睡眠不足や肥満がある高齢者はコロナ自粛生活の影響を受けやすい

今回は,緊急宣言による自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能に与えた影響について検討し,緊急宣言による在宅高齢者の日常生活上の変化に影響を与える可能性のある関連要因について調査した研究を紹介します.

 

今まで、高齢者やがん患者さんにとって活動量を落とさないことは重要であることを紹介してきました。

身体活動量の低下や座りがちな生活は大腸がんになるリスクを高くする

2022年5月26日

高齢者の骨量、筋量は身体活動量低下と関連するか?

2022年3月11日

高齢者は座りっぱなしになりやすいので、座っている時間を低強度の活動に置き換えるだけでも効果が期待できるんでしたね。

座位行動を身体活動へ置き換えることは抑うつを軽減する 

2022年6月28日

しかし、最近では新型コロナウィルス感染症により、外出自粛が広まり、活動性が低下している方が増えてきている印象です。

実際に新型コロナウィルス感染症はどの程度影響を及ぼしているのか気になるところです。

 

そこで、今回は,緊急宣言による自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能に与えた影響について検討し,緊急宣言による在宅高齢者の日常生活上の変化に影響を与える可能性のある関連要因について調査した研究を紹介します.

まとめ
・緊急宣言による自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能に与えた影響について検討し,緊急宣言による在宅高齢者の日常生活上の変化に影響を与える可能性のある関連要因について調査した研究を紹介。

・通常歩行速度(Usual Walking Speed;UWS),握力,National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)による認知機能,Geriatrics Depression Scale-15(GDS-15),基本チェックリストについて評価した。

・緊急宣言による自粛生活で,秋田県在住の高齢者における心身機能の低下は認められなかった可能性が大きかった。

・睡眠不足や肥満などがあると、自粛生活の影響が強くなる可能性が大きいようですので、該当しそうな方は注意するようにしましょう!

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】

今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、緊急宣言による自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能に与えた影響について検討し,緊急宣言による在宅高齢者の日常生活上の変化に影響を与える可能性のある関連要因について調査した内容になっています。

「小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号」 2022年に発行された最新の論文になります。

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】

対象

本研究は秋田県内在住の 65 歳以上の高齢者 506 名 (75.4±6.2 歳)を対象としています.

研究実施期間は,2019 年 8 月 27 日から 2021 年 3 月 23 日です.

全対象者のう ち 2019 年 8 月 27 日から 2020 年 2 月 18 日に実施した対 象者 332 名(74.9±6.5 歳)を緊急宣言前,2020 年 9 月 8 日から 2021 年 3 月 23 日に実施した 174 名(76.3±5.6 歳)を緊急宣言後とした.

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

秋田県の高齢者を対象とした横断研究です.

緊急事態宣言前と後で評価を行って比較をしています。

注意しておきたいのは、緊急事態前後の時点で募集して調査を行っておりますので、同一対象を追跡して調査をしているわけではないようですね。

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】

方法

通常歩行速度(Usual Walking Speed;UWS),握力,National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)による認知機能,Geriatrics Depression Scale-15(GDS-15),基本チェックリストについて評価した.

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

以下の項目について調査を行っています.

 

①歩行速度

②握力

③National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool(NCGG-FAT):認知機能の検査

a. Tablet version of word list memory(WM):即時記憶課題と短期記憶課題から構成される検査

b. Tablet version of trail making test version A(TMT-A) および version B(TMT-B)

c. Tablet version of Symbol Digit Substitution Task (SDST)

④Geriatrics Depression Scale-15(GDS-15):抑うつ機能の検査

⑤基本チェックリスト:フレイルの検査

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】

結果

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

こちらの表は調査結果の比較になります.

歩行速度のみ有意差が認められ、緊急事態宣言後の方が歩行速度は速くなっていました(p<0.000).

その他の項目につ いて有意差は認められず,認知機能(WM,TMT-A& B,SDST)については緊急宣言後が緊急宣言前よりも 良好な傾向を示していました.

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

こちらのグラフは自粛生活による日常生活上の変化(5 項目)と身体機能,認知機能,抑うつ機能,生活機能(KCL)との関連についての結果です。

「睡眠時間の減少有り」 と GDS-15 との間に正の相関(rs=0.200,p=0.019)が認 められています。

つまり、自粛生活で睡眠が減少することと抑うつが増強することは関連するということですね。

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

さらに、こちらのグラフでは、日常生活で変化が起きたものに対する一人当たりの該当合計数とBMI との間に正の相関(rs=0.282,p=0.001)が認められています。

つまり、BMIが高いと緊急事態宣言後に変化が生じやすかったというわけですね。

結論

緊急宣言による自粛生活で,秋田県在住の高齢者における心身機能の低下は認められなかった可能性が大きい.

また,緊急宣言による日常生活上の変化が与える影響として,うつ傾向にある高齢者と睡眠時間減少の有無との関連,肥満傾向にある高齢者が自粛による日常生活上の変化を受けやすい可能性が示唆された.

今回の自粛生活により心身機能の低下が認められなかった感染者数の少ない地域高齢者であっても,これらの要因については注意深い観察が必要である

小玉 鮎人, 菅原 薫, 久米 裕, 他. 秋田県在宅高齢者の緊急事態宣言による日常生活変化に影響を与える要因について. 日本老年医学会雑誌/59 巻 (2022) 1 号

今回の研究では、意外と心身機能には新型コロナウィルス感染症の影響が少なかったようです。

しかし、睡眠不足や肥満などがあると、自粛生活の影響が強くなる可能性が大きいようですので、該当しそうな方は注意するようにしましょう!

ぴったりのインストラクターを探せる【オンラインエクササイズ LOOOM】
まとめ
・緊急宣言による自粛生活が,地域在住高齢者の心身機能に与えた影響について検討し,緊急宣言による在宅高齢者の日常生活上の変化に影響を与える可能性のある関連要因について調査した研究を紹介。

・通常歩行速度(Usual Walking Speed;UWS),握力,National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)による認知機能,Geriatrics Depression Scale-15(GDS-15),基本チェックリストについて評価した。

・緊急宣言による自粛生活で,秋田県在住の高齢者における心身機能の低下は認められなかった可能性が大きかった。

・睡眠不足や肥満などがあると、自粛生活の影響が強くなる可能性が大きいようですので、該当しそうな方は注意するようにしましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

       興味があったらシェアしてください