前回は、ピラティスがリンパ浮腫改善に効果があるといった論文を紹介しました。
通常の運動だけでも効果があるのに、ピラティスを加えるとさらに効果があるといった驚きの内容でしたね。
ただ、ピラティスを始めるのはなかなか敷居が高いと感じる方も多いと思います。
簡単に行える運動として思いつくのはウォーキングではないでしょうか?
けれども、下肢ならまだしも、上肢のリンパ浮腫にウォーキングって効果あるんでしょうか?
そこで今回は、乳がんリンパ浮腫患者に対するウォーキングの効果を調査した論文を紹介します。
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今回紹介する論文の概要
今回紹介する論文は、乳がんリンパ浮腫患者に対するウォーキングの効果を調査した内容となっています。
「Smoot B, Zerzan S, Krasnoff J, et al. Upper extremity bioimpedance before and after treadmill testing in women post breast cancer treatment. Breast Cancer Res Treat. 2014 Nov;148(2):445-53.」
2014年に発行された論文です。
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対象
対象は、18歳以上であり、少なくとも6か月前に片側乳がん手術を受けた女性133名です。
除外基準は、
- 乳がんの再発
- 上肢の感染
- リンパ管炎
- 運動テストの絶対禁忌
となっております。
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介入内容
介入内容は、厳密にはウォーキングではなく、トレッドミルというランニングマシーンのようなもので歩行テストを行うといった内容です。
まずは、快適であると判断された速度でトレッドミルを歩き始め、運動強度を2分ごとに調整していきました。
参加者が継続できなくなるまで、またはテストを中止する兆候が現れるまで、運動強度を増加させています。
軽い歩行から始めて、徐々に運動負荷を挙げていくテストですね。
参加者の状態に応じて、歩行テストの時間が異なるので、実施時間は記載されていませんでした。
私の以前の職場のトレッドミル歩行テストで考えると、おそらく10-20分程度だと思われます。
歩行テストは、ちゃんとスリーブを装着して行っています。
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リンパ浮腫の評価
リンパ浮腫の程度は生体インピーダンス分光法を使用して、体液を通る周波数範囲(4〜5 kHz〜1,000 KHz)の交流電流の流れを評価することにより、上肢の体積を評価しています。
抵抗比が高くなると大きな体積を表します。つまり、リンパ浮腫が増悪したということになります。
リンパ浮腫の診断を受けているかどうかで2群に分けて、2群で歩行テスト前後で上肢の体積に変化があるかどうかを調査しています。
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結果
Smoot B, Zerzan S, Krasnoff J, et al. Upper extremity bioimpedance before and after treadmill testing in women post breast cancer treatment. Breast Cancer Res Treat. 2014 Nov;148(2):445-53.
非リンパ浮腫群70名、リンパ浮腫群63名で調査を行いました。
トレッドミル歩行前後の抵抗比の値を見ると、リンパ浮腫群では歩行前後で1.116→1.108と減少傾向であるのに対して、非リンパ浮腫群では0.990→1.001と明らかに増加しています。
つまり、リンパ浮腫群では歩行後に上肢の体積が減少して、非リンパ浮腫群では上肢の体積が増加したという結果です。
2群間で抵抗比の変化を比較しても、リンパ浮腫群の方が有意に減少している結果となっております。
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結論
リンパ浮腫の診断を受けた乳がん患者はトレッドミル歩行テスト後に、上肢の体積が減少し、リンパ浮腫でない患者は、トレッドミル歩行テスト後に、上肢の体積が増加していました。
ウォーキングのような運動でも上肢のリンパ浮腫改善の可能性があるのはすごいですね。
ウォーキングは下肢の運動というよりは全身運動ということなんでしょうか?
ただし、今回の研究ではあくまでウォーキングとは異なり、歩行テスト前後の変化ということに注意が必要です。
軽い負荷から始めて限界になったら終了するというテストなので、一定の負荷でウォーキングをしているわけではありません。
しかし、きつい負荷で運動しているのは最後の数分だけということを考えると、逆にそれでもリンパ浮腫が改善する可能性があるということなんでしょうね。
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・リンパ浮腫の診断を受けた乳がん患者は、トレッドミル歩行テスト後に上肢の体積が減少していた。
・ウォーキングのような運動でも上肢のリンパ浮腫を改善させる可能性があるかもしれない。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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