骨転移があっても適度な負荷をかけた方がいいかも

今回は、ランニング負荷が脛骨の骨転移に対する影響を調査したラットを用いた基礎研究を紹介します。

以前に骨転移患者さんに対する運動の可否や動作の注意点について紹介しました。

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骨転移の治療や症状を理解した上で、危険な動作に注意して適切な運動を行うことは可能という結論でしたね。

しかし、なかなか骨転移がある患者さんに対して実際に運動をしてもらって負荷がかかるかという研究を行うわけにはいけません。

そのような場合には、ラットを用いた基礎研究なんかが参考になることが多いです。

そこで今回は、ランニング負荷が脛骨の骨転移に対する影響を調査したラットを用いた基礎研究を紹介します。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、ラットを用いてランニング負荷が脛骨の骨転移に対する影響を調査した調査した内容になっています。

「Wang S, Pei S, Wasi M, et al. Moderate tibial loading and treadmill running, but not overloading, protect adult murine bone from destruction by metastasized breast cancer. Bone. 2021 Dec;153:116100. doi: 10.1016/j.bone.2021」、2021年に発行された論文です。

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目的・方法

In this study, we aimed to investigate the dose-dependent effects of mechanical loading on protecting the integrity of adult skeletons with breast cancer. Localized tibial loading and aerobic treadmill running with three levels of varying intensity were tested in a syngeneic mammary tumor bone metastasis model. Adult C57BL/6J female mice (14-week-old, N = 88 mice) received intra-tibial injections of Py8119 triple-negative murine breast cancer cells or PBS and underwent 4 to 5 weeks of exercise or acted as sedentary/non-loaded controls. The bone structure was monitored longitudinally with weekly in vivo micro-computed tomography imaging, while the cellular responses in bone and marrow were examined using immunohistochemistry.

Wang S, Pei S, Wasi M, et al. Moderate tibial loading and treadmill running, but not overloading, protect adult murine bone from destruction by metastasized breast cancer. Bone. 2021 Dec;153:116100. doi: 10.1016/j.bone.2021

この研究の目的は、乳がん成人骨格の完全性を保護するための力学的負荷の用量依存的な効果を調べることです。

乳腺腫瘍骨転移モデルのラットに対して、局所的な脛骨負荷と強度を3段階に変化させた有酸素性トレッドミル走を試験しています。

そして、骨構造を週1回のin vivoマイクロコンピュータ断層撮影により縦断的に観察し、骨と骨髄の細胞反応は免疫組織化学により調べています。

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Wang S, Pei S, Wasi M, et al. Moderate tibial loading and treadmill running, but not overloading, protect adult murine bone from destruction by metastasized breast cancer. Bone. 2021 Dec;153:116100. doi: 10.1016/j.bone.2021

こちらは実験方法を説明した図になります。

ラットは脛骨内注射の1日後に8Nまたは4.5Nのピーク負荷で軸方向の脛骨負荷を受けまています。

そして、ランニング負荷として週5日、5週間トレッドミルで走りました。

各実行セッションの長さは50分で、10.7 m / minで5分間のウォームアップ、16.1 m / minで40分間、10.7 m/minで5分間のクールダウンで構成されています。

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結果

Wang S, Pei S, Wasi M, et al. Moderate tibial loading and treadmill running, but not overloading, protect adult murine bone from destruction by metastasized breast cancer. Bone. 2021 Dec;153:116100. doi: 10.1016/j.bone.2021

こちらはランニング負荷後の骨の構造変化の結果になります。

上の図が8Nの負荷、下の図が4.5Nの負荷です。

W1からW4に進むにつれて時間が経過していることを意味しています。

上の8Nの負荷がかかった脛骨では、ランニングを行うと時間の経過とともに骨破壊が著明に進行しています。

下の4.5Nの負荷がかかった脛骨では、ランニングを行っても時間の経過とともに骨破壊はむしろ抑制されている結果となっています

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結論

Wang S, Pei S, Wasi M, et al. Moderate tibial loading and treadmill running, but not overloading, protect adult murine bone from destruction by metastasized breast cancer. Bone. 2021 Dec;153:116100. doi: 10.1016/j.bone.2021

本研究では、機械的負荷が乳がん誘発性骨溶解を制御する骨在住細胞に影響を与えることを明らかにしました。

乳がんモデルにおいて、運動強度と腫瘍誘発性骨破壊のリスクとの関係は、J型カーブを描くことを見出しました。

この研究結果は、転移性乳がん患者において、運動が骨量減少と骨関連有害事象を低減できる有効な運動強度が存在する可能性を示唆しています。

ラットの基礎研究ですし、8Nや4.5Nといった負荷量は、人間に換算するとどの程度か正直イメージがつきませんが、骨転移に対しても適切な運動負荷がありそうというのは有意義な結果ですね。

運動そのものが骨転移の治療方法の一つになる日がくるかもしれません。

現時点の情報では、疼痛に応じて運動負荷を調整するしかないですね。

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まとめ
・ランニング負荷が脛骨の骨転移に対する影響を調査したラットを用いた基礎研究を紹介。

・8Nの負荷がかかった脛骨では、ランニングを行うと時間の経過とともに骨破壊が著明に進行した。

・右の4.5Nの負荷がかかった脛骨では、ランニングを行っても時間の経過とともに骨破壊はむしろ抑制されていた。

・転移性乳がん患者において、運動が骨量減少と骨関連有害事象を低減できる有効な運動強度が存在する可能性を示唆している。

・運動そのものが骨転移の治療方法の一つになる日がくるかもしれないが、現時点では疼痛に応じて運動を行うくらいに留めておきましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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