日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に公開

今回は、日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に調査した論文を紹介します。

日本の高齢者の介護予防のためには、フレイルという概念が重要視されていることは以前から説明しているとおりです。

がん患者さんにとっても、フレイルの予防は重要視されていましたね。

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それでは、実際に日本の高齢者でどれくらいフレイルの有症者がいるかというと、様々の報告があるので一概には言えません。

そもそも、全国民を調査することはできないですので、それぞれの施設や地域で調査するしかないですもんね・・・。

でも、地域によってもフレイルの有症率って変わりそうな気はしますよね。

 

そこで今回は、日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に調査した論文を紹介します。

まとめ
・日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に調査した論文を紹介。

・日本の65歳以上の地域在住者におけるフレイルの有病率は8.7%と推定された。

・フレイル有病率は西日本より東日本の方が高い傾向にあることがわかった。

・フレイルとプレフレイルは、死亡、病院/介護施設への入院、ADL障害の発症のリスクが高くなる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に調査した内容になっています。

「National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016」、2020年に発行された論文です。日本の先生が執筆した論文です。

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対象

Of the 4364 people who were originally asked to participate in the 2012 survey, a total of 2940 people responded. After excluding those obtained from proxy interviews (n = 398) and from short-version questionnaire (n = 10), we involved 2532 people aged ≥60 years (valid response rate: 58.0 %). This study focused on the prevalence of frailty among people aged ≥65 years, so we included 2206 people aged ≥65 years in the analysis.

National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

この研究では、2012 年の全国高齢者調査 (NSJE) からのデータを使用しています。

2012 年の調査では、最初に参加を求められた 4364 人のうち、合計 2940 人が回答しました。

代理インタビュー (n = 398) および簡易版アンケート (n = 10) から得られたものを除いた後、60 歳以上の 2532 人を対象にしました (有効回答率: 58.0 %)。

この研究はフレイルの有病率に焦点を当てた65 歳以上の人の間で、65 歳以上の 2206 人を分析に含めました。

 

大規模なアンケート調査ですね。

58%というのは、かなり高い回答率のような印象です。

ちなみに私が先日行ったアンケート調査では、回答率は10%程度でした・・・。

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調査内容

Frailty status was assessed by five criteria based on PFP demonstrated by Fried et al. (2001): “shrinking,” “weakness,” “poor endurance,” “slowness,” and “low activity.”

 The overall effects of each sociodemographic and health variable on frailty status (frail, prefrail, or robust) were assessed by likelihood ratio tests in multinomial logistic regression models, adjusting for age and sex.

Statistical significance of the regional variation in frailty prevalence was determined by the likelihood ratio test in multinomial logistic regression analysis after adjusting for age and sex.

For all-cause mortality, we used the Cox proportional hazard model. For admission to a hospital/care facility and onset of BADL disability, we used a binary logistic regression model.

National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

フレイルはのフリードの基準を用いて評価しています。

「握力低下」「体重減少」「疲労感」「歩行速度低下」「活動性低下」から判定するんでしたね。

 

そして、フレイルと健康変数の関係性、フレイル有病率の地域差、フレイルと全死因死亡率、病院/介護施設への入院との関係性について検討しています。

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結果

National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

こちらはフレイルとADL障害、合併症との関係を表した図です。

2206人のうち、786人(35.6%)がフレイルまたは合併症またはADL障害を有していました。

この786人のうち、49人(6.2%)はだがフレイルだが合併症やADL障害がない、32人(4.1%)はフレイルで合併症がある、52人(6.6%)はフレイルでADL障害がある、59人(7.5%)が3条件とも揃っている、となっています。

 

フレイルでもADL障害がなかったり、逆にフレイルじゃなくてもADL障害があったりするのはちょっと興味深いですね。

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National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

こちらの図は地域別の虚弱の年齢・性別調整済み有病率を示しています。

フレイル有病率が最も低いのは北海道と東北で、最も高いのは九州と沖縄、2番目に高いのは関東と中部でした

フレイル有病率は西日本より東日本の方が高い傾向にあることがわかりました。

 

年齢と性別を調整しても、地域によってフレイルの有病率に差があるのは興味深いですね。

何が影響しているんでしょうね?

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National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

こちらの表は、フレイルの状態と健康上の有害な転帰との関連を示したものです。

潜在的な共変量で調整した結果、フレイルとプレフレイルは、死亡、病院/介護施設への入院、ADL障害の発症のリスクが高くなっています。

そして、フレイルはプレフレイルよりもリスクが高くなっています。

 

やはり、フレイルになると死亡率や入院率が高くなってしまうようですね。

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結論

In conclusion, we estimated the prevalence of frailty among community-dwelling people aged ≥65 years in Japan as 8.7 %. The prevalence in each age group was lower in Japan than in other Asian and Western nations. We found several substantial variations by sociodemographic characteristics, health status, and geographical region. This study may therefore provide a useful basis for future frailty research and has provided important evidence to support the development of policies and strategies to prevent frailty.

National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Murayama H, Kobayashi E, Okamoto S, Fukaya T, Ishizaki T, Liang J, Shinkai S. Arch Gerontol Geriatr. 2020 Aug 9;91:104220. doi: 10.1016

以上より、日本の65歳以上の地域在住者におけるフレイルの有病率は8.7%と推定されました。

各年齢層における有病率は、日本では他のアジア諸国や欧米諸国に比べて低いことがわかりました。

また、社会人口統計学的特性、健康状態、地域によって大きな違いがあることがわかりました。

 

日本全国の大規模な研究ですので、このフレイルの有病率は信頼が持てそうですね。

各国や地域でフレイルの有病率に差があるのは、考察では所得の差異による医療サポートの違いや平均寿命の違いなどが挙げられています。

どういった原因でフレイルの有病率に差があるのかまでわかったら非常に役に立ちそうですね。

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まとめ
・日本の高齢者のフレイル有症率を地域別に調査した論文を紹介。

・日本の65歳以上の地域在住者におけるフレイルの有病率は8.7%と推定された。

・フレイル有病率は西日本より東日本の方が高い傾向にあることがわかった。

・フレイルとプレフレイルは、死亡、病院/介護施設への入院、ADL障害の発症のリスクが高くなる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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