大腸がんの手術前のリハビリは持久力改善や合併症予防に効果がある

今回は大腸がんの手術前のリハビリ(プレリハビリテーション)の効果について、複数の論文を吟味して検証するメタアナリシスという解析を行っている最新の論文を紹介します。

前回はフレイルながん患者さんの手術前のリハビリの効果について紹介しました。

大腸がんの手術前のリハビリは持久力改善や合併症予防に効果がある

2022年5月22日

効果があるとは強くは言えませんでしたが、持久力改善や術後合併症予防に効果がありそうな印象でしたね。

 

また、以前に大腸がん患者さんの手術前のリハビリの効果について検討した論文も紹介しました。

大腸がんの手術前の運動、リハビリの効果は??

2022年4月15日

こちらも、手術前のリハビリが効果があると強くは言えてなかったですね。

 

しかし、手術前に運動を行い、筋力や持久力をアップさせることは非常に有意義なことだと考えられます。

Molenaar CJ, van Rooijen SJ, Fokkenrood HJ, Roumen RM, Janssen L, Slooter GD. Prehabilitation versus no prehabilitation to improve functional capacity, reduce postoperative complications and improve quality of life in colorectal cancer surgery. Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 19;5(5).

考え方としては、上の図の左側が手術前、右側が手術後の状態で、下の部分が多いほど状態が悪いようなイメージであるとして、一番薄い青色が何もしていない状態、その次が術後の栄養と運動を強化した状態、その次がそれに加えて手術前のリハビリまで行った状態です。

そこまで行うと、手術前の状態もいいし、手術後の状態の落ち込み具合も少なとく改善しやすいという考え方ですね。

 

しかし、一つの研究で、なかなか効果を証明することって難しい場合も多いんですよね・・・。

そこで、複数の質の高い論文を吟味して、その効果を検証するメタアナリシスという統計解析方法を使用することも増えてきています。

この解析方法は論文の中では最も質が高い根拠として位置づけられています。

私の記事の中でも、その手法を用いた論文を紹介するも度々あります。

そこで今回は、大腸がんの手術前のリハビリ(プレリハビリテーション)の効果について、メタアナリシスという解析を用いて検討している最新の論文を紹介します。

まとめ
・大腸がんの手術前のリハビリ(プレリハビリテーション)の効果について、メタアナリシスという解析を用いて検討している最新の論文を紹介。

・3つの研究をメタアナリシスで解析を行った。

・術前、術後の6分間歩行距離の改善や術後合併症の減少などが認められたが、エビデンスは高くはなかった。

・少しずつ、プレハビリテーションの効果が明らかになってきているので、やはり手術前に運動は行うようにしておきましょう。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、大腸がんの手術前のリハビリの効果について、メタアナリシスという解析を用いて検討している内容となっています。

「Molenaar CJ, van Rooijen SJ, Fokkenrood HJ, Roumen RM, Janssen L, Slooter GD. Prehabilitation versus no prehabilitation to improve functional capacity, reduce postoperative complications and improve quality of life in colorectal cancer surgery. Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 19;5(5).」、2022年に発行された最新の論文です。コクランデータベースといって、質の高い研究をまとめて、エビデンスを構築してくれいてる団体の論文なので、信頼性が高いと思います。

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方法

Search methods: We searched CENTRAL, MEDLINE, Embase and PsycINFO in January 2021.Selection criteria: We included randomised controlled trials (RCTs) in adult patients with non-metastatic colorectal cancer, scheduled for surgery, comparing multimodal prehabilitation programmes (defined as comprising at least two preoperative interventions) with no prehabilitation. We focused on the following outcomes: functional capacity (i.e. 6-minute walk test, VO2peak, handgrip strength), postoperative outcomes (i.e. complications, mortality, length of hospital stay, emergency department visits, re-admissions), health-related quality of life, compliance, safety of prehabilitation, and return to normal activities.

Molenaar CJ, van Rooijen SJ, Fokkenrood HJ, Roumen RM, Janssen L, Slooter GD. Prehabilitation versus no prehabilitation to improve functional capacity, reduce postoperative complications and improve quality of life in colorectal cancer surgery. Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 19;5(5).

2021年1月にCENTRAL、MEDLINE、Embase、PsycINFOを検索しています。

選択基準は、手術が予定されている非転移性大腸がん成人患者を対象とし、多剤併用プレハビリテーションプログラムのありなしを比較した無作為化対照試験(RCT)を対象としています。

機能的能力(6分間歩行試験、VO2peak、握力)、術後成績(合併症、死亡率、入院期間、救急外来受診、再入院)、健康関連QOL、コンプライアンス、プレハビリテーションの安全性、通常活動への復帰について検討しています。

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結果

We included three RCTs that enrolled 250 participants with non-metastatic colorectal cancer, scheduled for elective (mainly laparoscopic) surgery. Outcomes of these participants were compared to those of 120 participants who started an identical but postoperative programme. Postoperatively, prehabilitation may improve functional capacity, determined with the 6-minute walk test at four and eight weeks (mean difference (MD) 26.02, 95% confidence interval (CI) -13.81 to 65.85; 2 studies; n = 131; and MD 26.58, 95% CI -8.88 to 62.04; 2 studies; n = 140); however, the certainty of evidence is low and very low, respectively, due to serious risk of bias, imprecision, and inconsistency. After prehabilitation, the functional capacity before surgery improved, with a clinically relevant mean difference of 24.91 metres (95% CI 11.24 to 38.57; 3 studies; n = 225). The certainty of evidence was moderate due to downgrading for serious risk of bias. Prehabilitation may also result in fewer complications (RR 0.95, 95% CI 0.70 to 1.29; 3 studies; n = 250) and fewer emergency department visits (RR 0.72, 95% CI 0.39 to 1.32; 3 studies; n = 250). The certainty of evidence was low due to downgrading for serious risk of bias and imprecision. On the other hand, prehabilitation may also result in a higher re-admission rate (RR 1.20, 95% CI 0.54 to 2.65; 3 studies; n = 250). The certainty of evidence was again low due to downgrading for risk of bias and imprecision. The effect on VO2peak, handgrip strength, length of hospital stay, mortality rate, health-related quality of life, return to normal activities, safety of the programme, and compliance rate could not be analysed quantitatively due to missing or insufficient data.

Molenaar CJ, van Rooijen SJ, Fokkenrood HJ, Roumen RM, Janssen L, Slooter GD. Prehabilitation versus no prehabilitation to improve functional capacity, reduce postoperative complications and improve quality of life in colorectal cancer surgery. Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 19;5(5).

非転移性大腸がんで、待機的手術(主に腹腔鏡手術)が予定されている250人を登録した3件のRCTを対象としました。

術後、プレハビリテーションは、4週間および8週間の6分間歩行テストで判定される機能能力を改善する可能性があります(平均差(MD)26.02、95%信頼区間(CI)-13.81~65.85;2研究;n = 131;およびMD 26.58、95%CI -8.88~62.04;2 研究;n = 140)。

しかし、バイアス、不正確、矛盾のリスクが大きいため、証拠の確実性は非常に低いとなっています。

プレリハビリテーション後、手術前の機能的能力は改善し、臨床的に関連する平均差は24.91m(95%CI 11.24~38.57; 3研究; n = 225)でした。

エビデンスの確実性は中程度でした。

プレハビリテーションは、合併症の減少(RR 0.95、95%CI 0.70~1.29;3研究;n = 250)および救急部訪問の減少(RR 0.72、95%CI 0.39~1.32;3研究;n = 250)につながる可能性もあります。

しかし、エビデンスの確実性は低くなっています。

一方、プレハビリテーションは再入院率の上昇をもたらす可能性もあります(RR 1.20、95%CI 0.54~2.65;3件の研究;n = 250)。

こちらもエビデンスの確実性は再び低くなっています。

VO2peak、握力、入院期間、死亡率、健康関連QOL、通常活動への復帰、プログラムの安全性、および遵守率に対する効果は、データが不足しているか不十分であるため定量的に分析することができていません。

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結論

Prehabilitation may result in an improved functional capacity, determined with the 6-minute walk test both preoperatively and postoperatively. Complication rates and the number of emergency department visits postoperatively may also diminish due to a prehabilitation programme, while the number of re-admissions may be higher in the prehabilitation group. The certainty of evidence ranges from moderate to very low, due to downgrading for serious risk of bias, imprecision and inconsistency. In addition, only three heterogeneous studies were included in this review. Therefore, the findings of this review should be interpreted with caution. Numerous relevant RCTs are ongoing and will be included in a future update of this review.

Molenaar CJ, van Rooijen SJ, Fokkenrood HJ, Roumen RM, Janssen L, Slooter GD. Prehabilitation versus no prehabilitation to improve functional capacity, reduce postoperative complications and improve quality of life in colorectal cancer surgery. Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 19;5(5).

プレリハビリテーションは、術前・術後ともに6分間歩行試験で測定される機能的能力の向上につながる可能性があります。

術後の合併症発生率および救急外来受診回数も、プレハビリテーションプログラムにより減少する可能性があるが、再入院の回数はプレリハビリテーション群で多くなる可能性がありました。

エビデンスの確実性は、重大なバイアスリスク、不正確性、矛盾を理由に格下げされたため、中程度から非常に低いレベルとなっています。

さらに、このレビューには3つの研究しか含まれていないため、このレビューの知見は慎重に解釈されるべきです。

 

エビデンスは高くはないですが、大腸がんの手術前のリハビリが持久力改善や術後の合併症予防に効果がありそうな結果となっていますね。

一方で、再入院率が高くなっていますが、これはなぜでしょうね?解釈が難しいですね・・・。

3つの論文しか吟味できていないので、まだまだこれから研究される分野なんでしょうね。

少しずつ効果が明らかになってきているようですので、手術前に筋力、体力をつけておくために、運動は行うようにしておきましょう!

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まとめ
・大腸がんの手術前のリハビリ(プレリハビリテーション)の効果について、メタアナリシスという解析を用いて検討している最新の論文を紹介。

・3つの研究をメタアナリシスで解析を行った。

・術前、術後の6分間歩行距離の改善や術後合併症の減少などが認められたが、エビデンスは高くはなかった。

・少しずつ、プレハビリテーションの効果が明らかになってきているので、やはり手術前に運動は行うようにしておきましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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