば,音楽療法は疼痛治療の補助療法として有用であり,安全かつ看護の一環としても利用可能であるとされています。

 

3 件の非盲検試験のうち1 件で音楽療法が痛みの軽減に有用であったが,いずれの試験も被験者数が少なく,短期的な効果のみが測定されている点に問題があると指摘しています。

 

よって音楽療法は,がん患者の痛みを軽減し得るが,有用性が確立されているとは結論づけられないとしています。

 

痛みに対して効果があるという論文もありますね。

やはり、リラクセーションの効果によって痛みが軽減するんでしょうね。

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消化器症状、呼吸器症状、泌尿器症状、睡眠障害

消化器症状、呼吸器症状、泌尿器症状、睡眠障害に対しては、2016年度のガイドラインの時点では根拠を示すシステマティックレビューの報告はないため、その効果はわからないようです。

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倦怠感

①システマティックレビューでは,音楽療法は不安,気分,QOL を改善し,心拍数,呼吸数,血圧,痛みをやや軽減し得るが,倦怠感や全身状態を改善し得る根拠はないと述べています。

② システマティックレビューでは,2件の無作為化比較試験において音楽療法により倦怠感が悪化していた。

 

よって,音楽療法は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられないとしています

 

倦怠感を軽減する効果は乏しいようですね...。

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精神症状に対する効果

不安・抑うつ

①小児がん領域における3 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行い,音楽療法は,不安,痛みを改善し,ゲームへの参加,コミュニケーションなどを促進し,患児の良好な状態に寄与し得るが,全般的には強い根拠があるとはいいきれないとまとめています。

 

②乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行った結果、音楽療法も含めた芸術療法は全体として不安を改善したが,うつとQOL の改善に対する寄与は認められませんでした。

 

③ 13 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は11 件で不安を改善し,2 件では不安の改善に寄与しなかったと述べています。

 

④30 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は不安と気分の改善には寄与し得るが,うつへの効果は支持されないと報告しています。

 

⑤32 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽療法は17 件で不安を軽減し,7 件でうつを改善したと報告している。

 

よって,音楽療法は,がん患者の不安を軽減し得るが,うつの軽減には必ずしも有用であるとは結論づけられないとしています。

 

精神症状に対しては、効果が期待できそうな印象ですね。

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QOLに対する効果

①乳がん患者に対する芸術療法に関する11 件の無作為化比較試験と2 件の非盲検試験について文献的考察を行った結果,音楽療法も含めた芸術療法はQOL の改善に寄与しませんでした。

 

よって、音楽療法は,QOL の改善に必ずしも有用であるとは結論づけられないとしています。

 

精神症状に対しては効果が期待できそうでしたが、それだけではなかなかQOLの改善とまではいかないんでしょうね。

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音楽療法の有害事象

システマティックレビューのなかに,2 件で音楽療法により倦怠感が悪化したという記載があります。

しかし,その他の試験結果も含めて重篤な有害事象は報告されてないため,音楽療法による有害事象は軽微であると考えられています。

 

音楽療法で倦怠感が悪化するという報告があるのは驚きですね。

悪化する理由が気になりますね。

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治療等に伴う有害事象に対する効果

①システマティックレビューでは,音楽療法は,白血病の小児に対して腰椎穿刺を施行する際の痛みと不安を軽減し得ました。

 

② 6 件の無作為化比較試験について文献的考察を行い,音楽は被験者の不安と痛みを軽減すると報告しています。

 

よって,音楽療法は,検査・治療等の有害事象を軽減し得ると考えられるが,限られた範囲での報告であると結論付けています。

検査や治療を行う際に、音楽療法を行うことはいいのかもしれないですね。

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音楽療法の予後に対する効果

①終末期がん患者に対する1 件の臨床試験で,生命予後の延長には寄与しなかったことが報告されています。

 

論文数も少ないために、予後の改善までは認められていないようです。

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まとめ

音楽療法は精神症状や有害事象の軽減に効果が期待できる可能性があるようでした。

やはり、音楽にはリラックスするような効果が期待できるんでしょうね。

国内でも音楽療法の報告が散見されるようになっていますので、そのうち音楽療法が普及するようになってくるかもですね。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対する音楽療法の効果について記載している内容を紹介。

・音楽療法は精神症状や有害事象の軽減に効果が期待できる可能性があるようであった。

・国内でも音楽療法の報告が散見されるようになっていますので、そのうち音楽療法が普及するようになってくるかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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