再発・進行がん患者の外来リハの真のエンドポイントは何か?

今回は、外来でがんリハビリテーション(以下,がんリハ)を受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにし,がんリハの真のエンドポイントを検討した論文を紹介します。

 

がん患者さんに対してリハビリを行うことの重要性は説明してきましたが、そのエンドポイントは病状などによって異なります。

運動機能や生存率、リンパ浮腫や合併症の発生率、復職率など、その患者さんによって重要なことが異なってくるので、エンドポイントを何にするか悩ましいところですね。

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特に進行がん患者さんは症状も多岐にわたりますし、精神面も考慮する必要がありますので、何をエンドポイントにするのが望ましいんでしょうね?

 

今回は、外来でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにし,がんリハの真のエンドポイントを検討した論文を紹介します。

まとめ
・外来でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにし,がんリハの真のエンドポイントを検討した論文を紹介。

・外来通院でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにした結果,【自分にあった身体の状態を見つける】【うまく自分の中で生かせる運動が掴めない】【普段と変わりない日常生活を継続できる】【自分が動けていることを周りに示す】【自分で身体を動かしていく愉しみがある】【いまの自分の‘生きる’ことを意味付けてくれる】の六つのカテゴリーが抽出された。

・がんリハの特徴として,「身体機能が変化する中でコントロール感覚が掴める」「自分で身体を動かせるという自律性がある」「自分の可能性を広げていく新たなる意味付けとなる」と考えられた.

単純な運動だけでなく、フィードバックや声掛けなどをうまく活用しながら、満足感を得たり、励みになるように工夫していくことが重要である。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、外来でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにし,がんリハの真のエンドポイントを検討した内容になっています。

「外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134」、2022年に発行された最新の論文です。

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対象

2021 年 8 月~2022 年 1 月に,がん薬物療法中でがんリハを外来通院で行っている 20 歳以上の再発・進行がん患者とし,調査協力に関する自己決定が行えないと主治医が判断した患者やがんリハ適応外の患者は除外した.

外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

最近は化学療法も通院で行うことが多くなっていますので、通院治療を行いながら外来リハを行っているようです。

通院治療時の待ち時間を有効利用してがんリハを実施しているようですので、参考にしたいですね。

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調査内容

研究協力者の都合のよい日時,時間帯を設定し,プライバシーに配慮できる場所でインタビューを行った.時間は 30~60 分とした.

1. 個別分析:面接の逐語録を繰り返して読み再発・進行がん患者の外来通院でのがんリハの経験について語られている内容について,前後の文脈を考慮して解釈し,その内容が患者の思いとして象徴的に示されるように命名し,簡潔な文章でコードを作成した.次に類似するコードをまとめてサブカテゴリーとした.

2. 全体分析:個別分析より得られたすべてのサブカテゴリーを集め,比較検討し,さらに意味内容が類似したものを集め,再発・進行がん患者の外来通院でのがんリハの経験として象徴的な意味を表すように表現し,カテゴリーとした.

外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

いわゆる質的研究という手法ですね。

面接は「リハビリを行うことで感じていることを教えてください,そのように思われるのはなぜですか?」「リハビリしてから変わったことはありますか?」「あなたにとってリハビリはどういうものですか?」といった内容を自由に回答してもらうようです。

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結果

外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

外来通院でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験として,6 カテゴリー,18 サブカテゴリー,45 コードが抽出されました.

 

【自分にあった身体の状態を見つける】

再発・進行がん患者は,がんリハを通して[いまの自分の身体の状態把握ができる]ことでいまの治療に耐えられるように[前の身体の状態に戻すようにする]努力をしていました.

また,外来通院でがんリハを定期的に行うことで〔身体が鍛えられている]と感じ,[1 日でも長く身体を動かし続ける]ようにしてい.ました.

 

【うまく自分の中で生かせる運動が掴めない】

再発・進行がん患者は,医療者が自分の身体の状態を考えてがんリハを行ってくれるに対して[思うようにがんリハの効果を示せない申し訳なさ]を感じていました.

また,自宅でのトレーニングに取り組むことができない状況があり,[自分の生活にがんリハを上手く組み込めない]と語っていました.

さらに,がんリハをして自分の身体が劇的に変化したとは思えず,[運動が自分に役立っていると思えない]と感じていました.

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外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

【普段と変わりない日常生活を継続できる】

再発・進行がん患者は,普段の生活に支障がないように[いまの自分の日常生活の基盤を維持する]生活をしており,がんリハをしているから家事を今まで通りに行うことができ,[家族の中の役割は果たし続ける]ことができると語っていました.

 

【自分が動けていることを周りに示す】

再発・進行がん患者は,がんリハを通して身体を動かせることで人の役に立つことができると[自分にかけられた周りの期待に応える]気持ちを持っていました.

また,全部自分一人できるようにすることで,こんな病気でも最後の最後まで[誰にも迷惑をかけないようにする]としていました.

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外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

【自分で身体を動かしていく愉しみがある】

再発・進行がん患者は,がんリハを通して今日はこれができたという満足感を得ており,[自分はできるという自信が持てる]と感じていました.

それは,自分自身が頑張ろうとする力をもらえる状況を作り,[自分がやらなければならないと奮起できる]気持ちになっていた.また,[身体を動かすことで症状を抑えている]と考えると[身体が動くことに嬉しさがある]と身体を動かすと気持ちよくなっていました.

 

【いまの自分の‘生きる’ことを意味付けてくれる】

再発・進行がん患者は,根治不能な状態の中,不安定な心の揺れを[身体を動かすことで精神状態を平らにできる]と感じ,気持ちが安定する感覚を感じていた.がんリハは単なる身体機能を高めてくれるだけではなく,[自分が生きていくことを支えてくれる]もので生きていく励みになっていました.

それは,その日その日を一生懸命生き切ろうと思える気持ちにさせ,[いま自分が生きる価値付けをしてくれる]と感じていました.

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結論

外来通院でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにした結果,【自分にあった身体の状態を見つける】【うまく自分の中で生かせる運動が掴めない】【普段と変わりない日常生活を継続できる】【自分が動けていることを周りに示す】【自分で身体を動かしていく愉しみがある】【いまの自分の‘生きる’ことを意味付けてくれる】の六つのカテゴリーが抽出された.

がんリハの特徴として,「身体機能が変化する中でコントロール感覚が掴める」「自分で身体を動かせるという自律性がある」「自分の可能性を広げていく新たなる意味付けとなる」と考えられた.

外来でがんリハビリテーションを受ける再発・進行がん患者の経験 勝島 詩恵, 今井 芳枝, 橋本 理恵子, 三木 恵美, 荒堀 広美, 井上 勇太, 長谷 公隆 Palliative Care Research 2022年 17 巻 4 号 127-134

なかなか数値で示せる部分ではないですけれども、上記のような内容に関して、患者さんが満足できているかを確認しておく必要があるようです。

 

この論文を読んで、以前緩和ケアの看護師さんに、「ネガティブな知らせが多くなっていく中で、リハビリはそれを行えたというだけでもポジティブになれる数少ない手段です。」と言っていただけたのを思い出しました。

 

単純な運動だけでなく、フィードバックや声掛けなどをうまく活用しながら、満足感を得たり、励みになるように工夫していくことが重要ですね。

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まとめ
・外来でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにし,がんリハの真のエンドポイントを検討した論文を紹介。

・外来通院でがんリハを受ける再発・進行がん患者の経験を明らかにした結果,【自分にあった身体の状態を見つける】【うまく自分の中で生かせる運動が掴めない】【普段と変わりない日常生活を継続できる】【自分が動けていることを周りに示す】【自分で身体を動かしていく愉しみがある】【いまの自分の‘生きる’ことを意味付けてくれる】の六つのカテゴリーが抽出された。

・がんリハの特徴として,「身体機能が変化する中でコントロール感覚が掴める」「自分で身体を動かせるという自律性がある」「自分の可能性を広げていく新たなる意味付けとなる」と考えられた.

単純な運動だけでなく、フィードバックや声掛けなどをうまく活用しながら、満足感を得たり、励みになるように工夫していくことが重要である。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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