骨転移の麻痺や骨折を予防する放射線治療とは

前回は、がんサバイバーも知っておきたい骨転移に対する放射線治療として疼痛緩和の効果について紹介しました。

骨転移の痛みを軽減させる放射線治療とは

2022年2月27日

紹介した通り、放射線治療の効果として、骨転移に関していえば、①疼痛の緩和、②脊髄圧迫による麻痺の予防と改善、③切迫骨折に対する骨折の予防などが効果として期待できます。

そこで今回は、がんサバイバーも知っておきたい骨転移に対する放射線治療として、麻痺や骨折の予防にについて紹介します。

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麻痺の予防と改善

骨転移で心配すべきことは、腫瘍が脊髄などの神経を圧迫して麻痺が生じないかということです。

頸椎転移であれば、頸の神経を圧迫して手のしびれや麻痺が生じるときがありますし、腰椎転移であれば、腰の神経を圧迫して下肢のしびれや麻痺が生じる可能性があります。

ポイントは早期発見、早期治療です!!

近沢 逸平  他. 日泌尿会誌 ,2016

こちらの写真は背骨の後ろの脊髄に腫瘍が浸潤しているのですが、放射線を当てた後の右の写真では腫瘍が小さくなっているのがわかります。

このように腫瘍を小さくして、脊髄の圧迫を減らすことによって、麻痺の予防や改善が期待できます。

特に、まだ麻痺が出現していない状態で放射線治療を行うと90%くらいの患者さんが麻痺を予防できると言われています(辻 哲也 他:癌のリハビリテーション,2006)

しかし、すでに麻痺が出現した患者さんでは、治療の効果が無効であったのが21%、むしろ麻痺が進行したのが45%になってしまうようです(武田 直樹:北海道整形災害外科学会雑誌,2009)

つまり、繰り返しますが、ポイントは早期発見、早期治療です!!

麻痺が出現する前に発見して治療を行うのが最もいいということですね。

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骨折の予防

骨転移で心配すべきことの一つとして、病的骨折も挙げられます。

溶骨性の骨転移は骨がもろくなっている状態ですので、ちょっとしたことで骨折してしまいます。

骨折してしまうと、寝たきりになったりして、最終的には生命予後も悪くなることが報告されていますので、骨折を予防することが重要です。

大腿骨なんかを骨折してしまうと、手術が必要になってしまいますしね。

 

骨転移による骨折に関しても、ポイントは早期発見、早期治療です。

近沢 逸平  他. 日泌尿会誌 ,2016

こちらの写真では、照射前の上の写真では徐々に骨の白い部分が減っているのがわかります。

これが骨転移が進んでいる状態ですね。

そして、下の照射後の写真では少しずつ白い部分が増えているのがわかると思います。

これが、骨が再生している状態ですね。

このように、放射線を当てることによって骨再生が期待はできますが、骨折してしまったところがつながるわけではないので、腕や脚、背骨なんかは折れてしまう前に、放射線治療を行って骨折させないことが重要です。

骨折する前に放射線治療を行えれば、運動機能低下も少ないですし、疼痛も少ないです。

逆に、骨折してしまったあとでは、放射線治療を行っても効果は乏しいとされています。

 

注意点としては、放射線治療で骨が再生するまでは2-3ヶ月かかると言われています。

一方で、疼痛は放射線治療後すぐに効果が期待できます。

つまり、放射線治療で痛みがなくなったからと言って、骨が強くなったわけではないということに注意してください。

 

今回は、骨転移に対する放射線治療の効果として、麻痺や骨折の予防について紹介しました。

基本的に治療が必要な骨転移があれば、すぐに放射線治療開始になると思いますが、早期に治療することが重要です。

こちらの記事に、骨転移患者さんの注意すべき内容を紹介していますので、注意すべきがん種の患者さんで、疼痛や麻痺症状などが出現してきたときには、骨転移の有無を確認したほうがいいかもしれないですね。

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骨転移の痛みを軽減させる放射線治療とは

2022年2月27日
まとめ
・がんサバイバーも知っておきたい骨転移に対する放射線治療の麻痺や骨折の予防について紹介。

・腫瘍の縮小によって、脊髄の圧迫が減少して、麻痺の予防や改善が期待できる。

・麻痺が出現する前に、放射線治療を行う方が予防効果が高い。麻痺出現後では効果が低くなってしまう。

・骨折に関しても、骨折前に放射線治療を行う方が骨折予防としての効果が高い。

・早期発見、早期治療が大事です。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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