がん患者の生存率をアップさせる筋トレの実施時間は?

前回は、死亡リスクを減少させるために推奨されている活動量について紹介しました。

死亡リスクを減少させるために推奨される歩数は?

2022年3月24日

前回は歩数のみの話でしたが、筋量・骨量低下予防には、歩数だけでなく中等強度の活動時間の推奨もされていましたね。

骨粗鬆症予防のために推奨される歩数は?

2022年3月18日

筋量低下予防のために推奨される歩数は?

2022年3月23日

ウォーキングは大事ですが、歩くだけより適度な筋トレなどの負荷が高い運動を行った方が良いと考えられています。

ただし、筋トレもどの程度行うのがいいのかは、判断が難しいところですね。

 

そこで今回は、どの程度の時間の筋トレを行うことが死亡リスク減少に効果があるのかを調査した研究を紹介します。

まとめ
・どの程度の時間の筋トレを行うことが死亡リスク減少に効果があるのかを調査した研究を紹介。

・筋力トレーニングは、すべての原因による死亡率と、CVD、全がん、糖尿病、肺がんなどの主要なNCDのリスクの低下と関連していた。

・すべての原因による死亡率、CVD、および全がんに対する長時間の筋力トレーニングの影響は不明。

・筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは、すべての原因、CVD、および総癌死亡率を減らすためのより大きな利益を提供する可能性がある

・がんの死亡率や発症リスク低下を考えると、30-60分/週の筋トレと有酸素運動の組み合わせがいいようである。

・あくまでがんの死亡率や発症リスク低下に関する効果ですので、筋量や骨量、運動機能改善のためには、その量で十分かは検討する必要がある。

完全マンツーマン指導のダイエット&ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム
【CALORIE TRADE JAPAN】

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、どの程度の時間の筋トレを行うことが死亡リスク減少に効果があるのかを調査した内容になっています。

「Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-105061」、2022年に発行された最新の論文です。16編の論文の結果をまとめたメタアナリシスです。

メタアナリシスという統計手法は、論文の中では最も質が高い根拠として位置づけられています。

こちらの記事でもメタアナリシスで解析した論文を紹介しています。

完全マンツーマン指導のダイエット&ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム
【CALORIE TRADE JAPAN】

対象と方法

A systematic literature search was conducted in MEDLINE and Embase from the inception of the databases to 25 October 2020. The search syntax was designed by professional research agencies (International Medical Information Centre, Tokyo, Japan and Inforesta Co Ltd, Tokyo, Japan) with input from two authors (HM and RK) (see online supplemental table 1). We focused on the literature on the association between muscle-strengthening activities and health outcomes among adults aged ≥18 years without diagnosed severe health conditions (eg, cancer or disability) at baseline. Studies were considered eligible if they (1) had a prospective observational design; (2) had a minimum follow-up period of 2 years; (3) examined the influence of muscle-strengthening activities on the outcomes independent of and in combination with aerobic activities; and (4) were published in English. We included studies that used any health outcomes except for those that used a surrogate marker as an outcome.

Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-105061

対象とする論文は、ベースラインで重度の健康状態と診断されていない18歳以上の成人の筋力強化活動と健康転帰との関連に関する内容としています。

筋力トレーニングを行い、最低2年間のフォローアップ期間がある英語の出版物を検索しています。

最終的に16編の論文が解析対象となっています。

完全マンツーマン指導のダイエット&ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム
【CALORIE TRADE JAPAN】

結果

Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-105061

こちらの図は、筋力トレーニングが様々な原因の死亡率や発生率減少に効果があるかを示しています。

筋力トレーニングは、すべての原因による死亡、心血管疾患(CVD)、全がん、糖尿病、および肺がんのリスクが10〜17%低くなることに関連していました。

Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-1050616

筋力トレーニングとすべての原因による死亡率、CVD、および全がんとの間に関連性が見られ、約30〜60分/週の筋力トレーニングで最大のリスク低下(約10〜20%)が見られました。

糖尿病は、60分/週の筋力トレーニングで大幅なリスクの低下が見られました。

Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-1050616

こちらの図は、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせると様々な原因の死亡率や発生率減少に効果があるかを示しています。

筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは、すべての原因、CVD、および総がん死亡率のリスクの低下と関連していました。

完全マンツーマン指導のダイエット&ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム
【CALORIE TRADE JAPAN】

結論

Engaging in muscle-strengthening activities was associated with a lower risk of all-cause mortality and major NCDs such as CVD, total cancer, diabetes and lung cancer. However, the influence of a higher volume of muscle-strengthening activities on all-cause mortality, CVD and total cancer is unclear, considering the observed J-shaped associations. In addition, the combination of muscle-strengthening and aerobic activities may provide a greater benefit for reducing all-cause, CVD and total cancer mortality. Given that the available data are limited, further studies—such as studies focusing on a more diverse population—are needed to increase the certainty of the evidence.

Momma H, Kawakami R, Honda T, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Feb 28:bjsports-2021-1050616

筋力トレーニングは、すべての原因による死亡率と、CVD、全がん、糖尿病、肺がんなどの主要なNCDのリスクの低下と関連していました。

ただし、すべての原因による死亡率、CVD、および全がんに対する長時間の筋力トレーニングの影響は不明です。

さらに、筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは、すべての原因、CVD、および総癌死亡率を減らすためのより大きな利益を提供する可能性があります。

がんの死亡率や発症リスク低下を考えると、30-60分/週の筋トレと有酸素運動の組み合わせがいいようですね。

ガイドラインでは週2回の筋トレが推奨されることが多いですので、1回の筋トレの時間は15-30分程度でいいようです。

ただし、あくまでがんの死亡率や発症リスク低下に関する効果ですので、筋量や骨量、運動機能改善のためには、その量で十分かは検討する必要がありますね。

完全マンツーマン指導のダイエット&ボディメイク専門パーソナルトレーニングジム
【CALORIE TRADE JAPAN】
まとめ
・どの程度の時間の筋トレを行うことが死亡リスク減少に効果があるのかを調査した研究を紹介。

・筋力トレーニングは、すべての原因による死亡率と、CVD、全がん、糖尿病、肺がんなどの主要なNCDのリスクの低下と関連していた。

・すべての原因による死亡率、CVD、および全がんに対する長時間の筋力トレーニングの影響は不明。

・筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは、すべての原因、CVD、および総癌死亡率を減らすためのより大きな利益を提供する可能性がある

・がんの死亡率や発症リスク低下を考えると、30-60分/週の筋トレと有酸素運動の組み合わせがいいようである。

・あくまでがんの死亡率や発症リスク低下に関する効果ですので、筋量や骨量、運動機能改善のためには、その量で十分かは検討する必要がある。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

       興味があったらシェアしてください