骨転移がある人が骨折動作のポイント

今回は、骨転移の患者さんが注意すべき動作のポイントについて紹介します。

前回は骨転移のある人でも、運動は安全かつ有効な可能性があるといったレビューを紹介しました。

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2022年4月21日

ただし、可能であれば専門家の監督下で管理されたうえで行うことが望ましいとのことです。

運動は必要ですが、リスク管理をしっかりと行う必要があるということですね。

でも、なかなか専門家とともに運動するということは少ないですので、自分で管理しないといけませんよね。

そこで今回は、骨転移の患者さんが注意すべき動作のポイントについて紹介します。

「ABC Cooking Studio」から生まれた女性専用フィットネスジム【Bodies】

動作のポイント

安部 能成:がん患者と対症療法,18(1),2007

上の図が骨転移の患者さんが注意すべき動作のまとめになります。

それでは一つずつ解説していきましょう。

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①疼痛を引き起こさない

骨転移の特徴の一つとしては、動作時の疼痛が出現しやすいということでした。

骨転移以外の疾患もそうですが、「痛い」ということは、身体のどこかにストレスがかかっているということなので、あまりいいことではありません。

もちろん、身体が硬くて、運動中に筋肉が伸ばされるような、それほど問題にならない痛みもあります。

ただし、骨転移の部分に痛みが生じているということは、骨転移に負荷がかかっている可能性が高いので無理はしない方がいいですね。

痛みをこらえて根性で頑張っても良くなる可能性は低いです。

むしろ、痛みが少ない動作でしっかりと運動できる方が大事ですね。

基本的には、痛みが出ない動作で生活や運動を行っていれば骨折のリスクは減少すると覚えておきましょう。

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②回旋・捻転に注意

骨っていうのは基本的に垂直にかかる負荷には強い構造になっています。

弱いのは横から加わる力や捻じれが生じる力になります。

ですので、転倒や捻るような動作には最も注意が必要です。

捻る動作で注意が必要なのは寝返りや起き上がりです。

がんロコモに対するリハビリテーション治療 篠田 裕介 The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2020年 57 巻 4 号 296-304

寝返りのポイントは頭~足までを一直線にして、ねじらないように行うことです。

表現としては、「身体を一本の丸太のようにイメージして」などと指導することが多いですね。

腕だけや脚だけを動かしながら寝返りすると、ねじりの動作が入ってしまうので注意しましょう。

がんロコモに対するリハビリテーション治療 篠田 裕介 The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2020年 57 巻 4 号 296-304

起き上がり動作は、ねじらないように注意して横を向いてから、足を下ろして起き上がるような感じです。

仰向けからそのまま起きてしまうと、背骨に骨転移があると負担がかかりすぎてしまいます。

電動ベッドがあれば、横向きの状態で少しベッドを起こしてから起き上がると、だいぶん楽になると思います。

腕に骨転移がある場合には、起き上がろうと手すりやベッドを押すような動作にも注意が必要です。

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③ゆっくりとした動作で行う

痛みが出ないようにと意識していても、反動つけて勢いよく動いてしまうと、痛みを感じる間もなく骨折してしまう可能性があります。

基本的に動作はゆっくりゆっくり注意して行いながら、痛みが出た時点で無理しないようにしておけば安全です。

ゆっくり動けば、どのような動作で痛みが出るので無理しない方がいいのかを把握できるようになってきます。

ただし、ゆっくりした動きは、より筋力が必要となりますので、痛みが出る動きを把握できれば、安全な動きに関しては徐々に普通に動いていくようにしていければいいですね。

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④能動的動作を中心に

能動的動作というのは自分の力で行う動作という意味になります。

対になる言葉として、他動的動作という言葉があり、こちらは理学療法士など他者に動かしてもらう動作になります。

例えば、関節が固まらないように他者にストレッチしてもらうなどが、他動的運動になります。

痛くて自分で動かせない部分を他動的に動かしてもらうというのはいいときもあるのですが、他者に無理に動かされるので不安だったり、骨に負担がかかってしまう可能性もあります。

なので、痛みの程度を見ながら自分でゆっくりと動かす方が望ましいと考えられています。

さらに、自分で動かすと筋肉を使うので、筋肉で保護されながら動かすことで負担が少なくなるということになります。

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⑤動作時の関節可動域の縮小

関節を大きく動かすほどに骨にかかる負担が大きくなるので、骨転移がある部分の周りの関節はあまり動かし過ぎずに動作を行う方が安全になります。

腰に骨転移がある場合には、コルセットで腰の動きを制限することも骨折予防の一つの手段になります。


菊内祐人,中田英二,杉原進介, 藤田智彦・ 他: 骨転移のリハビリテーション. OT ジャー ナル 48: 293-297, 2014

他にも、立ち上がる動作などは、低い場所から立ち上がると膝や股関節の動きが大きくなってしまうので、高い椅子やベッドから立ち上がるように工夫することも大事になります。

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⑥荷重の分散

下肢の骨転移に関しては、体重がかかりすぎると骨折のリスクが高くなる場合があるので、歩行器や杖を使用して、荷重がかかり過ぎないようにすることも必要な場合があります。

基本的には、体重をかけていたい場合には、無理にウォーキングを行わずに、杖などを使用して負担がかかり過ぎないようにした方がいいですね。

負担をかけないように注意しながら、薬物療法や放射線治療で骨折のリスクを減らしていき、骨折のリスクが減って疼痛がなくなってきたら、杖を外すという流れですね。

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さらに、杖や歩行器の使い方にも注意が必要です。

松葉杖を使用する場合には、左のように両松葉杖歩行だとまっすぐ歩けることが多いと思います。

しかし、片松葉杖になると、右のように傾き方が強くなってしまうと、骨にかかる負担が大きくなる可能性があるので注意しましょう。

片松葉杖歩行でも、真ん中の写真のようにまっすぐ歩くように意識してください。

また、歩行器で歩く場合にも、左のようにまっすぐ歩く場合にはあまり問題ないと思います。

しかし、方向転換の時には、回旋の動作が入りやすいので注意しましょう。

真ん中は、体の向きと膝や足の向きがそろっていないので、体幹が捻じれているということになります。

方向転換をするときには、右側の写真のように体の向きと足の向きをそろえて動くことで骨折のリスクが減少します。

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最終的には主治医や理学療法士に確認する

以上が、骨転移がある患者さんが注意する一般的な動作になります。

もちろん、骨転移の部位や状態によっては注意しないといけないどうさが変わってきますので、最終的には主治医や理学療法士に確認するようにしてください。

一番大事なこととしては、痛みが出る動作は骨折のリスクがある可能性がありますので、主治医に確認するまでは無理しないようにしてください。

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まとめ
・骨転移の患者さんが注意すべき動作のポイントについて紹介。

・疼痛を出さない、捻る動きに注意する、ゆっくり動く、大きく動き過ぎないということに注意する。

・杖や歩行器で荷重を制限するのも有効だが、傾きや捻る動作に注意する。

・骨転移の部位や状態によって制限する内容は変わってくるので、主治医や理学療法士に確認しましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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