高強度の自転車運動は変形性膝関節症患者の痛みを軽減する

今回は、軽症の変形性膝関節症患者に対する高強度の自転車運動の効果について検討した論文を紹介します。

 

前回は理学療法ガイドラインから変形性膝関節症に対する理学療法の効果について紹介しました。

変形性膝関節症に対する理学療法ガイドライン解説

2022年5月29日

がん患者さんも、整形外科疾患に注意をする必要があるので知っておいた方がいいでしょう。

KL分類1-2くらいの軽症の変形性膝関節症に対しては、高強度の運動を週3回くらい行ったほうがいいということでしたね。

ここからは、そのガイドラインの根拠となった論文を紹介していきます。

今回は、軽症の変形性膝関節症患者に対する高強度の自転車運動の効果について検討した論文を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、軽症の変形性膝関節症患者に対する高強度の自転車運動の効果について検討した内容になっています。

「Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.」、2012年に発行された論文です。

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対象

Initially, 41 potential subjects were recruited by newspaper advertisement, posters, and from physician practices. Four people chose not to participate after randomization. Therefore, 37 subjects (27 women, 10 men) between the ages of 37 and 74 (mean ± SD age, 57.7 ± 9.8 years) began the study protocol after randomization into a cycling exercise group (n = 19; 15 women, 4 men) or a control group (n = 18; 12 women, 6 men).

Potential subjects were excluded if they experienced severe patellofemoral pain that would not allow participation in the stationary cycling regimen. They were also excluded if they had an injection of viscosupplements in the knee within the previous 3 months, or if they had any medical condition that would prohibit them from safely participating in an aerobic exercise program of moderate intensity.

Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.

41名の被験者候補が新聞広告、ポスター、医師の診療所から募集され、37~74歳の37人(女性27人、男性10人)(平均±SD年齢、57.7±9.8歳)が、サイクリング群(n=19、女性15人、男性4人)またはコントロール群(n=18、女性12人、男性6人)にランダム化した後、研究プロトコルを開始しました。

被験者候補者は、重度の膝蓋大腿部痛があり、固定式サイクリングに参加できない場合は除外されました。また、中程度の強度の有酸素運動プログラムに安全に参加することができないような病状である場合も除外されています。

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方法

Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.

コントロール(18名)、サイクリング群(19名)で12週間の介入前後の評価結果を比較。最大心拍数の 70~75%を維持する運動強度で 40~60 分間, 毎週 2 回以上,12 週間継続しています。

運動は、40分から60分へと徐々に増加し、軽い強度のウォームアップとクールダウン、速いケイデンスペダリングと模擬登坂の交互の努力、およびストレッチングが含まれていました。

各セッションのクールダウン時には、インストラクターの指導のもと、足関節底屈筋、大腿四頭筋、股関節屈筋、ハムストリングス、上肢筋群の穏やかなストレッチの標準プロトコルに従いました。

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結果

Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.

こちらは対象者の特性を表しています。

コントロール群の被験者は、ベースライン時の平均体格指数(平均±SD、25.7±6.3kg/m2)が、サイクリング群の被験者(平均±SD、22.4±3.3kg/m2)に比べ高かったが、その差は有意ではありませんでした(P = .054)。

VO2max や,Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey で測定した健康関連の QOL には,群間差はありませんでした。

Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.

左の図は歩行速度の推移になります。

サイクリング群は12週後に歩行速度の改善が認められました。

 

右の図は疼痛の推移になります。

サイクリング群は12週後に疼痛の軽減が認められています。

他にも6分間歩行時の疼痛や関節の硬さ、日常生活動作などで改善が認められたようです。

考察では、軽症の変形性膝関節症患者さんに対して自転車運動は安全に実施できると記載されています。

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結論

Group stationary cycling classes were well tolerated by most participants and resulted in improved parameters of gait and improvement in pain after a 6-minute treadmill walk compared to a matched control group. Improvements in activities of daily living, as measured by the KOS-ADL, were significant compared to those of controls. Subscales of the KOOS and WOMAC were improved, suggesting that this intervention resulted in overall improvement in pain with activity in patients with symptomatic knee OA. However, the cycling classes used in this study were designed specifically for the age and symptom level of our study population. Therefore, these results may not apply to all patients with knee OA.trols.

Salacinski AJ, Krohn K, Lewis SF, et al. The effects of group cycling on gait and pain-related disability in individuals with mild-to-moderate knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. J Orthop Sports Phys Ther. 2012 Dec;42(12):985-95.

自転車運動は、ほとんどの参加者に忍容性があり、歩行の改善と疼痛の改善をもたらしました。

日常生活動作の改善も有意であり、この介入は症候性膝OA患者の活動によって全体的な痛みの改善をもたらすことが示唆されました。

しかし、この研究で使用された自転車運動は、我々の研究対象者の年齢と症状レベルに合わせて特別にデザインされたものであるため、この結果はすべての変形性膝関節症患者に適用されない可能性があります。

 

膝が悪い患者さんにとって、自転車運動は体重がかからない分、比較的安全に運動できる印象ですね。

高強度で運動を行っても安全なようですので、膝が痛くて歩けなくて困っているがん患者さんなどは取り入れてみてもいいかもですね。

ただし、変形が進んだ膝関節だと負荷が強すぎる場合もあるので注意しましょう。

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まとめ
・軽症の変形性膝関節症患者に対する高強度の自転車運動の効果について検討した論文を紹介。

・コントロール(18名)、サイクリング群(19名)で12週間の介入前後の評価結果を比較。最大心拍数の 70~75%を維持する運動強度で 40~60 分間, 毎週 2 回以上,12 週間継続した。

・サイクリング群は痛みや歩行速度、関節の硬さ、日常生活動作の改善が認められた。

・膝が痛くて歩けなくて困っているがん患者さんなどは取り入れてみてもいいかもしれない。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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