がん患者に対して効果のある栄養剤は?【ガイドライン解説】

今回は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がん患者に対する栄養剤使用の効果について記載している内容を紹介します。

がん患者にとって、運動はもちろん大事ですが、運動の効果を十分にするためには、栄養も同じくらい大事になってきます。

以前、がんサバイバーの栄養と運動のガイドラインについても解説しましたね。

がんサバイバーの栄養と運動のガイドライン改訂を解説【2022年】

2022年4月17日

 

食事で栄養を摂るのが一番いいんでしょうけど、なかなか難しい場合もありますよね。

特にがん患者さんは食欲不振なんかもあるからなおさらです。

 

そのような食事がとれていない患者さんに使用されるのが栄養剤です。

少ない量で栄養を補充できるイメージがありますが、はたしてどの程度有効なのでしょうか?

 

そこで今回は、がん患者に対する栄養剤使用の効果について記載している内容を紹介します。

記載内容は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版、から引用させていただいております。

まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がん患者に対する栄養剤使用の効果について記載している内容を紹介。

・放射線性口腔粘膜炎予防や補液目的の栄養剤もあるが、BCAAやEPAなどの蛋白に関連する栄養剤が多く開発されている。

・特に悪液質がん患者さんを対象に開発されている製品が多いので、体重減少や筋肉喪失が著明であれば、活用してみてもいいかもしれない。

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経口栄養補助剤:GFO®

Glutamine—Fiber—Oligosaccharide(GFO®)は,少量の投与で腸管の絨毛上皮の増殖を維持・促進し,腸管免疫能を賦活化するなど,本来腸管が有する機能を最大源に活かすために開発された経口・経腸栄養剤です。

 

栄養素の内訳は以下の表の通りです。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

GFO®は,1 包中にグルタミン(G)3.0 g,水溶性ファイバー(F)5.0 g,オリゴ糖(O)2.5 g を含有しており,これらを約30~45 mL の少量の水に溶解して1 日3 回投与します。

 

GFO®は放射線性口腔粘膜炎に対する有効性が報告されています。

また,経口摂取の低下した終末期がん患者にGFO を用いた場合,唾液分泌の促進による口腔内の清浄化,それに伴う食欲の回復,誤嚥性肺炎の再燃予防,腸管の蠕動運動の正常化による便秘の改善などの種々の効果を得ることが可能であると考えられています。

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経口栄養補助剤:インナーパワー®

インナーパワー®は、悪液質における代謝動態の制御を行いつつ,症状発現の抑制や身体機能の回復に有益な栄養剤あるいはメディカルサプリメントとして開発されました。

終末期がん患者に特有の臨床症状発現を抑制すること,機能回復効果によりQOL の維持・向上が可能なことなどが報告されています。

 

栄養素の内訳は以下の表の通りです。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

インナーパワー®は,1 袋125 g 中に炭水化物33 g,タンパク質1.7 g を含有し,エネルギーとしては139 kcal です。

主要成分は,分岐鎖アミノ酸(BCAA),コエンザイムQ10,L—カルニチン,亜鉛,クエン酸であり,進展するがん細胞に直接効果を及ぼすものではなく,むしろがん自体や,生体侵襲を伴う各種がん治療によって障害されているがん以外の組織の機能を回復・改善そして向上させる目的で開発されました。

 

終末期がん患者に対してインナーパワー® 1 袋を4 週間経口投与し,非投与の対照群と比較した臨床研究では、痛み,倦怠感,呼吸困難感,気分の落ち込み,食欲不振,不眠,吐気,便秘,口渇の9 項目「臨床症状加算式総合評価」では,インナーパワー®投与群の有用性が示唆されています。

 

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

 

特に,倦怠感の推移では,インナーパワー®が筋蛋白の維持効果に加え,乳酸の抑制効果を示唆したことが大きな要因と考えられています。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

よって、インナーパワー®の終末期がん患者に対する投与は,①全身の蛋白合成の促進,②骨格筋の萎縮・崩壊の抑制,③健常部位・組織の抗酸化作用抑制(抗がん剤や放射線治療あるいは外科治療などの侵襲からの回復促進),④組織修復能の促進,⑤骨格筋および各種臓器内の乳酸排出および代謝の促進などの効果を有することが明らかとなっています。

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経口栄養補助剤:プロシュア®

プロシュア®は,がん悪液質に対応するために開発された栄養機能食品であり,国内の栄養剤では最も多くのエイコサペンタエン酸(EPA)を含有しています。

ω—3 脂肪酸に属するEPA は,免疫栄養素の代表であり,がん悪液質に関与する炎症性サイトカインの働きを抑制,さらにPIF の活性低下により蛋白分解を抑制する働きがあります。

 

栄養素の内訳は以下の表の通りです。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

プロシュア®は,1 パック240 mL 中に炭水化物49 g,タンパク質16 g,脂質6.1 g のほか,ビタミン,ミネラルなど栄養素をバランスよく含有し,エネルギーとしては300 kcal です。

悪液質に対応するため,蛋白強化とともに,1.25 kcal/mL と濃縮タイプのため効率良く高エネルギーを補給することが可能となっています。

ω—3 脂肪酸のうちEPA やドコサヘキサエン酸(DHA)は,がん悪液質に関与するIL— 6 などの炎症性サイトカインの産生を強力に制御しますが,プロシュア®は,1 パック中に EPA を約1.1 g,DHA を約0.5 g 含んでいるため,髙抗炎症作用が期待できます。

さらに,化学療法などの副作用である味覚異常を考慮し,亜鉛も豊富に含まれています。

 

プロシュア®をはじめとするEPA 添加栄養食品は,多くの固形がんにおけるCIWL 抑制目的に使用され,体重減少抑制,除脂肪体重維持,炎症反応抑制,QOL 改善などの有用性が報告されています。

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経口補水液:OS‒1®

OS—1®は,消費者庁の特別用途食品・個別評価型・病者用食品表示許可を取得している水分・糖類・電解質含有経口補水液です。

OS—1®は,WHO の提唱する経口補水療法の考えに基づいた飲料で,①生理的な方法で水・電解質補給が可能である,②特殊な器具や技術を必要としない,③在宅においても実施可能などの利点があると考えられている。

 

栄養素の内訳は以下の表の通りです。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

OS—1®は,ナトリウムイオン濃度,クロールイオン濃度が50 mEq/L,カリウムイオン濃度が20 mEq/L,ブドウ糖濃度が1.8%の組成で,浸透圧が270 mOsm/L で構成されています。

 

高度な脱水状態には,輸液で対応することが有効であるが,軽度から中等度の脱水症への処置としてはOS—1®が適していると考えられます。

がん患者に対しては,周術期の体液管理への応用,抗がん治療後の水分負荷などはもちろんのこと,特に在宅療養を希望しているがん患者に対しても,体液管理および日常の脱水治療に加え,終末期においては水分・電解質補給の方法として活用されることが期待されます

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経口栄養補助剤:アバンド®

本来,アバンド®は,褥瘡などの創傷治癒過程における組織の増殖・再生において蛋白,なかでもコラーゲン合成が重要な役割を果たす栄養剤として開発されています。

治癒過程において重要な役割を果たすのが,アミノ酸であり、グルタミン,アルギニン,β—ヒドロキシ—βメチル酪酸(HMB)を配合したアバンド®は,除脂肪蛋白喪失抑制や体重増加などが確認されています。

 

栄養素の内訳は以下の表の通りです。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス 2016年版. 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会 (編). 金原出版

アバンド®に配合されるHMB は,必須アミノ酸であるBCAA のなかでも最も強い蛋白合成促進と分解抑制効果を有するロイシンの代謝産物です。ロイシンは代謝され,そのわずか5%がHMB として作用します。

 

アバンド®は,褥瘡などの創傷治癒に関する有用性は数多く報告されています。

がん悪液質患者,進行がん患者に対しては,筋肉喪失からの回復,除脂肪体重の増加が報告されています。

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まとめ

放射線性口腔粘膜炎予防や補液目的の栄養剤もありますが、やはりBCAAやEPAなどの蛋白に関連する栄養剤が多く開発されていますね。

がん患者さんでは、特に悪液質患者さんの栄養状態の改善を目的に考えられているようですね。

こちらで紹介していない製品でも、高齢者やアスリート向けのBCAAやEPAの栄養剤やサプリなども販売されていますので、活用してみてもいいのかもしれないですね。

1杯で20種類の栄養が摂れる!新マルチ栄養食『バランサー』
まとめ
・がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)より、がん患者に対する栄養剤使用の効果について記載している内容を紹介。

・放射線性口腔粘膜炎予防や補液目的の栄養剤もあるが、BCAAやEPAなどの蛋白に関連する栄養剤が多く開発されている。

・特に悪液質がん患者さんを対象に開発されている製品が多いので、体重減少や筋肉喪失が著明であれば、活用してみてもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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