食道がん患者の予後とフレイルは関連するのか?

今回は食道がんの患者さんのフレイルが予後に影響を及ぼしているかを調査した研究を紹介します。

 

最近は、介護に陥りやすい状態をフレイルと呼び、特に高齢者においてフレイル予防・改善というのが重要視されています。

前回は、手術後の大腸がん患者さんのフレイルが予後と関係していることを紹介しました。

食道がん患者の予後とフレイルは関連するのか?

2022年4月3日

大腸がんも術後のリハビリで対応することは多いですが、術後の体力低下等で問題になりやすいがん種の一つが食道がんです。

腸や食道など、食事に関係する部分は栄養の問題なども重なってくるので注意が必要です。

そこで今回は、食道がんの患者さんのフレイルが予後に影響を及ぼしているかを調査した研究を紹介します。

まとめ
・食道がん患者さんのフレイルフレイルと予後との関連性を調査した論文を紹介。

・治療方法に関係なく、フレイルがあることは長期的な予後に影響していた。

・手術だけでなく、放射線治療や化学療法でも同じように治療前に運動を行っておいた方がいいようです。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、食道がんの患者さんのフレイルが予後に影響を及ぼしているかを調査した内容になっています。

「Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25」、2022年に発行された新しい論文です。日本の先生が執筆した論文です。

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対象

The present study was retrospectively conducted in a single institution using our prospectively maintained database. Between 2011 and 2016, 96 patients (aged ≥ 75 years) with esophageal squamous cell carcinoma with tumor depths of m3 and deeper were identified. The patient selection flow was as follows (Supplemental Fig. 1: Consort diagram). Of the 96 consecutive patients, 67 who underwent surgical or nonsurgical treatment were enrolled in this study. Each treatment was classified into curative treatment (red dashed square; n = 51) and non-curative treatment (blue dashed square; n = 16). Curative treatment was defined as R0 resection after surgery, curative endoscopic resection (ER), or definitive chemoradiotherapy. Strict observation after ER was defined as close follow-up by endoscopy and computed tomography for the non-curative case (n = 11), whereas subsequent endoscopic surveillance was defined as a regular check-up for curative resection case (n = 7).

Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

対象は、2011年から2016年の間に診断された75歳以上の食道扁平上皮がん患者さん96名です。

96名のうち、手術または保存治療を受けた67人がこの研究に登録されました。

各治療の内訳は、根治治療( n  = 51)と非根治治療( n= 16)となっています。

根治治療は、手術後のR0切除(腫瘍が取り切れている状態)、根治的内視鏡的切除(ER)、または根治的放射線化学療法として定義されています。

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調査内容

According to the CFS criteria, the CFS scores (1: very fit, 2: well, 3: well with treated comorbid disease, 4: apparently vulnerable, 5: mildly frail, 6: moderately frail, and 7: severely frail) of the 67 eligible patients were retrospectively evaluated based on the clinical data obtained from their medical records [689] regarding Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) performance status (PS) [10], American Society of Anesthesiologists-physical status (ASA-PS), comorbidity, nutritional status, cognitive function, activities of daily living, instrumental activities of daily living, each patient was classified into three simple classes of increasing frailty based on the following scores: 1–2 (without significant frailty, fit), 3–4 (not active but independent, pre-frail), and 5–7 (severe limitations in activities, frail).

To assess long-term outcomes, overall survival (OS) time, disease-specific survival (DSS) time, and relapse-free survival (RFS) time were evaluated. OS time was defined as the time from the date of diagnosis of esophageal cancer to death for any reason or interruption of follow-up. DSS time was determined as the time from the date of diagnosis of esophageal carcinoma to death from the primary disease, including operative mortality but excluding other causes of death, or to interruption of follow-up. RFS was calculated as the time between the dates of esophagectomy and death from any reason, or the time when recurrence was detected.

Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

フレイルはthe clinical frailty scale(CFS)という基準を用いて評価しています。

CFSスコアは1:非常に適合、2:良好、3:併存疾患の治療が良好、4:明らかに脆弱、5:軽度の虚弱、6:中程度の虚弱、7:重度の虚弱に採点されます。

点数が高いほどフレイルが重度になっているということです。

この研究ではCFSの点数で3群に群分けしています、1–2(重大な脆弱性なし、適合)、3–4(アクティブではないが独立している、脆弱性前)、および5–7(活動における重大な制限、脆弱性)の3群です。

長期転帰を評価するために、全生存期間(OS)、疾患特異的生存期間(DSS)、および無再発生存期間(RFS)が評価されています。

OSは、食道がんの診断日から何らかの理由またはフォローアップの中断により死亡するまでの時間として定義されました。

DSSは、食道がんの診断日から、他の死因を除いた原発性疾患による死亡(手術による死亡を含む)、またはフォローアップの中断までの時間として決定されました。

RFSは、食道切除の日付から何らかの理由で死亡するまでの時間、または再発が検出された時間として計算されました。

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結果

Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

こちらは67名の特徴とフレイルの有無による比較を示しています。

ECOG-PS(p  <0.001)、American Society of Anesthesiologists-physical status (p = 0.002)、Charlson comorbidity index (p < 0.001)という全身状態を表す指標はフレイルがある患者さんのほうが結果が悪くなっています。

また、フレイルの患者さんの方が手術の割合が少なくなっています。

体が弱ってきているので、手術に耐えられないと判断されるということでしょうね。

年齢、性別、治療を開始する前の栄養状態、認知症、Stage、および治療の治癒可能性などの他の要因では差は認めていません。

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T

Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

こちらは食道切除術を受けた患者(n = 36)の結果を示しています。

CDグレード≥IIおよび≥IIIaの術後合併症は、フレイルなしの群で26人(72.2%)、フレイルありの群で17人の患者(47.2%)で発生しました。

フレイルの有無にかかわらず、合併症の発生率は高いようですね。



Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

こちらのグラフは、右に進むと診断から治療が経過していることを示しており、下に下がると死亡率が増加していることを示しています。

そして、それぞれstage別やフレイルの有無で、長期的予後が変化するかを検討しています。

stageが高くなる、すなわち、がんが進行すると予後が悪くなることはもちろんですが、フレイルになることも長期的予後と関係しているようです。


Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

最後に、危険因子を分析しています。

単変量解析では、フレイル(CFSグレード≥3)がOSと有意に関連していることが明らかになりました(p  = 0.021)。

多変量解析でも、フレイルとStageが長期的予後と関係していることが認められました。

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結論

In conclusion, frailty could have a great impact on the prognosis of the patients in this cohort, regardless of surgical or nonsurgical treatment. The CFS score could be a promising prognostic predictor that is useful in making treatment decisions.

Impact of frailty on the long-term outcomes of elderly patients with esophageal squamous cell carcinoma. Tanaka T, Suda K, Ueno M, Iizuka T, Uyama I, Udagawa H. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2022 Mar 25

結論として、フレイルは、治療方法の違いに関係なく、食道がん患者さんの予後に大きな影響を与える可能性がありました。

CFSスコアは、治療法の決定に役立つ有望な予後予測因子となる可能性があります。

食道がん患者さんも治療前にフレイルの有無を確認して、フレイルがある場合には体力アップを図っておいた方がいいかもですね。

手術だけでなく、放射線治療や化学療法でも同じように治療前に運動を行っておいた方がいいようです。

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まとめ
・食道がん患者さんのフレイルフレイルと予後との関連性を調査した論文を紹介。

・治療方法に関係なく、フレイルがあることは長期的な予後に影響していた。

・手術だけでなく、放射線治療や化学療法でも同じように治療前に運動を行っておいた方がいいようです。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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