前回、がん患者さんの柔軟性低下のチェック方法について解説しました。
がん患者さんは柔軟性低下以外にも筋力や体力の低下も出現しやすいです。
例えば、がんそのものが筋肉に影響を与えたり、がん細胞から出る物質が筋肉の機能を低下させたりすることがあります。
また、化学療法や放射線療法といった治療も、副作用として筋力低下を引き起こす可能性があります。
実際に、乳がんの患者さんを対象とした研究では、治療開始前に下肢の筋力が25%、上肢の筋力が12~16%太ももの筋肉(四頭筋力)握力などが低下することが示されています(Vermaete et al.、Ann. Hematol.、93、2014)1 。
このように、がんと診断された時から、あるいは治療の過程で、筋力低下が起こる可能性があることを知っておくことは大切です。
筋力は、日常生活を送る上でとても大切なものです。もし筋力低下に早く気づき、適切な対策をとることができれば、より快適な生活を送ることにつながります。
今回は、ご自宅で簡単にできる筋力セルフチェックの方法をご紹介します。
まずは、ご自身の筋力が低下していないかをチェックすることが重要です!!
それぞれの動画で、スポーツ庁長官の室伏広治さんが丁寧に解説してくださっていますので、ぜひ動画と合わせて確認してみてください。
•壁にもたれ10秒姿勢を保つ
•膝つき腕立て伏せで10秒保持
•腕立て伏せ姿勢で10秒間保持
•片手で体を開き左右3秒保持
下半身の筋力チェック
•手で支え片膝立ちから立ち上がり
•手なしで片膝立ちから立ち上がり
•片足で椅子立ち上がり両腕クロス
•足組み片足立ちで椅子から立ち上がり
体幹の筋力チェック
•膝曲げ手伸ばし上体起こし5秒
•膝伸ばし手伸ばし上体起こし5秒
•腕組み上体起こし5秒間保持
•頭後で組み上体起こし5秒保持
1. 上体の筋力セルフチェック~LEVEL別にご紹介~

LEVEL 1:壁にもたれて姿勢を保つ
1.壁から4歩離れた位置に立ちます。
2.その場所から、両手を肩幅に開き、手で壁にもたれます。
3.体がくの字にならないようにまっすぐにしたまま、10秒間その姿勢を保てるか確認しましょう。
LEVEL 2:膝つき腕立て伏せの姿勢を保つ
1.膝をついた状態で、腕立て伏せの姿勢をとります。
2.足は地面につかないようにします。
3.両手は肩幅に開き、肘を伸ばしたまま、首、背中、膝までがまっすぐになるようにします。
4.その姿勢を10秒間保てるか確認しましょう。
5.背中が丸まったりしないように気をつけましょう。

LEVEL 3:腕立て伏せの姿勢を保つ
1.両手を肩幅で開きます。
2.肘をまっすぐ伸ばし、腕立て伏せの姿勢をとります。
3.足も肩幅まで開き、つま先で地面をしっかり押さえます。
4.首、背中、脚までがまっすぐになるようにして、10秒間保てるかどうか確認しましょう。
5.お尻が上がってくの字になったり、背中が反ったりしないように気をつけましょう。
LEVEL 4:片手で体を支えて開く
1.まず、腕立て伏せの姿勢で5秒間保ちます
2.そのまま片手で体を支えながら体を開き、開いた方の手が反対の手と一直線になるようにして3秒間保ちましょう
2. 下半身の筋力セルフチェック

LEVEL 1:片膝立ちからの立ち上がり(手の力も使用)
1.片膝をついた状態で、両手を膝の上に置きます。
2.背筋を伸ばします 。
3.その状態から手の力も使いながら、しっかりと立ち上がります。
4.ゆっくりとまた元の片膝立ちの状態に戻ります 。
5.左右それぞれ足を入れ替えて行いましょう 。
6.立ち上がり、しゃがむ際に足の裏の位置が変わらないように、またバランスを崩さないように注意しましょう 。
LEVEL 2:片膝立ちからの立ち上がり(手を腰に)
1.片膝をついた状態で、両手を腰に添えます。
2.背筋を伸ばします。
3.その状態から手の力を使わずに立ち上がります。
4.ゆっくりとまた元の片膝立ちの状態に戻ります。
5.左右の足を入れ替えて行いましょう。
6.立ち上がり、しゃがむ際に足の裏の位置が変わらないように、またバランスを崩さないように注意しましょう

LEVEL 3:椅子からの片足立ち上がり(両腕クロス)
1.膝の角度が90度になるように椅子に座り、両腕はクロスして胸に当てます。
2.片足を浮かせます。
3.その状態から片足で立ち上がります。
4.ゆっくりとまた元の椅子に座った状態に戻ります。
5.左右の足を入れ替えて行いましょう。
LEVEL 4:椅子からの片足立ち上がり(足を組む)
1.膝の角度が90度になるように椅子に座り、外くるぶしをもう一方の膝の上に乗せて足を組みます。
2.両手はクロスして胸に当てます。
3.その状態から片足で立ち上がります。
4.ゆっくりとまた元の椅子に座った状態に戻ります。
5.左右の足を入れ替えて行いましょう。
6.立ち上がる際に体がふらついたり、足の位置がずれないように注意しましょう
3. 体幹部の筋力セルフチェック

LEVEL 1:仰向け・膝曲げ・手前方伸ばしで上体起こし(5秒間静止)
1.仰向けになり、膝を曲げた状態で手を前方に伸ばします。
2.足の裏を地面につけ、膝は90度程度に曲げます。
3.手をぴんと伸ばしながら、肩甲骨が浮く高さまで上体を起こします。
4.その状態を5秒間静止できるかどうか確認しましょう。
LEVEL 2:仰向け・膝伸ばし・手前方伸ばしで上体起こし(5秒間静止)
1.仰向けになり、膝を伸ばした状態で手を前方に伸ばします。
2.手をぴんと伸ばしながら、肩甲骨が動く高さまで上体を起こします。
3.その状態を5秒間静止できるかどうか確認しましょう。
4.膝が曲がらないように注意しましょう

LEVEL 3:仰向け・足伸ばし・腕を胸の前で組んで上体起こし(5秒間静止)
1.仰向けになり、足を伸ばし、腕を胸の前で組んだ状態にします。
2.肩甲骨が浮く高さまで上体を起こします。
3.その状態を5秒間静止できるかどうか確認しましょう。
4.反動を使わず、体幹部の力で上体を起こしましょう。
LEVEL 4:仰向け・足伸ばし・腕を頭の後ろで組んで上体起こし(5秒間静止)
1.仰向けになり、足を伸ばし、腕を頭の後ろで組んだ状態にします。
2.肩甲骨が浮く高さまで上体を起こします。
3.その状態を5秒間静止できるかどうか確認しましょう。
4.首に力を入れすぎず、体幹の筋肉を意識しましょう
最後に
筋力のセルフチェックについて紹介しました。
もっと詳しい方法については、スポーツ庁のホームページ(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/jsa_00040.html)から動画で解説されておりますので、動画を視聴しながらチェックしてみてください!!
今回のセルフチェックは、あくまでご自身の筋力の目安を知るためのものです。
もし、ご紹介した姿勢を保つことが難しかったり、以前よりもできなくなっていたりする場合は、筋力低下の可能性があるかもしれません。
今回のセルフチェックで、もし体の動きに制限を感じる部分があったとしても、過度に心配しないでください。
ご自身の体の状態を知ることが、より良い生活を送るための第一歩です!!
筋力改善させるためのがんサバイバーに推奨される運動量について知りたい方はコチラにを参考にしてみてください。
•上体の筋力チェック
•壁にもたれ10秒姿勢を保つ
•膝つき腕立て伏せで10秒保持
•腕立て伏せ姿勢で10秒間保持
•片手で体を開き左右3秒保持
下半身の筋力チェック
•手で支え片膝立ちから立ち上がり
•手なしで片膝立ちから立ち上がり
•片足で椅子立ち上がり両腕クロス
•足組み片足立ちで椅子から立ち上がり
体幹の筋力チェック
•膝曲げ手伸ばし上体起こし5秒
•膝伸ばし手伸ばし上体起こし5秒
•腕組み上体起こし5秒間保持
•頭後で組み上体起こし5秒保持
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
最近のコメント