がんの身体症状に対して鍼灸治療は効果があるのか?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの身体症状に対する鍼灸治療の効果について記載している内容を紹介します。

がんの症状に対するマッサージやリラクセーションといった様々な治療の効果について記載している内容を紹介してきました。

がんの症状に対してマッサージは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年7月25日

がんの症状に対してリラクセーションは効果があるのか?【ガイドライン解説】

2022年8月7日

リラックスするような治療は、効果が期待できる可能性はありそうな結果でしたね。

 

日本では、痛みの治療として鍼灸治療も良く行われています。

腰痛患者さんが、鍼灸治療に行ったという話はたまに聞きますね。

実際その効果はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、がんの症状に対して鍼灸治療の効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対する鍼灸治療の効果について記載している内容を紹介。

・鍼灸治療はがん患者の痛みや泌尿器症状に効果が期待できそうである。

・消化器症状や呼吸器症状、倦怠感、睡眠障害に対しては、効果があるとは言い切れない。

・痛みで困っている場合には、一つの治療方法の選択肢として考えてもいいかもしれない。

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鍼灸治療の概要

鍼灸治療は,わが国においては補完代替療法として位置づけられているが,中医学においては漢方と同様に確立された標準治療です。

鍼灸治療は,中医学的診断に基づき経穴に対して鍼,艾,指圧などで何らかの刺激を与える治療法です。

一方,生理学に基づいた西洋医学的な鍼治療も行われており,欧米での研究報告の多くはこのアプローチを採択しています。

筋筋膜疼痛症候群のトリガーポイントを利用した疼痛コントロールなどもその一つになります。

近年,がん患者を対象とした研究報告も増加しており、特に,抗がん治療による有害事象の軽減すなわち支持療法的な治療として,米国のがん専門病院において鍼治療は積極的な取り組みが試みられています。

 

実施する際の一般的な注意事項として、

 

①腫瘍,潰瘍や浮腫などがある局所には治療を行わない。
②胸部や背部など,気胸を来す可能性がある部位には行わない。
③凝固異常のある患者は避ける。

 

などが記載されていますので注意しましょう。

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身体症状に対する効果

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

79編システマティックレビューをスクリーニングして、最終的に28編の論文から検討しています。

痛み

①がんによる痛みを有する患者に対して, 1 件の無作為化比較試験,2 件の非盲検化比較試験と4 件の非対照研究の文献的考察を行った結果,耳介鍼治療を用いた無作為化比較試験は質が高く,プラセボに比較して有意に痛みを軽減させました。

 

②18 歳以上のがん患者を対象にがんに直接関連する痛みに対して,鍼治療に関する3 件の無作為化比較試験(204 例)の文献的考察を行った結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療による鎮痛効果を示していました。

しかし,その他の2 件の試験においては,方法,サンプルサイズ,解析方法の点で不十分であり、成人がん患者における痛みに対して,鍼治療の有効性を判定するには十分なエビデンスはないと結論づけています。

 

③がん疼痛を有する患者を対象に鍼治療を行った15 件の無作為化比較試験について,相対リスク1.12(95%CI:0.98~1.28, n=886)であり,鍼治療は薬物療法と比較して優れた鎮痛効果を示しませんでした。

薬物療法に鍼治療を加えることは薬物療法単独に比較して,相対リスク1.36(95%CI:1.13~ 1.64,n=437)と有意に鎮痛効果を示しました。

 

④ がん患者の症状緩和を目的に鍼治療を実施した無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,がん疼痛に対する鍼治療の有効性は不明であると結論づけています。

 

⑤ がん患者を対象にがん関連痛に対して鍼治療を実施した3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,耳介鍼治療による1 件の無作為化比較試験は質の高い試験であり,鍼治療の鎮痛効果を示していました

その他の2 件の試験は,治療直後あるいは短期間の鎮痛効果のみを示していました。

 

⑥ 経皮的通電刺激によるがん疼痛治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,2 件の無作為化比較試験では対照群と比較して,鎮痛効果が認められませんでした。

 

⑦がん患者に対して経穴への薬物注射による種々の症状に関する22 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,がん疼痛の鎮痛効果においては有効ではないと結論づけています。

 

⑧ 緩和ケアの対象となるようながん患者を対象として,種々の症状に対する鍼治療や電気鍼治療の効果に関する無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,5 件において鍼治療はがん疼痛の緩和に有効であると結論づけています。

 

よって,耳介鍼治療は,がん患者の痛みの軽減に有用であると考えられます。

その他の鍼治療は試験デザイン,サンプルサイズ,解析方法などに限界があるため,さらに質の高い研究が必要であると結論付けています。

 

ガイドラインで効果があると結論付けられるのはすごいですね!

研究が盛んにおこなわれているので、その効果も認められているようですね。

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消化器症状

①がん患者の吃逆に対する鍼治療の効果に関して5 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,鍼治療は対照群と比較して,がん患者の吃逆の改善に有効でありました

また,鍼治療と薬物療法(筋肉注射)とを比較するためにメタアナリシスを行った結果,相対リスクは1.87(95%CI:1.26~2.78,I2=37%,n=162)であり,鍼治療は薬物療法と比較して,がん患者の吃逆の軽減に有効であると結論づけています。

 

② がん患者の吃逆に対する経穴への薬物注射(pharmacopuncture)による効果に関する2 件の無作為化比較試験の文献的考察を行い、1 件の試験では,pharmacopuncture は対照群と比較して統計学的に有意に吃逆を改善させたが,ほかの試験では統計学的有意差は認められませんでした。

 

よって,鍼治療は,がん患者の吃逆の軽減に有用であるとは結論づけられないとしています。

 

なぜか消化器症状に関してはしゃっくりに関する効果だけが調査されていますね。

吃逆も一回出現すると、なかなか収まらないので、有効な手段があれば助かりますね。

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呼吸器症状

進行がんおよび非がん疾患(慢性閉塞性肺疾患,間質性肺疾患,心不全,運動ニューロン疾患)による呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する47 件の無作為化比較試験および比較臨床試験の文献的考察を行った結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけています。

 

終末期がん患者の呼吸困難に対する鍼治療の効果に関する18件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,呼吸困難に対して鍼治療は推奨されないと結論づけています。

 

よって鍼治療は,がん患者の呼吸困難を軽減させる根拠はないと結論付けています。

 

呼吸器症状に対しては、あまり効果が期待できないようですね。

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泌尿器症状

①がん患者の術後尿閉に対する鍼治療または電気鍼治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,3 件の試験において鍼治療群は対照群と比較して残尿量が減少しており,術後尿閉を改善する可能性があると結論づけています

 

よって,鍼治療は,がん患者の術後尿閉の軽減に有用であると考えられると結論付けています。

 

機序はよくわかりませんが、泌尿器症状を改善させる効果が期待できるのは、最近注目されているメンズヘルス、ウィメンズヘルスの観点からも注目ですね。

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倦怠感

①がん患者の倦怠感に対する鍼治療や灸治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,鍼治療は指圧療法と比較して倦怠感を改善させました

また,標準的ケアに灸治療を併用することは標準的ケアのみに比較して,European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire‒C30( EORTC QLQ‒C30)における倦怠感を改善させました。

 

② がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,1 件のみ有効であったが,ほかの2 件では有効性は確認されず,鍼治療による倦怠感の改善は不明であると結論づけています。

 

③ がん患者の倦怠感に対する鍼治療の効果に関する7 件の無作為化比較試験の文献的考察を行った結果,4 件において鍼治療は偽鍼治療や通常のケアと比較して倦怠感を軽減させたが,3 件では偽鍼治療と比較して有効性は認められず,がん患者に対する鍼治療は倦怠感を改善させるとは結論づけられないと述べています。

 

④ がん患者の倦怠感に対する灸治療の効果に関する4 件の無作為化比較試験のメタアナリシスを行った結果,がん患者の倦怠感に対する灸治療の有効性は結論づけられないと述べています。

 

よって,鍼灸治療は,がん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論づけられないと結論付けています。

以上より,リラクセーションが,がん患者の倦怠感を軽減する根拠はないと結論付けています。

 

個別の論文では倦怠感に対する効果も期待できそうなんですけどね・・・。

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睡眠障害

がん患者の不眠に対する鍼治療の効果に関する3 件の無作為化比較試験の文献的考察を行っ結果,鍼治療の不眠に対する効果は不明であると結論しています。

 

よって,鍼治療は,がん患者の睡眠障害を軽減させる根拠はないと結論付けています。

 

論文数が少ないと、なかなか効果があるとは言えないようですね。

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まとめ

鍼灸治療はがん患者の痛みや泌尿器症状に効果が期待できそうです。

消化器症状や呼吸器症状、倦怠感、睡眠障害に対しては、効果があるとは言い切れないようですね。

倦怠感に関しては、個別の論文で効果を認めているものもあるので、多少期待してもよさそうですが。

 

やはり、鍼灸治療は痛みに対する治療ということですね。

思った以上に盛んに研究がおこなわれており、その効果が認められているので驚きでした。

鍼灸治療は周辺にたくさんあると思うので、一つの治療方法の選択肢として考えてもいいかもですね。

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まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がんの症状に対する鍼灸治療の効果について記載している内容を紹介。

・鍼灸治療はがん患者の痛みや泌尿器症状に効果が期待できそうである。

・消化器症状や呼吸器症状、倦怠感、睡眠障害に対しては、効果があるとは言い切れない。

・痛みで困っている場合には、一つの治療方法の選択肢として考えてもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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