骨粗鬆症予防のために推奨される歩数は?

前回は、地域在住高齢者の身体活動量低下と筋量・骨量低下との関連について紹介しました。

高齢者の骨量、筋量は身体活動量低下と関連するか?

2022年3月11日

やっぱり身体活動は筋にも骨にも関係しそうな結果でしたね。

特に、がん患者さんなんかは筋量も骨量も低下しやすいので、より運動する必要があるでしょう。

ホルモン治療中の前立腺がん患者は骨粗鬆症に注意!

2022年3月10日

私も、よく運動やウォーキングを指導しますが、「どれくらい歩いたらいいの?」とよく質問されます。

確かに、運動を行った方がいい目安はほしいところですね。

そこで今回は、地域在住高齢者を対象に、どの程度の歩数を歩くことが「骨の健康」に効果があるのかを調査した日本の研究を紹介します。

まとめ
・地域在住高齢者を対象に、どの程度の歩数を歩くことが「骨の健康」に効果があるのかを調査した日本の研究を紹介。

・7000-8000歩/日の歩数、15-20分/日の中等度運動を行っている人は、骨折のリスクが上昇するような骨強度の低下は少なかった。

・この運動負荷まで頑張れない人でも、この数値を目標に可能な限り頑張るだけでも効果はある。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、地域在住高齢者を対象に、どの程度の歩数を歩くことが「骨の健康」に効果があるのかを調査した内容になっています。

「Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.」、2017年に発行された論文です。

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対象

Of the 615 free-living Japanese volunteers initially aged 65–84 years that were recruited to the Nakanojo Study,5 we were able to study 212 men and 284 women longitudinally over a 5-year period (Table 1). Exclusion criteria were death (n = 4), removal from the study area (n = 15),unwillingness to continue the study (n = 45), inadequate data as previously specified5 (n = 47), those affected by cancer (n = 2), and those with severe disabilities such as brain trauma, and fractures of the hip and spine (n = 6). Criteria of recruitment were willingness to participate, attendance at an annual medical examination, an initial OSI above the fracture threshold, the absence of chronic conditions that could limit habitual physical activity, no history of ovariectomy or diseases likely to affect bone health (e.g., renal disease, rheumatoid arthritis), and no current medication with bisphosphonates, estrogens or other hormonal preparations modifying bone function.

Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

群馬県中之条町の65歳以上の住民を対象に、日常の身体活動と病気予防の関係について行われている調査研究が2000年から開始されており、「中之条研究」といって、身体活動量を専門にしている医療者には非常に有名な研究です。

今回の対象者もその中之条研究に参加されている65-84歳の615名(男性212人、女性284人)です。

この人数を5年にわたり追跡調査しています。すごいですね!!

採用基準は、参加意志があること、年1回の健康診断に出席していること、初回の骨密度が基準値以上であること、習慣的な身体活動を制限するような慢性疾患がないこと、卵巣摘出や骨の健康に影響しやすい疾患(例:腎臓病、関節リューマチなど)がないこと、現在ビスホスホネートやエストロゲンなどのホルモン製剤による治療を行っていないこと、とされています。

また、死亡(n=4)、調査地域からの移動(n=15)、研究継続の意志がない(n=45)、先に規定したデータの不備(n=47)、がん患者(n=2)、脳外傷や股関節・脊椎骨折などの重度の障害を持つ者(n=6)が除外されています。

詳細は記載されていませんが、がん患者さんは除外されています。

615名中に2名しかがん患者さんがいないのは、ちょっと少なすぎるので、ホルモン治療や骨転移の治療など、骨に影響のある治療をしているがん患者さんということでしょうかね?

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方法

Details of the techniques used for measuring physical activity have been described previously.12,13 In brief, an electronic pedometer/accelerometer with a storage capacity of 36 days (modified Kenz Lifecorder; Suzuken Co., Ltd., Nagoya, Aichi, Japan) was attached to a waist belt at the side of the body.

Quantitative Ultrasonic Measurements of the Calcaneus An Achilles ultrasonic bone densitometer (AOS-100; Aloka Co., Ltd., Mitaka, Tokyo, Japan) was used to make QUS assessments of calcaneal bone function for the dominant leg at baseline and at the end of each subsequent year.

Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

身体活動量の測定は腰に装着する活動量計を用いています。

歩数だけでなく、強度別の身体活動量が測定できる機種となっています。

 

骨密度は踵骨の定量的超音波測定で評価しています。

osteosonic index(OSI)という指数が骨の強度を表しているようです。

初回と各年末に年1回の頻度で測定しているようです。

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結果

Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

こちらの表が身体活動量の結果です。

男性と女性で身体活動量のレベルで4分割(Q1-Q4)して記載しています。

5年間分すべて記載していますが、ほぼ同様の結果だったようです。

Q2-Q3の間くらいが中央値になるということですかね。

そうすると、歩数の中央値は6000-7000歩くらい、3Mets以上の運動時間は10-20分/日くらいでしょうか。

3メッツは普通のスピードの歩行くらいの運動で、それ以上の運動が中等度の運動といっていいでしょう。

 

ちなみに、がん患者さんには1週間に150分以上の中等度の運動が推奨されています。

つまり、1日20分程度の中等度の運動になりますので、今回の対象者の平均と大体一致するような印象ですね。

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Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

こちらの表は、OSIの結果を記載しています。

身体活動量別にOSIを比較しています。

男女ともにQ1,Q2がOSIが低い結果になったようです。

Q3がおおむね、1日平均歩数7000歩、1日中等度運動が18分くらいになりますので、それ以上の運動を行った方が、骨の健康が保たれるようですね。

 

Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

こちらは多変量解析といって、身体活動量がOSIを骨折のリスクが高くなるまで減少させる要因になるかを調査した結果です。

身体活動量上位4分の1は下位2分の1に比べ、OSIが高い傾向が認められました。

具体的には歩数でみると、6,900〜7,000歩/日の人は、8,800~9,100歩/日の人と比べると、男性で2.6倍(1.4〜4.4)、女性で3.3倍(2.1〜5.0)のOSI減少のリスクがあるようです。

また、3メッツ以上の活動時間では、17~18分/日の人は25~30分/日の人に比べ、男性で2.8(1.5~5.6)倍、女性で3.9(2.4~6.7)倍のOSI減少リスクがあるようです。

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結論

After adjustment for potential confounders, the calcaneal health of older people as seen in longitudinal data is associated with both the quantity (daily step count) and the quality (daily duration at an intensity >3 METs) of habitual physical activity. Over a 5-year follow-up, the risk of the OSI falling to a level associated with an increased risk of fracture is substantially reduced for seniors who reach at least the third quartile of habitual physical activity for their peers (i.e., those taking a minimum of 7,000–8,000 steps/day and/or spending 15– 20 min/day at an intensity of >3 METs). Nevertheless, for those who are unable or unwilling to meet this standard, some benefit is also associated with more modest levels of regular physical activity.

Shephard RJ, Park H, Park S, et al. Objective Longitudinal Measures of Physical Activity and Bone Health in Older Japanese: the Nakanojo Study. J Am Geriatr Soc. 2017 Apr;65(4):800-807.

高齢者の踵骨の健康状態は、習慣的な身体活動の量(毎日の歩数)および質(3メッツ以上の強度で毎日継続)の両方と関連していることがわかりました。

5年間の追跡調査において、骨折のリスク上昇に関連するレベルまでOSIが低下するリスクは、同世代の高齢者の習慣的身体活動の少なくとも4分の3(すなわち、7,000~8,000歩/日以上、または15~20分/日を3メッツ超の強度で過ごす人)に達している高齢者では大幅に低下します。

しかし、この基準を満たせない、あるいは満たしたくない人にとっても、より適度なレベルの定期的な身体活動には一定の効果があります。

7000-8000歩/日の歩数、15-20分/日の中等度運動という具体的な目安は役に立ちそうですね。

ただし、この運動負荷まで頑張れない人も多いと思いますが、そんな方はこの数値を目標に可能な限り頑張るだけでも効果はあるみたいですよ!

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まとめ
・地域在住高齢者を対象に、どの程度の歩数を歩くことが「骨の健康」に効果があるのかを調査した日本の研究を紹介。

・7000-8000歩/日の歩数、15-20分/日の中等度運動を行っている人は、骨折のリスクが上昇するような骨強度の低下は少なかった。

・この運動負荷まで頑張れない人でも、この数値を目標に可能な限り頑張るだけでも効果はある。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

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