以前、抗がん剤治療後の神経障害(CIPN)の患者さんは転倒しやすくなることを紹介しました。
転びやすくなるということはバランスが悪くなっていることが疑われますよね。
CIPNは、がん治療の一般的な副作用であり、感覚や運動機能の障害が引き起こされることがあります。これにより、歩行やバランスの障害が生じることがあります。
しかし、その根底にある神経筋メカニズムは完全には理解されていません。
そこで、CIPN患者と健康な対照群のバランス能力を比較し、CIPNによるバランス障害の根底を調査した研究を紹介します。
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今回紹介する研究の概要
今回紹介する論文は、乳がん患者さんに対して、CIPN患者と健康な対照群のバランス能力を比較し、CIPNによるバランス障害の根底を調査した内容になります。
「Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.」 2016年の少し古い論文になります。
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方法
Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.
化学療法によるCIPNを持つ乳がん患者20人と、健康な対照群16人を対象に、バランス能力とそれに関連する神経筋メカニズムの違いを調べました。
両群は性別、年齢、身長、体重が一致しています。
研究では、両群の被験者が二足歩行と片足立ちの姿勢で、重心移動(COP)と下肢筋の筋電図(EMG)活動を測定しました。
また、拮抗筋の同時収縮指数(CCI)を計算し、脊髄反射回路の変化を評価するために、足底筋のH反射を誘発しました。
簡単に言うと、立った時のバランスと筋肉の使い方を調査しているといった感じですね。
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結果
Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.
図1は、CIPN患者と健康な対照群の1人の被験者のHmax/Mmaxの曲線を示しています。
CIPN患者は、健康な対照群に比べて、Hmax/Mmax比率が低く、二足歩行から片足立ちへの変化が大きいことがわかります。
Hmax/Mmax比率は、脊髄反射回路の感度を示す指標です。
CIPN患者は、健康な対照群に比べて、Hmax/Mmax比率が低く、脊髄反射回路の感度が低下していることが示唆されます。
CIPN患者は、二足歩行から片足立ちへの変化が大きく、脊髄反射回路の感度が姿勢によって変化することが示唆されます。
さて、全然意味が分からないですよね・・・。
脊髄反射回路とは、私たちの体の中にある神経の回路のことです。
この回路は、私たちが何かを感じたり、動かしたりするときに働きます。
例えば、熱いものに触れると、脊髄反射回路が働いて、手を引っ込めるように指示します。
脊髄反射回路の感度が低下するということは、この回路がうまく働かなくなることです。
例えば、熱いものに触れても、手を引っ込めるのが遅くなったり、引っ込めなかったりすることがあります。
脊髄反射回路の感度が姿勢によって変化するということは、私たちが立っているときや座っているときなど、姿勢が違うと、この回路の働き方が変わることです。
例えば、立っているときは、バランスを取るために、この回路がうまく働いています。
でも、座っているときは、バランスを取る必要がないので、この回路はあまり働きません。
つまり、CIPNの患者さんはバランスをとるためにうまく体を動かせないし、姿勢によってそのバランスのとり方の調整がうまくできていないということになります。
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Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.
table2では、CIPN患者は、健康な対照群に比べて、片足立ちの姿勢で重心移動(COP)が大きくなり、足底筋と脛骨前筋の拮抗筋の同時収縮指数(CCI)が高く、H反射の感度と潜時が変化していることがわかります。
わかりやすくいうと、CIPN患者は、健康な人に比べて、片足立ちの姿勢で、体が揺れやすくなっていて、足の筋肉が同時に収縮することが多くなっていました。
さらに、CIPN患者は、神経の反応が遅くなっていることもわかりました。
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Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.
fig2は、健康な対照群とCIPN患者の1人の被験者の二足歩行および片足立ち時のCOP変位を示しています。
両群ともに二足歩行から片足立ちへのCOP変位が増加していますが、CIPN患者の方が顕著です。
下の右の図がCIPN患者の片足立ちのバランスですが、すごく揺れていることがわかると思います。
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Kneis S, et al. Balance impairments and neuromuscular changes in breast cancer patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy. Clin Neurophysiol. 2016 Feb;127(2):1481-1490.
fig3は、CIPN患者と健康な対照群のCOP変位とHmax/Mmax比率を二足歩行と片足立ちで示しています。
CIPN患者は、健康な対照群に比べて、片足立ちの姿勢で重心移動(COP)が大きくなり、Hmax/Mmax比率が低くなっていることがわかります。
つまり、CIPN患者さんは片足立ちのふらつきが強く、バランスをとるようにうまく体を使えていないことがわかります。
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結論
CIPN患者さんと健康な人を比べて、立っているときのバランスを調べました。
その結果、CIPN患者さんは、健康な人に比べて、片足立ちの姿勢で、体が揺れやすくなっていることがわかりました。
また、CIPN患者さんは、足の筋肉が同時に収縮することが多くなっていました。さらに、CIPN患者さんは、神経の反応が遅くなっていることもわかりました。
これらの結果から、CIPN患者さんは、バランス能力が低下していることが示唆されます。ですから、CIPN患者さんは、転倒のリスクが高くなる可能性があります。
では、どうすればよいでしょうか?実は、センサーモーター訓練が有効です。
センサーモーター訓練とは、感覚と運動を同時に鍛えるトレーニングのことです。
例えば、不安定な台の上で立ったり歩いたりすることで、バランス能力を鍛えることができます。
皆さんもぜひ、センサーモーター訓練を試してみてください。
お医者さんや理学療法士さんに相談してみるのも良いでしょう。一緒に頑張りましょう!
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CIPNの発症,症状,評価についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
CIPNの予防・治療についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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