変形性関節症患者さんはフレイルになりやすい

今回は、ヨーロッパ 6 カ国の高齢者の変形性関節症とフレイルの関係を調査した論文を紹介します。

日本の高齢者の介護予防のためには、フレイルという概念が重要視されており、がん患者さんにとっても、フレイルの予防は必要となっています。

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一方で、がん患者さんも高齢になるにつれて、整形外科疾患も合併することが多くなり、「がんロコモ」という概念も注目されています。

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つまり、がん患者さんはフレイルにも、整形外科疾患を基盤としたロコモにも注意を要するわけです。

 

ところで、日本では要支援・介護に陥る要因として、「高齢による衰弱」すなわちフレイルはもちろん上位に挙がっていますが、関節疾患や転倒・骨折といった整形外科疾患に関わることも上位となっています。

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そうなってくると、整形外科疾患がベースに合って、そこからフレイルに陥ったり、転倒・骨折によって要介護になるという流れが考えられそうですね。

すると、整形外科疾患とフレイルも関連してきそうですがどうなのでしょうか?

そこで今回は、ヨーロッパ 6 カ国の高齢者の変形性関節症とフレイルの関係を調査した論文を紹介します。

まとめ
・ヨーロッパ 6 カ国の高齢者の変形性関節症とフレイルの関係を調査した論文を紹介。

・OAではフレイルのオッズが2.96(95%CI:2.11-4.16)、プレフレイルは1.54(95%CI:1.24-1.91)と、OAではない人に比べて高かった。

・この関連性は、膝関節、股関節、手関節のOAを別々に考慮しても変わらず、関与する関節の数が増えるほど強くなっていた。

・整形外科クリニックでは整形外科疾患に特異的な介入だけでなく、フレイルといった全体の評価・治療が必要であると考える。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、ヨーロッパ 6 カ国の高齢者の変形性関節症とフレイルの関係を調査した内容になっています。

「Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359」、2015年に発行された論文です。

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対象

The EPOSA project involves six cohort studies, each performed in a different country: Germany (The study on Activity and Function in the Elderly in Ulm, ActiFE-Ulm), the United Kingdom (UK) (Hertfordshire Cohort Study, HCS), the Netherlands (Longitudinal Aging Study Amsterdam, LASA), Italy (Godega di Sant’Urbano, Veneto Region), Spain (Ageing in Peñagrande), and Sweden (Swedish Twin Register). 

A total of 2,942 respondents (response rate ranging from 64.6 % to 82.2 %, averaging 72.8 %) were included in the EPOSA baseline study. The overall age range was 65-85 years (with oversampling of the oldest respondents) in all cohorts except for the UK, in which the age range was 71-79 years.

Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359

この研究は、ドイツ、英国、オランダ、イタリア、スペイン、すうぇーでんといった異なる国で実施された6つのコホート研究になります。

合計 2,942 名の回答者(回答率は 64.6 %~82.2 %、平均 72.8 %)であり、年齢層は、英国を除くすべてのコホートで65-85歳であり、英国では71-79歳となっています。

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調査内容

The association between OA and frailty was summarized with odds ratios (OR) and their 95 % confidence interval (CI) obtained from logistic regression. Multivariate analyses were conducted using the variable frailty with three categories (no frailty as reference variable, pre-frailty and frailty), as the dependent variable (multinomial logistic regression) and OA as the main independent variable, introducing in the model the co-variables that were associated with frailty at p < 0.10 in a bivariate analysis.

We conducted five regression analyses, using the previously described measures of OA (clinical OA at any site, knee OA, hip OA, hand OA and clinical OA-number of sites) in each analysis.

Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359

変形性関節症(OA)とフレイルの関連を、ロジスティック回帰で分析しています。

具体的には、OAを主要な独立変数として、二変量解析でフレイルとp<0.10で関連していた共変数をモデルに導入して実施した。

各分析で、先に述べたOAの指標(あらゆる部位の臨床OA、膝OA、股関節OA、手OA、臨床OA-部位数)を用いて、5つの回帰分析を行っています。

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結果

Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359

こちらはフレイルと年齢、OAとの関係を表した図です。

任意の部位でのOA の全体的な有病率は 30.4% でした。

部位別には手OAが 16.3%、股関節OAが 5.9%、膝OAが 19% となっています。

全体的に分析しても、各 OA 部位別に分析しても、女性はすべての年齢層で男性よりも OA の頻度が高くなっていました。

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Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359

こちらの表は、OAとプレフレイルおよびフレイルとの関連を示したものです。

すべての研究変数で調整した後、OAのオッズ比はプレフレイルで1.54に、フレイルで2.96でした

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Osteoarthritis and frailty in elderly individuals across six European countries: results from the European Project on OSteoArthritis (EPOSA). Castell MV, van der Pas S, Otero A, Siviero P, Dennison E, Denkinger M, Pedersen N, Sanchez-Martinez M, Queipo R, van Schoor N, Zambon S, Edwards M, Peter R, Schaap L, Deeg D. BMC Musculoskelet Disord. 2015 Nov 17;16:359

こちらの表は、各OA変数の完全調整済みオッズ比を示しています。

調整した結果、OAの存在はプレフレイル(OR:1.54、95%CI:1.24-1.91)、より強くフレイル(OR:2.96、95%CI:2.11-4.16)と関連していました。

この関連は、股関節が患部の場合、フレイルのオッズは4倍高くなっています(OR:4.41、95 % CI:1.41-13.82)。

関連性の強さは、罹患関節の数とともに増加しました。

分析した3関節すべてに同時にOAが存在する場合、プレフレイルのオッズは3倍高く(OR 2.26; 95 % CI:1.28-8.32 )、フレイルのオッズは8倍以上高くなっています(OR: 8.95; 95 % CI:2.83-28.39 )

 

やはり、OAがあるとフレイルになりやすいですし、OAの部位が増えるとよりフレイルになる確率が高くなるようです。

膝OAより手OAの方がフレイルのリスクが高いのは意外な結果ですね。

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結論

OA and frailty are highly prevalent in the elderly population in Europe, with an estimated frequency that ranges between 19.7 % in Germany and 42.3 % in Italy for OA and between 5.6 % in Germany and Sweden and 15.4 % in UK for frailty.

The odds of frailty is 2.96 (95 % CI:2.11-4.16) and pre-frailty 1.54 (95 % CI:1.24-1.91) as high among OA individuals than those without OA. The association remains when OA of the knee, hip and hand joints are considered separately, and is stronger in those with increasing number of joints involved.

This association might be considered when designing appropriate intervention strategies for OA management.

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研究の結果をまとめますと、OAと虚弱はヨーロッパの高齢者人口に非常に多く、その頻度はOAでドイツ19.7%、イタリア42.3%、虚弱でドイツとスウェーデン5.6%、イギリス15.4%と推定されます。

OAではフレイルのオッズが2.96(95%CI:2.11-4.16)、プレフレイルは1.54(95%CI:1.24-1.91)と、OAではない人に比べて高いことが分かりました。

この関連性は、膝関節、股関節、手関節のOAを別々に考慮しても変わらず、関与する関節の数が増えるほど強くなっています。 

解決策としては、運動の促進や減量が挙げられていました。

 

整形外科クリニックに来られる高齢者の大半は変形性関節症を有していますので、フレイル予防に特に注意が必要なようです。

整形外科疾患に特異的な介入だけでなく、フレイルといった全体の評価・治療が必要ですね。

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まとめ
・ヨーロッパ 6 カ国の高齢者の変形性関節症とフレイルの関係を調査した論文を紹介。

・OAではフレイルのオッズが2.96(95%CI:2.11-4.16)、プレフレイルは1.54(95%CI:1.24-1.91)と、OAではない人に比べて高かった。

・この関連性は、膝関節、股関節、手関節のOAを別々に考慮しても変わらず、関与する関節の数が増えるほど強くなっていた。

・整形外科クリニックでは整形外科疾患に特異的な介入だけでなく、フレイルといった全体の評価・治療が必要であると考える。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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