今回は、頸椎転移に対する手術の効果について調査した研究を紹介します。
前回は骨転移患者に対する放射線治療後は骨転移のリスクが減少するといった論文を紹介しました。
やはり骨転移に対して適切な放射線治療は必要ですね。
放射線治療以外の骨転移に対する治療としては手術療法も挙げられます。
その効果はいかほどでしょうか?気になりますね。
そこで今回は、頸椎転移に対する手術の効果について調査した研究を紹介します。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】今回紹介する研究の概要
今回紹介する論文は、頸椎転移に対する手術の効果について調査した内容になっています。
「Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423」、2021年に発行された論文です。日本の先生が書いた論文ですね。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】対象
Fifty consecutive patients with surgical indications for cervical SSM from January 2013 to December 2018 in our institution were prospectively enrolled. Metastasis was diagnosed by plain radiography, computed tomography, magnetic resonance imaging (MRI), bone scintigraphy, position emission tomography, and histological evaluation of needle biopsy samples. As the primary site, patients with no history of malignancy whose site of primary malignancy was diagnosed after the identification of spinal metastasis were categorized into “unknown.” The surgical indications were progressive neurological deficits, remarkable spinal instability (Spinal Instability Neoplastic Score [17] of ≥ 13), and intractable pain resistant to conservative care, including the use of opioids. The contraindication for surgery was impaired consciousness due to cerebral metastasis. All surgeries involved single-stage posterior decompression with partial removal of the tumor to a feasible extent from the posterolateral aspect and posterior stabilization with fixation using lateral mass screws for C1 and C3–6 and pedicle screws for C2, C7, and the thoracic spine. Neither an anterior approach nor a combined approach was used. All collars were removed postoperatively. All patients underwent radiotherapy before or after surgery. If indicated, chemotherapy was performed by the oncologist.
Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
対象は、2013年1月から2018年12月までに頸椎転移の手術適応となった50例です。
転移の診断は,単純X線撮影,CT,MRI,骨シンチグラフィー,針生検試料の組織学的評価により行っています。
手術適応は、進行性の神経障害、顕著な脊椎不安定性(Spinal Instability Neoplastic Score [17] が13以上)、オピオイドの使用を含む保存療法に抵抗する難治性の疼痛としなっています。
脳転移による意識障害がある場合は手術禁忌としています。
手術はすべて、後外側面から実行可能な範囲で腫瘍を部分切除し、固定による後方安定化を行う一期的な減圧術です。
患者さんは術前または術後に放射線療法を受け、適応があれば、腫瘍専門医により化学療法が行いました。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】方法
At the start of the study (baseline), we investigated the age, sex, and the primary site as preoperative factors. The new Katagiri score [18] and the revised Tokuhashi score [12] were used to predict the prognosis and assess the severity of spinal metastases. Frankel grading [19] was used to evaluate neurological function. The level of the main lesion (upper cervical spine, C1–2; middle cervical spine, C3–6; or cervicothoracic junction; C7–T1), Spinal Instability Neoplastic Score [17], and epidural spinal cord compression grade [20] were used to assess the type of spine metastasis. The Eastern Cooperative Oncology Group PS (ECOGPS) [21] and EuroQol 5-Dimension (EQ5D) score [22] were used to evaluate the PS and QOL, respectively. The operative time, blood loss, number of fixed vertebrae, and postoperative complications were investigated as surgery-related factors. The Clavien–Dindo classification was used to evaluate the severity of postoperative complications, and severe complications were defined as grade ≥ III [23]. Clinical follow-up examinations were routinely performed at 1, 3, and 6 months postoperatively. Improvement and deterioration of the PS and QOL were defined as a ≥ 1-level change in the PS and a ≥ 10% change in the EQ5D score, respectively. Based on these definitions, the improvement rate, deterioration rate, and re-deterioration rate within 6 months were calculated. In addition, a poor surgical outcome was defined as no improvement or deterioration after improvement of the ECOGPS or EQ5D score within 3 months. Patients who were alive and could not consult our department were contacted by telephone to obtain the latest follow-up information. For patients who died, we obtained information from the patient’s family or institution of transfer.
Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
研究開始時(ベースライン)には、術前因子として年齢、性別、原発部位を調査しています。
予後予測と脊髄転移の重症度評価には、新片桐スコアと改訂徳橋スコアを使用しました。
神経機能の評価には、Frankel grading が用いられています。
主病巣のレベル(上部頸椎、C1-2;中部頸椎、C3-6;または頸胸接合部;C7-T1)、脊椎不安定性腫瘍スコア [17] 、および硬膜外脊髄圧迫グレード [20] が、脊椎転移の種類を評価するために使用されています。
PSとQOLの評価には、それぞれEastern Cooperative Oncology Group PS(ECOGPS)[21]とEuroQol 5-Dimension(EQ5D) スコア[22]を使用しています。
手術関連因子として、手術時間、出血量、固定椎体数、術後合併症を調査しています。
術後合併症の重症度評価にはClavien-Dindo分類を用い、重症合併症はgrade≥IIIとされています[23]。
術後1、3、6ヶ月目に定期的に臨床的フォローアップ検査を実施し、PSとQOLの改善と悪化は、それぞれPSが1レベル以上変化した場合とEQ5Dスコアが10%以上変化した場合と定義されました。
これらの定義に基づき、6ヶ月以内の改善率、悪化率、再悪化率を算出しています。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】結果
Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
こちらは対象者の特徴です。
3名の患者は、治療禁忌のため除外されました。
また、当初は転移が疑われたが、椎骨骨肉腫が原発であった患者1名も除外されています。
最終的に、46人の患者が登録されました。
PS3~4の臥床傾向の患者さんが多くなっています。
最も多いがん種は肺がんでした。
放射線治療は術前に15例(32.6%),術後は31例(67.4%)に施行されました。
長期(10分割以上)外照射療法(EBRT)は36例(78.3%)に実施され,8Gy/単回照射は1例(2.2%)に実施されました。
強度変調放射線治療(IMRT)は9名(19.6%)に実施されています。
術前に化学療法を行ったのは17例(37.0%)で、術後化学療法は21例(47.5%)に実施されました。
12の術後合併症が11名(23.9%)に発生し、最も多い術後合併症は創傷障害で,放射線皮膚炎が3例(6.5%),手術部位感染が2例(4.3%)であり、重篤な合併症は4例(8.7%)でした。(放射線皮膚炎および感染症による再手術,急性心筋梗塞,水頭症)。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
こちらが手術後のPSとQOL、神経学的所見の変化についての結果です。
80%以上の症例でPSとEQ5Dスコアの改善が認められました。
PS,EQ5Dスコア,Frankel gradeの再悪化は,それぞれ38例中7例(18.4%),41例中8例(19.5%),21例中7例(33.3%)に認められています.
今回の調査では、合計5人の患者(5/86、5.8%)が放射線治療終了後に骨関連事象を発症しました。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
こちらの表は、手術成績不良に関連する因子の結果になります。
手術成績不良は18例(39.1%)に発生しました。
単変量解析では,性別(男性),改訂徳橋スコア,新片桐スコア,主病巣のレベル,ベースライン時のFrankel gradeが、手術成績不良の因子として抽出されました。
多変量解析では、主病巣のレベルが唯一の有意な危険因子であることが確認されました(オッズ比、5.00、P = 0.025)。
また、主病巣が頚胸椎接合部に存在することは、手術の予後不良の有意なリスク因子でありました(P=0.006)。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】結論
Although the effects of palliative surgery for cervical spine metastasis on the PS and QOL have not been fully investigated, the current study suggests that surgery should be recommended because of its potential to improve the PS and QOL. However, a cervicothoracic junction lesion could be a risk factor for no improvement or re-deterioration after improvement of the PS or QOL.
Kanda Y, Kakutani K, Sakai Y, et al. Surgical outcomes and risk factors for poor outcomes in patients with cervical spine metastasis: a prospective study. J Orthop Surg Res. 2021 Jul 3;16(1):423
今回の研究では、頸椎転移に対する緩和手術は、PSやQOLの改善が期待できることから、手術を勧めるべきであると考えられました。
しかし、頚胸椎接合部病変は、PSやQOLの改善後に改善しない、あるいは再悪化する危険因子となりうるので注意が必要とのことです。
80%以上の患者さんがPSやQOLが改善するという結果はすごいですね。
放射線治療に加えて、手術療法も適応があれば積極的に考えてもいいのかもしれません。
上質な寝心地を実現するために、寝返りに特化した【NELLマットレス】・対象患者の特徴は、PS3~4の臥床傾向の患者さんが多かった。
・80%以上の症例でPSとEQ5Dスコアの改善が認められた。
・主病巣が頚胸椎接合部に存在することは、手術の予後不良の有意なリスク因子だった。
・頸椎転移に対する緩和手術は、PSやQOLの改善が期待できることから、手術を勧めるべきであると考えられた。
・頚胸椎接合部病変は、PSやQOLの改善後に改善しない、あるいは再悪化する危険因子となりうるので注意が必要である。
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。
しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。
記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。
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