フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果はあるのか?

最近は手術前に行うプレハビリテーションというものが注目されています。今回は、フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果があるかを検討した最新の論文を紹介します。

以前も手術前のリハビリの効果について紹介しました。

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手術前にリハビリを行って体力をつけておいた方が術後の成績は良さそうですが、そのことについてはまだ研究が少なく議論されているようです。

そこで今回は、フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果があるかを検討した最新の論文を紹介します。

まとめ
・フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果があるかを検討した最新の論文を紹介。

・フレイルながん患者さんに対して、手術前のリハビリテーションを行うことで、6分間歩行距離や障害度、術後合併症などで有意な改善を認めた。

・しかし、統計的には有意であっても臨床的に意義のある改善ではなかったので、プレハビリテーションの効果があったとは強くは言えないようである。

・フレイルな患者さんは手術前の運動は、運動内容や期間を検討して行った方がいいかもしれない。

・安全性は問題ないようなので、手術前に運動は行うようにしましょう!

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果があるかを検討した内容になっています。

「McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.」、2022年に発行された最新の論文です。

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対象

Patients were recruited in surgical clinics at the time of booking for any elective surgical resection with curative intent for intra-abdominal or thoracic cancer (colorectal, thoracic, hepatobiliary, or urologic).Inclusion criteria included: age ≥60 yr, the ability to communicate in French or English, and a score of ≥4/9 on the Clinical Frailty Scale (this cut-off maximises sensitivity and specificity for identifying older patients who will develop new disability after surgery).1,5 Frailty assessors were trained and certified using standardised techniques.22 Participants were excluded if their expected surgery date was <21 days from the day of enrolment (if the actual time from enrolment to surgery was <21 days patients were not excluded). Participants underwent post-randomisation exclusion if their surgery was cancelled or if their tumour was deemed non-resectable on the day of surgery (as judged by the surgeon, who was blinded to allocation).23

McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.

対象患者は、腹腔内または胸腔内のがん(大腸がん、胸腔がん、肝胆膵がん、泌尿器がん)に対する治癒を目的とした選択的外科的切除予定の方です。

参加基準は、年齢60歳以上、フランス語または英語でのコミュニケーション能力、Clinical Frailty Scaleのスコア4/9以上(このカットオフ値は、術後に新たな障害を発症する高齢患者を特定するための感度および特異性を最大化する)1,5としています。

参加者は、手術がキャンセルされた場合、または手術日に腫瘍が切除不能と判断された場合(割り付けを盲検化した外科医の判断による)に除外されています。

方法

The intervention was a home-based total-body exercise training program (exercise prehabilitation), based on a protocol with proved efficacy in improving the function of people without frailty in <4 weeks before surgery.13,24 Exercise prehabilitation was prescribed as 1 h sessions, done at least three times per week, consisting of three components: 1) strength training (one set of 10 repetitions of 10 exercises, modified to the individual’s capabilities: push ups, seated rows, chest fly, deltoid lift, bicep curls, triceps extensions, chair squats, hamstring curls, standing calf raises, and abdominal crunches); 2) aerobic exercise (e.g. walking, biking, or swimming) for 20 min at moderate intensity); and 3) flexibility (six stretches, each to be held for 20 s, done for two repetitions, targeting the chest, arms, legs, and trunk). A healthy eating before surgery guide was also provided

McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.

介入は、手術前の4週間未満でフレイルでない人の機能を改善する効果が証明されたプロトコルに基づく、在宅での全身運動トレーニングプログラムを行っています。

プレハビリテーションは、1時間のセッションで、少なくとも週3回、3要素からなると規定されています。

1)筋力トレーニング(個人の能力に合わせて変更した10種類のエクササイズを10回繰り返す1セット:腕立て伏せ、シーテッドロー、チェストフライ、三角筋リフト、二頭筋カール、三頭筋エクステンション、チェアスクワット、ハムストリングカール、スタンディングカーフレイズ、アブドミナルクランチ)

2)有酸素運動(例:ウォーキング、サイクリング、スイミング)を中程度の強度で20分間)

3)ストレッチング(胸、腕、脚、体幹を対象とした6つのストレッチを、それぞれ20秒間保持し、2回ずつ繰り返す)。

手術前の健康的な食事ガイドも提供されています

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結果

We assessed 543 patients for eligibility from January 19, 2017 to November 15, 2019. Of these patients, 180 were excluded for not having frailty (<4/9 on the Clinical Frailty Scale) and 50 declined to participate. We randomised 204 patients (102 to each of prehabilitation and control; Fig 1). The modified intention to treat population consisted of 94 intervention arm participants (eight were excluded as a result of not having the planned surgery [n=7] or death before surgery [n=1]), and 88 control arm participants (14 were excluded because of not having the planned surgery). Follow-up was complete for 163 (90%) participants. The intervention arm had a greater proportion of females, lower baseline 6MWT distance, and more individuals with a fear of falling (Table 1).

McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.

2017年1月19日から2019年11月15日まで、543人の患者の参加資格を評価しました。

このうち、180名がフレイルでないとして除外され、50名が参加を辞退しました。

204名の患者を無作為化しました(プレハビリテーションとコントロールにそれぞれ102名ずつ)。


McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.

規定エクササイズの80%以上を完了した対象者と比較すると、プレはビリテーションを行うと術後の6MWTパフォーマンスが有意に改善し(76m、95%CI 30~122m、P=0.001)、合併症が少なく(率比0.60、95%CI 0.41~0.99、P=0.048)、障害スコアも低い(-4、95%CI -7~-1、P=0.019)ことが報告されました。

その他の項目では有意差はなく、術後90日では、転倒の有意差は確認されませんでした。

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結論

In a randomised trial of home-based exercise prehabilitation, cancer surgery patients with frailty did not improve their postoperative functional recovery or other outcomes compared with standard care plus written activity and dietary guidelines. Efforts to understand and overcome barriers to prehabilitation adherence may be required to help older people with frailty realise the potential benefits of prehabilitation.

McIsaac DI, Hladkowicz E, Bryson GL, et al. Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial. Br J Anaesth. 2022 May 16:S0007-0912(22)00188-X.

在宅での運動によるプレリハビリテーションの無作為化試験において、虚弱のあるがん手術患者は、標準ケアに加え、活動および食事のガイドラインを文書化したものと比較して、術後の機能回復やその他のアウトカムが改善されませんでした。

虚弱高齢者がプレハビリテーションの潜在的利益を実感できるようにするためには、プレハビリテーションのアドヒアランスに対する障害を理解し克服する努力が必要だと思われる。

6分間歩行テストなど、プレハビリテーションを行うことで一部に改善は認められていますが、大きな改善ではなく、強い効果は認めなかったとの結果になっています。

安全性は問題ないので、運動内容や期間など、フレイルな患者さんに関しては手術前のリハビリの内容を検討したほうがいいのかもしれません。

いずれにしろ、手術前に筋力、体力をつけておくことは必須なので、運動は行うようにしておきましょう!

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まとめ
・フレイルながん患者さんが手術前に運動すると効果があるかを検討した最新の論文を紹介。

・フレイルながん患者さんに対して、手術前のリハビリテーションを行うことで、6分間歩行距離や障害度、術後合併症などで有意な改善を認めた。

・しかし、統計的には有意であっても臨床的に意義のある改善ではなかったので、プレハビリテーションの効果があったとは強くは言えないようである。

・フレイルな患者さんは手術前の運動は、運動内容や期間を検討して行った方がいいかもしれない。

・安全性は問題ないようなので、手術前に運動は行うようにしましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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