高齢者の骨量、筋量は身体活動量低下と関連するか?

前回は、ホルモン治療中の前立腺がん患者の骨密度低下について紹介しました。

ホルモン治療中の前立腺がん患者は骨粗鬆症に注意!

2022年3月10日

ホルモン治療はその副作用で骨密度が低下しやすいんですね。

しかし、骨密度が低下する要因として活動量低下や筋量低下も挙げられます。

がん患者さんは、そういった原因でも骨密度が低下しそうな気がしますね。

がん患者の身体機能低下~骨粗鬆症について~

2022年2月24日

今回は、日本の論文で、活動量低下と筋量低下、骨密度低下の関連性を調査した論文が掲載されました。

対象は地域在住高齢者であり、がん患者さんを対象としたものではないですが、骨粗鬆症の知識を身に着けるために、論文を紹介します。

まとめ
・地域在住高齢者を対象に、活動量低下と筋量低下、骨密度低下の関連性を調査した論文を紹介。

・骨量・筋量が低下している高齢者は 年齢, 女性の割合,BMI,歩行速度,筋量,骨密度,中高度活動時間,歩数で有意差が認められた。

・骨量・筋量が低下している高齢者は中高度活動時間低下,歩数低下している割合が高かった。

・多変量解析においても、年齢,性別,うつ傾向,歩行速度低下に関係なく、骨量・筋量が低下していると中高度活動時間が減少していた。

・骨量低下と筋量低下が組み合わさると身体活動量低下につながってしまうようである。

通わないフィットネススタジオSOELU

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、地域在住高齢者を対象に、活動量低下と筋量低下、骨密度低下の関連性を調査した内容になっています。

「谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)」、2022年に日本で発行された最新の論文です。

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対象

谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)

対象は、鹿児島県垂水市において地域在住の40 歳以上を対象とした健康チェックを行った1,145 名で,そのうち65 歳以上の高齢者は859 名となっています。

骨量測定を測定できた高齢者は262 名です。

その中から筋量未測定者,身体活動未測定者,身体活動の 取り込み基準を満たさなかった者,歩行速度未測定者, 要介護認定者,既往に脳卒中やその他の脳疾患がある者 を除外し,最終的に173 名(平均年齢74.3 ± 5.6 歳,女 性64.2%)が分析対象となりました。

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方法

骨量は右踵骨に対して、超音波伝搬速度(Speed of Sound:以下, SOS)を測定しています。

骨密度が若年平均値(Young Adult Mean:以下, YAM)の70%以下を骨量低下としています。

 

筋量は生体電気インピーダンス法による体成分分析装置 (インボディ・ジャパン,InBody470)にて四肢骨格筋量を測定し,身長の2 乗で除した四肢骨格筋指数(Appendicular Skeletal Muscle Mass Index:以下,ASMI)を算出しています。

ASMI はアジアサルコペニアワーキンググ ループ2019(Asian Working Group for Sarcopenia 2019: 以下,AWGS2019)の基準を用いて,男性7.0 kg/m2, 女性5.7 kg/m2 未満を筋量低下としています。

 

身体活動量は3 軸加速度計(Omron Healthcare,HJA- 750C Active style Pro)を用いて1 日あたりの歩数と10 秒間隔のMETs を測定しています。

METs のカットオフポイントとして, 1.5 METs 未満を座位行動,3.0 METs 以上を中高強度活動時間(MVPA)としています。

さらに座位行動時間は上位25%の座位時間が長い者を座位行動時間延長,MVPA時間は下位25%のMVPA 時間が短い者をMVPA 時間低下,歩数は下位25%の歩数が少ない者を歩数低下としています。

 

その他の変数として、年齢,性別,身長, 体重,Body Mass Index(以下,BMI),快適歩行速度, 老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale 15: 以下,GDS-15)を測定しています。

快適歩行速度が1.0 m/s 未満を歩行速度低下、GDS-15 が5 点以上をうつ傾向と判定しています。

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結果

谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)

こちらの表は対象者を正常群、骨量低下群、筋量低下群、骨量・筋量低下群の4群に分けた時の各項目の結果になります。

正常群58 名(33.5%),骨量低下群52 名(30.1%),筋量低下群 26 名(15.0%),骨量・筋量低下群37 名(21.4%)の割合になっています。

4 群に有意差を認めた変数として,年齢(p < 0.001), 女性の割合(p = 0.003),BMI(p < 0.001),歩行速度(p = 0.023),ASMI(p < 0.001), % YAM(p < 0.001), MVPA 時間(p = 0.001),歩数(p = 0.004)となっています。

やはり、MVPAや歩数といった身体活動量は筋量や骨量に関係するようですね。

谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)

こちらのグラフは、4群における座位行動時間延長(399.0 分/ 日以上), MVPA 時間低下(45.0 分/ 日以下),歩数低下(3,144.5 歩/ 日以下)の割合になります。

正常群,骨量低下群, 筋量低下群,骨量・筋量低下群における座位行動時間延長の割合は,24.1%,13.5%,38.5%,35.1%で4 群において有意な傾向は認めていません。

MVPA時間低下の割合は,各群で19.0%,17.3%,15.4%,51.4% と有意な傾向を認めています。

歩数低下の割合においても,各群において12.1%,28.8%,19.2%, 43.2%と有意な傾向を認めています。

実際に統計で有意差がついているのは、骨量・筋量低下群がMVPA時間低下と歩数低下といった身体活動量が低下しているという結果です。

しかし、統計的に優位差はついていなくても、グラフを見る限りでは、骨量低下群は歩数低下が多く、筋量低下は座位行動時間延長が多い傾向もありそうですね。

 

谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)

こちらは、座位行動時間延長やMVPA時間低下、歩数低下に対して、骨量低下や筋量低下が要因となり得るかを解析しています。

結果として、骨量・筋量低下群は正常群と比べてMVPA 時間が有意に低下していました。

共変量は年齢,性別,うつ傾向,歩行速度低下となっており、それらの要因は関係なく、骨量・筋量が低下しているとMVPA時間が減少するということになります

歩数の低下,座位行動時間の増加に関しては有意な関連を認めませんでした。

多変量解析でも、身体活動量との関連性が認められていますね。

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結論

本研究において,骨量・筋量低下が併存している高齢者は,MVPA 時間が減少していることが示唆された。 しかし,骨量低下,筋量低下単独の者は身体活動の低下が認められなかった。骨量低下と筋量低下を併存している者はMVPA時間が減少し,転倒や骨折リスクを高める可能性があることから,骨量と筋量がともに低下している者に対しては,運動や生活上において3 METs 以上のMVPA の時間を増加させることが重要であると考えられる。

谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 他. 地域在住高齢者における骨量および筋量の低下と身体活動との関連性. 2022. 理学療法学(印刷中)

近年,骨量低下とサルコペニアを併存している状態をオステオサルコペニアと表現されるようになっています。

オステオサルコペニアの有病率は研究によって異なり, 10.4 ~ 40.0%だったり、日本では8%だったりと、定義も不明瞭でどの程度の割合が該当するかははっきりしないようです。

今回の研究では骨量低下と筋量低下が組み合わさると身体活動量低下につながってしまうようです。

骨量、筋量ともに減少していないか注意しておく必要があるみたいですね。

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まとめ
・婦人科がん患者さんを対象に、リンパ浮腫予防のセルフケアの実施状況とその要因について調査した内容の論文を紹介。

・多くの患者さんが少なからず不安を抱えていた。

・リンパ浮腫に関する指導は行われているが、その知識に関しては偏りが認められた。

・知識を持っている方がセルフケアを行う率が高い傾向だった。

・定期的にリンパ浮腫に関して学べる場が必要と思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

注意
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