抗がん剤後のしびれ(CIPN) で歩行能力や筋力も低下する?

前回は、抗がん剤治療後の神経障害(CIPN)の生活の質を上げるための運動の重要性を紹介しました。

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運動量が多いということは、様々な面で効果が期待できるようですね

 

さて、CIPNが生じるとバランスが低下して転びやすくなることは紹介しましたが、

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実際に運動機能は低下してしまうのでしょうか?

 

健康関連QOLは低下してしまっていましたが、QOLというのはあくまで主観的な評価ですので、しびれがあって生活に不自由を感じているだけで、筋力や歩行能力は低下していないのかもしれませんよね。

  

そこで今回は、CIPNが生じると歩行や筋力といった運動機能低下が生じるのかを調査した研究を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、女性がんサバイバーを対象に、CIPNの症状の有無による身体機能、歩行パターン、転倒の比較を行った内容になります。

「Winters-Stone KM,et al. Falls, Functioning, and Disability Among Women With Persistent Symptoms of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. J Clin Oncol. 2017 Aug 10;35(23):2604-2612」 2017年の論文になります。

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方法

この研究では、化学療法後の女性がんサバイバー512人のデータを分析しました。

参加者は、50歳以上で、運動不足(週に60分未満の中程度の運動)、転移性疾患がなく、神経疾患がなく、歩行可能で、運動するための医学的クリアランスがあることが条件となっています。

 

CIPNの症状は、下肢の異常感覚または麻痺の有無によって自己報告されました。

CIPNの症状がある女性(CIPN+)と症状がない女性(CIPN-)を比較しました。

 

データ分析では、最大脚力、立ち座り、身体機能バッテリー、歩行特性(速度、ステップ数、レート、長さ、支持)、主観的運動機能と障害、および過去1年間の転倒について調査しています。

自分が運動機能が低下していると感じているだけなのか、実際に能力が低下しているのかを調査しているわけですね。

 

統計解析には、t検定とカイ二乗検定が使用されました。CIPNありなしの2群を比較しています。

そして、ロジスティック回帰と線形回帰モデルを使用して、CIPNの症状と評価結果との関連を調べています。

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結果

Winters-Stone KM,et al. Falls, Functioning, and Disability Among Women With Persistent Symptoms of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. J Clin Oncol. 2017 Aug 10;35(23):2604-2612

治療後平均6年経過した女性の47%がまだCIPNの症状を報告していました。

 

Fig1は、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)の症状の重症度が増すにつれて、客観的に測定された結果にどのような影響があるかを示しています。

 

症状の重症度が増すにつれて、立ち座り時間が長くなり、身体機能バッテリーのスコアが低下し、歩行速度が遅くなることがわかります。

 

図の右側は、歩行特性について示しています。

ステップ長、スタンス時間、ダブルサポート時間が示されています。

症状の重症度が増すにつれて、ステップ長が短くなり、スタンス時間とダブルサポート時間が長くなることがわかります。

 

この図から、CIPNの症状の重症度が増すにつれて、客観的に測定された身体機能が低下し、歩行特性も変化することがわかります。

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Winters-Stone KM,et al. Falls, Functioning, and Disability Among Women With Persistent Symptoms of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. J Clin Oncol. 2017 Aug 10;35(23):2604-2612

Fig2は、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)の症状の重症度が増すにつれて、患者が報告する結果にどのような影響があるかを示しています。

 

図の左側は、基本的な下肢機能、上級下肢機能、全身機能、移動障害について示しています。

これらは、患者が自分の身体機能について報告したものです

症状の重症度が増すにつれて、基本的な下肢機能、上級下肢機能、全身機能は低下し、移動障害は増加することがわかります。

 

図の右側は、転倒の割合を示しています。

症状の重症度が増すにつれて、転倒の割合も増加することがわかります。

 

この図から、CIPNの症状の重症度が増すにつれて、主観的な身体機能が低下し、移動障害が増加し、転倒の割合も増加することがわかります。

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Winters-Stone KM,et al. Falls, Functioning, and Disability Among Women With Persistent Symptoms of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. J Clin Oncol. 2017 Aug 10;35(23):2604-2612

 

Table2は、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)の症状がある女性(CIPN+)と、症状がない女性(CIPN-)の間で、客観的に測定された結果と患者が報告した結果を比較しています。

 

CIPN+とCIPN-を比較すると、最大脚力には差がありませんが、立ち座り時間が長く、身体機能バッテリーのスコアが低く、歩行速度が遅くなることがわかります。

 

また、CIPN+とCIPN-を比較すると、主観的な下肢機能、上級下肢機能、全身機能が低く、移動障害が増加することがわかります。

 

この表から、CIPN+はCIPN-よりも客観的に測定された身体機能が低く、患者が報告する身体機能も低く、移動障害が増加することがわかります。

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Winters-Stone KM,et al. Falls, Functioning, and Disability Among Women With Persistent Symptoms of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy. J Clin Oncol. 2017 Aug 10;35(23):2604-2612

Table3は、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)の症状がある女性(CIPN+)と、症状がない女性(CIPN-)の間で、客観的に測定された結果と患者が報告した結果を比較し、その結果を回帰係数と95%信頼区間で示しています。

CIPNがあることと、客観的な身体機能バッテリーのスコアが低いことは関連しています。

 

また、CIPNがあることと主観的な下肢機能、上級下肢機能、全身機能が低さ、移動障害は関連しています。

 

つまり、CIPNは主観的および客観的な運動機能低下と関連していることがわかりました。

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結論

化学療法後に神経障害の症状が残る女性は、症状がない女性よりも身体機能が低く、歩行特性も変化し、転倒のリスクが高くなることがわかりました。

 

転倒予防のためにも化学療法後の神経障害を早く見つけて、治療することが大切です。

まずは、医師に相談して、適切な治療法を提案してもらいましょう。

CIPNの治療の流れはコチラを参考にしてください。

しびれをきたしやすい抗がん剤の種類を解説:しびれが出た後の治療方法は?

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また、リハビリや運動も必要です。

リハビリでは、筋力トレーニングやバランストレーニングなどが行われます。

これらのトレーニングは、身体機能を改善し、転倒のリスクを減らすことができます。

 

結論としては、CIPNは運動機能が低下してしまうので、やっぱり運動が必要ということですね。

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CIPNの発症,症状,評価についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。

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CIPNの予防・治療についてはコチラにまとめてますので、参考にしてみてください。

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注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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