呼吸困難に対する送風療法の効果

今回は、複数の論文をまとめて終末期がん患者も含めた呼吸困難に対する送風療法の効果を検討した論文を紹介します。

前回は緩和ケアの考え方について紹介しました。

緩和ケアの考え方を知っておこう!!

2022年5月17日

緩和ケア=終末期ではありませんが、緩和ケアや終末期では痛み以外にも呼吸困難が問題になることが多くあります。

呼吸困難に対して、うちわや扇風機での送風が効果があるとの報告がありますが、報告は少数でありその効果のほどははっきりしていませんでした。

今回は、複数の論文をまとめて終末期がん患者も含めた呼吸困難に対する送風療法の効果を検討した論文を紹介します。

まとめ
・複数の論文をまとめて終末期がん患者も含めた呼吸困難に対する送風療法の効果を検討した論文を紹介。

・送風療法は呼吸困難に対する効果があり、不快感がない結果であった。

・送風はうちわや扇風機など簡便かつ安価で可能なものが多いですので、非常に有用だと思われる。

・呼吸困難で苦しんでいるがん患者さんも多いですので、ぜひとも試してみましょう!

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、複数の論文をまとめて終末期がん患者も含めた呼吸困難に対する送風療法の効果を検討した内容になっています。

「角甲 純 , 中村 陽一, 西 智弘, 他. 呼吸困難を有する慢性進行性疾患患者に対する送風療法の有効性:システマティックレビュー・メタ解析. Palliative Care Research/17 巻 (2022) 1 号」、2022年に発行された最新の論文です。

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方法

慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法 の有効性を分析するために,Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA) 2020 Statement25) に従って,網羅的に文献検索を行っ た. 電子データベースである医中誌 Web 版 ver.5, Cochrane Library, EMBASE, MEDLINE を用いて,2019 年 10 月 23 日までの期間に報告されたすべての文献につ いて,「呼吸困難」「送風」をキーワードとして検索を 行った(検索式の詳細は付録表 1 参照).また,2020 年 6 月 30 日と 2021 年 12 月 7 日に,電子データベー スである PubMed を用いてハンドサーチを行った.

角甲 純 , 中村 陽一, 西 智弘, 他. 呼吸困難を有する慢性進行性疾患患者に対する送風療法の有効性:システマティックレビュー・メタ解析. Palliative Care Research/17 巻 (2022) 1 号

対象者はがん患者も含まれる慢性進行性疾患患者です。

対象に対して送風療法を行った10件の論文を解析しています。

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結果

角甲 純 , 中村 陽一, 西 智弘, 他. 呼吸困難を有する慢性進行性疾患患者に対する送風療法の有効性:システマティックレビュー・メタ解析. Palliative Care Research/17 巻 (2022) 1 号

送風療法は対照群と比 較して,標準化平均値差−1.43(95% 信頼区間−2.70 ~−0.17; I2 =94%;異質性の p 値<0.0001)であり, 呼吸困難に対する有効性が認められました。

短期単介入として サブグループ解析を行ったところ,標準化平均値差 −2.09(95% 信頼区間−3.78~−0.40; I2 =94%;異質性 の p 値<0.0001)であり,短期単介入として送風療法 を行った群で有意に呼吸困難を緩和するという結果が認められました。

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角甲 純 , 中村 陽一, 西 智弘, 他. 呼吸困難を有する慢性進行性疾患患者に対する送風療法の有効性:システマティックレビュー・メタ解析. Palliative Care Research/17 巻 (2022) 1 号

一方で不快感に対しても解析を行っています。

不快感の有無を報告する 3 件 31,34,37)の無作為化比 較試験についてメタ解析を行ったところ,リスク比 1.56(95% 信頼区間 0.42~5.72; I2 =0%;異質性の p 値 = 0.9938)であり,両群間で有意差は認められませんでした.

次に,メタ解析を行った 3 件のうち,短期介入 であった 1 件 37)を除いた 2 件について,長期介入 としてサブグループ解析を行ったところ,リスク比 1.47(95% 信頼区間 0.48~4.53; I2 =0%;異質性の p 値 = 0.9727)であり,両群間で有意差は認められませんでした。

呼吸困難に対して、送風療法は効果があり、不快感は強くないという素晴らしい結果ですね。

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結論

慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法について,システマティックレビュー・メタ解析を行った結果,送風療法は有効であることが明らかとなった.また,送風療法による不快感に対する報告を統合した結果,統計的な有意差は認められなかった.今後は,送風療法の普及実装に向けた取り組みが課題である.

角甲 純 , 中村 陽一, 西 智弘, 他. 呼吸困難を有する慢性進行性疾患患者に対する送風療法の有効性:システマティックレビュー・メタ解析. Palliative Care Research/17 巻 (2022) 1 号

送風療法は効果も期待でき、不快感も少ない優れた治療のようです。

送風はうちわや扇風機など簡便かつ安価で可能なものが多いですので、非常に有用だと思われます。

呼吸困難で苦しんでいるがん患者さんも多いですので、ぜひとも試してみましょう!

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まとめ
・複数の論文をまとめて終末期がん患者も含めた呼吸困難に対する送風療法の効果を検討した論文を紹介。

・送風療法は呼吸困難に対する効果があり、不快感がない結果であった。

・送風はうちわや扇風機など簡便かつ安価で可能なものが多いですので、非常に有用だと思われる。

・呼吸困難で苦しんでいるがん患者さんも多いですので、ぜひとも試してみましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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