乳癌治療として補完・代替療法は推奨されるのか?【ガイドライン解説】

今回は、乳癌診療ガイドラインより、乳癌治療として補完・代替療法は推奨されるのかについて記載している内容を紹介します。

前回は乳癌診療ガイドラインより、内分泌療法によるホットフラッシュ・関節痛の対応について紹介しました。

乳癌治療として補完・代替療法は推奨されるのか?【ガイドライン解説】

2022年10月29日

ホットフラッシュは難渋する症状であり、薬物療法が効果がない場合もありますが、鍼療法や運動といった代替手段も記載されていましたね。

以前も、補完・代替療法で症状が改善される効果があることも紹介しています。

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ところで、乳癌の治療自体には補完・代替療法は適応にならないのでしょうか?

  

そこで今回は、乳癌診療ガイドラインより、乳癌治療として補完・代替療法は推奨されるのかについて記載している内容を紹介します。

まとめ
・乳癌診療ガイドラインより乳癌治療として補完・代替療法は推奨されるのかについて記載している内容を紹介。

・内分泌療法によるホットフラッシュに対して,ホルモン補充療法は行うべきではない。

・選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法の有用性については,さらなる研究の蓄積が期待される。

・関節痛に対しては,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン等の薬物療法を行う。薬物療法で対処困難な場合には,内分泌療法の変更を行う。

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補完・代替療法の実施率

癌患者における補完・代替療法(complementary and alternative medicine;CAM)は,文献検索レベルで海外の乳癌患者では平均45%(17~75%)、国内癌患者では44.6%の方が行っています

 

乳癌や肺癌,肝臓癌では他部位よりも高率と報告され,多くの乳癌患者が使用しているが,それを医師に伝えているのは半数に過ぎないとの報告があります。

CAMの内容は人種間で違いがみられ,わが国のCAM利用者の9割以上が漢方やアガリクスなどのキノコ関連,サメの軟骨やビタミンなどの製品を使用しています。

欧米患者の利用目的は癌の進行に伴う痛みなどの症状緩和や心理的不安の軽減,通常の癌治療に伴う有害事象の症状緩和などである一方で,わが国では3分の2が癌の進行抑制を期待してCAMを使用しています。

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補完・代替療法の効果

Greenlee H, DuPont―Reyes MJ, Balneaves LG, Carlson LE, Cohen MR, Deng G, et al. Clinical practice guidelines on the evidence―based use of integrative therapies during and after breast cancer treatment. CA Cancer J Clin. 2017;67(3):194―232.

米国統合腫瘍学会(Society for Integrative Oncology;SIO)が,乳癌とCAMに関する4,900論文から203編のランダム化比較試験をレビューして2014年にガイドラインを発表し,2017年には米国がん協会によりその改訂版が発表されおり。乳癌治療中,治療後におけるエビデンスレベルの高い補完・代替医療がこのように示されています。

 

ランダム化比較試験より容認されるCAMとしては,肥満乳癌患者に対する脂肪摂取制限,内分泌療法によるホットフラッシュに対する鍼治療,ホットフラッシュによる睡眠障害に対する電気鍼治療,痛みや不安に対するマッサージ療法,適度な運動,サポートグループやリラクセーションなどによる心理療法や心体介入などが挙げられます。

日本人を対象とした報告からは,心理療法や心理サポートが乳癌患者の症状や感情の改善に役立つことが示唆されています。

 

一方で、これまでCAMによる抗腫瘍効果,再発抑制,延命に関する十分な証拠は得られておらず,上記ガイドラインでもこの点に関する推奨はされていません。

アガリクス摂取による劇症肝炎のように,CAMには報告されていない重篤な有害事象が起こる可能性があり,安易に利用を勧めることがあってはならないとされています。

また,標準的な治療を行わずにCAMのみを選択することは病状の進行や生命予後の短縮に結び付く可能性があり,科学的根拠に基づいてその効果と安全性をしっかりと患者や家族に説明する必要があります。

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結論

・乳癌の進行抑制や延命効果の目的で補完・代替療法は行うべきでない。
・標準的な癌治療に伴う症状の緩和や不安の軽減などを目的とした補完・代替療法には検討の余地がある。

 

症状改善などを目的として試す分には構いませんが、癌治療目的で補完・代替療法を行うことは推奨されないようですね。

治療としては、標準的な治療を行うことを最優先しましょう!!

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まとめ
・乳癌診療ガイドラインより、内分泌療法によるホットフラッシュ・関節痛の対応について記載している内容を紹介。

・内分泌療法によるホットフラッシュに対して,ホルモン補充療法は行うべきではない。

・選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法の有用性については,さらなる研究の蓄積が期待される。

・関節痛に対しては,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン等の薬物療法を行う。薬物療法で対処困難な場合には,内分泌療法の変更を行う。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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