がんサバイバーの社会的なネットワークって重要!!

今回は、ソーシャルネットワークの活用ががんサバイバーの自己管理支援におよぼす影響について調査した研究を紹介します。

最近では「フレイル」という心身の虚弱状態に陥らないことが重要視されています。

がん患者の運動機能低下~フレイルについて~

2022年2月21日

フレイルの中には、身体や精神の問題だけでなく、社会的な関わりが希薄になることが問題となる、社会的フレイルというものも含まれています。

この社会的フレイルというものも、最近のコロナ禍で増加しており問題とされています。

前回もオンラインの運動介入を紹介しましたが、対面で難しければオンラインで関わるという方法も増えてきていますね。

乳がんサバイバーの運動はオンラインでも効果あり!!

2022年4月29日

そこで、今回はソーシャルネットワークの活用ががんサバイバーの自己管理支援におよぼす影響について調査した研究を紹介します。

こちらの図のような社会的ネットワーク理論というのを使用して、がんサバイバーの社会的ネットワークの特徴を解析して、それが自己管理やQOLとどのように関連しているかを調べようという研究です。

まとめ
・ソーシャルネットワークの活用ががんサバイバーの自己管理支援におよぼす影響について調査した研究を紹介。

・配偶者、子供、ペットといった家族のネットワークが、最も自己管理に貢献する割合が高かった。

・一方で、スポーツ活動やボランティア、医療従事者などの家族以外とのネットワークも自己管理やQOLに関連していた。

・スポーツ活動やピアサポートなどの家族以外のネットワークの積極的な活用を検討したほうがいいかもしれない。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、今回はソーシャルネットワークの活用ががんサバイバーの自己管理支援におよぼす影響について調査した内容になっています。

「Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.」、2022年に発行された最新の論文です。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

対象

Participants were recruited from five NHS Trusts in England between August 2015 and June 2016, while attending hospital appointments or approached by post, following identification through hospital databases. Respondents were 18 years or older, diagnosed and received primary treatment for breast, bowel, prostate cancer, non-Hodgkin’s or Hodgkin’s lymphoma and remained disease free (maximum 24 months since diagnosis).

Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.

対象は、2015年8月から2016年6月にかけて、イングランドの5つの病院で募集されました。

対象の条件は18歳以上で、乳がん、腸がん、前立腺がん、非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫と診断され一次治療を受け、無病状態を維持している(診断から最大24カ月)方です。

最終的に349名からの回答が得られました。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

方法

以下の5つの質問に対して回答してもらっています。

①健康関連QOL

FACT-Gという評価ツールを用いて調査しています。

 

②参加者の社会的関与と特徴

質問票を用いて、レクレーションなどの社会活動への関与データを調査しています。

 

③ソーシャルネットワークの特徴

ソーシャルネットワーク評価ツールを開発し、調査しています。

参加者は、自分のソーシャルネットワークのすべてのメンバーを名前で特定し、彼らとの関係を記述しました。

参加者は、各メンバーの自己管理支援への貢献度(0=全くない~5=多い)を、病気の仕事(例:薬の管理)、日々の仕事(例:家事)、感情の仕事(例:悩みを相談できる人)の3領域で採点し、メンバーがどのくらい近くに住んでいるか記載しています。

 

④自己管理

質問紙を使用して自己管理能力を調査しています。

 

⑤社会的苦痛

Brief Illness Perception Questionnaire(BPIQ)を用いて、社会的苦痛について調査しています。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

結果

Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.

349人の参加者が、2,077人のソーシャルネットワークメンバーを特定ました。

こちらの表は、その内訳になります。

最も多かったのは、友人(26.1%、n=546)、医療従事者(16.0%、n=332)、子供(15.5%、n=322)でした。

配偶者は13.0%(n=271)で、ペットは1.7%(n=36)でした。

参加者のソーシャルネットワークの人数(ネットワークサイズ)の平均は6人(SD 4.7)でした。

最もよく参加する社会的グループ(少なくとも毎月参加)は、社会クラブと趣味のグループ(45.0%)、スポーツと運動のグループ(37.5%)、ボランティア活動グループへの参加(21.8%)で、調査参加者の12%は宗教団体または礼拝所にも参加していました。

全体として、84.2%の参加者が現在の社会的機会に満足していることが分かりました。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.

こちらは病気、日常生活、感情の自己管理に関して、ソーシャルネットワークメンバーがどれほど貢献していたかを示しています。

自己管理の3つの領域で、配偶者が最も貢献していました。

ソーシャルネットワークメンバーの貢献は、日常生活の自己管理において最も低かったです。

家事従事者(育児・掃除)は配偶者に次いで高いスコア(M=4.0)を示しましたが、これは乳がんのサブグループのみでした。

感情領域では、「ペット」が「配偶者」に次いで高く(M=4.2)、「趣味・サークル」がこれに続いていました。

病気領域では、配偶者に次いで医療従事者、子供の貢献度が高い結果でした(M=2.3)

Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.

こちらはQOLに関係する要因をまとめた結果になります。

自己管理スキル、スポーツ参加(毎週、毎月、たまに)、社会的苦痛、病識が、QOLに関係する要因として抽出されています。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE

結論

Taking a mixed methods approach and drawing on social network theories, findings suggest that engagement in community groups and interactions with weak tie social network members can make a substantial contribution to self-management and improve HRQoL. Findings suggest healthcare professionals need to recognise the wider contribution of social networks to facilitate self-management support of cancer survivors. Healthcare staff can contribute to health and well-being beyond clinical care by advocating survivors’ engagement in non-clinical, community cancer services and non-cancer social interaction. Social networks are an untapped self-management resource for cancer survivors and have significant potential to improve health and well-being.

Howard-Jones G, Vassilev I, Fenlon D, et al. Influence of social networks on cancer survivors’ self-management support: A mixed methods study. Eur J Cancer Care (Engl). 2022 Apr 13.

本研究の結果から、コミュニティグループへの参加と弱いつながりの社会的ネットワークメンバーとの交流が、自己管理とHRQoLの向上に大きく貢献することが示唆されました。

本研究の結果は、医療従事者が、がんサバイバーの自己管理支援を促進するために、社会的ネットワークのより広い貢献を認識する必要があることを示唆しています。医療従事者は、がんサバイバーが臨床以外の地域がんサービスやがん以外の社会的交流に参加するよう勧めることで、臨床治療を超えた健康や福祉に貢献することができると考えられます。

ソーシャルネットワークは、がんサバイバーにとって未開発の自己管理資源であり、健康と福祉を改善する大きな可能性を持っていると思われます。

 

がんサバイバーの自己管理やQOLに関して、配偶者、子供、ペットという家族の要因は、やはり大きいようですね。

まずは、家族サポートということは一番大事なところでしょう。

 

しかし、それ以外にもスポーツ参加や医療従事者との関わり、他のがんサバイバーとの交流(ピアサポート)などの家族以外とのネットワーク形成も重要な可能性が高いということですね。

 

最近では、スポーツ活動やピアサポートの種類も増えてますので、積極的な活用を検討したほうがよさそうですね。

WiMAX +5GをはじめるならBIGLOBE
まとめ
・ソーシャルネットワークの活用ががんサバイバーの自己管理支援におよぼす影響について調査した研究を紹介。

・配偶者、子供、ペットといった家族のネットワークが、最も自己管理に貢献する割合が高かった。

・一方で、スポーツ活動やボランティア、医療従事者などの家族以外とのネットワークも自己管理やQOLに関連していた。

・スポーツ活動やピアサポートなどの家族以外のネットワークの積極的な活用を検討したほうがいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

       興味があったらシェアしてください