ウォーキングや感謝の日記などポジティブな行動は抑うつを軽減する

今回は,ポジティブ心理学的介入を取り入れたハッピープログラムが地域在住高齢者の抑うつを含む心理・精神的健康に及ぼす効果を検証した研究を紹介します.

 

前回は、新型コロナウィルス感染症の自粛生活中は、肥満や睡眠不足があると抑うつなどの問題が生じやすいことを紹介しました。

睡眠不足や肥満がある高齢者はコロナ自粛生活の影響を受けやすい

2022年7月2日

抑うつなどの心理面の問題は、がん患者さんでも生じやすく、生活の質を低下させてしまいます。

一方で、心理面の問題を改善させるっていうのはなかなか難しいことなんですよね・・・。

 

座りっぱなしの生活から活動量をアップさせたり、通いの場の環境調整で抑うつが改善したという報告もあるので、やっぱり動くことが手っ取り早くできる改善策です。

座位行動を身体活動へ置き換えることは抑うつを軽減する 

2022年6月28日

通いの場づくりによる介護予防は活動性やうつ,フレイルを改善させる 

2022年6月24日

 

しかし、運動や活動性アップ以外に抑うつを改善させる有効な方法はないのでしょうか?

 

そこで、今回は,ポジティブ心理学的介入を取り入れたハッピープログラムが地域在住高齢者の抑うつを含む心理・精神的健康に及ぼす効果を検証した研究を紹介します.

まとめ
・ポジティブ心理学的介入を取り入れたハッピープログラムが地域在住高齢者の抑うつを含む心理・精神的健康に及ぼす効果を検証した研究を紹介。

・介入群に対し週 1 回,1 回 120 分,全 12 回の教室を開催した。

・毎回の教室は,「a. うつについての講義 」「b. ハッピースキルの講義」「c. グループワーク」 「d. リラクゼーション法」の流れとし,教室終了 後に自宅に戻っての「e. ホームワーク」の実践を促すこととした。

・ポジティ ブ心理学的介入の手法を取り入れた「ハッピープ ログラム」の介入が,抑うつを含む心理・精神的健康の向上に効果があった。

・悪循環から脱却するために、「気持ち」を変えるのは簡単にはいかないので、まずば「行動」から変えていくのが有効ということだと思われる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、ポジティブ心理学的介入を取り入れたハッピープログラムが地域在住高齢者の抑うつを含む心理・精神的健康に及ぼす効果を検証した内容になっています。

「安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号」 2021年に発行された論文になります。

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対象

安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

2009 年度に東京都 A 市が 65 歳以上の全住民に郵送で実施した,介護予防事業対象者把握のための基
本チェックリストの回答者 27,760 名(回答率 72.6%)のうち,うつに関する 5 項目中 2 項目以上に該
当する者 6,225 名に対し,ハッピープログラムを用いたうつ予防教室参加者募集のチラシを発送しています.
結果,ハッピープログラム(週 1 回 120 分,合計 12 回)の参加希望があった 65 名を介入群,介入群
と性別,年齢,居住地域,基本チェックリストのうつに関する項目の該当数が一致する 195 名を対照
群としています.

プログラム介入前後に質問紙調査を実施し,有効回答が得られた者のうち,精神疾患の既往があり,かつ事前調査時に「抑うつ状態(Geriatric Depression Scale 短縮版,GDS;6 点以上)」
に該当する者を除外した 128 名(介入群:n=41; 平均年齢 71.4 歳,対照群 :n=87; 平均年齢 71.7 歳)
を分析対象としています.

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方法

安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

2010 年 1 ~ 3 月にわたって,介入群に対し週 1 回,1 回 120 分,全 12 回の教室を開催しました。

「ハッピープログラム」は,ポジティブ心理学的介入(Positive Psychology Interventions: PPIs) の手法を取り 入れたハッピースキルの講義,ホームワーク(自 宅で実施),ポジティブ感情を高めるためのグルー プワーク,さらに,これらの PPIs の基本プログ ラムに,うつについての講義とリラクゼーション 法を加え,大きく 5 つの内容から構成されています.

毎回の教室は,「a. うつについての講義 」「b. ハッピースキルの講義」「c. グループワーク」 「d. リラクゼーション法」の流れとし,教室終了 後に自宅に戻っての「e. ホームワーク」の実践を促すこととしています.

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安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

こちらはハッピープログラムの詳細になります。

 

ハッピースキルの講義(40 分)

①感謝したこと を 3 つ取り上げ日記につける,②ハッピー・ ウォーキングをする,③大笑いする, ④自分にプレゼントをする,⑤親切 な行動をする,⑥人が見ていなくても良いこと をする, ⑦感謝の手紙(はがき)を出す,⑧ほっとできる人と会話の ある時間を過ごす,⑨友人や知人に連絡をとる, ⑩近所の人に挨拶をするの計 10 の課題を作成しています.

これらの課題について,その内容と実践 方法を説明し,日々の生活の中で体験する(ホー ムワーク)よう促し、ハッピースキルについては段階的に説明を行い,4 回目に10 の課題の説明が完了しています.

 

グループワーク(40 分):

ポジティブ感情を高 めるために,ポジティブなテーマに基づき,自 身の体験について話し合います.

テーマは,対象者 同士で共有・共感できるとともに,ハッピース キルを実践する上でのヒントになるよう工夫して作成されました.

12 のテーマの中から 1 テー マずつ用い,5 ~ 6 名程度の小グループに分か れて話し合っています.

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結果

安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

こちらの表は各課題の 1 週 間あたりの実践状況を示しています.

「ハッ ピー・ウォーキングをする」課題の実践は,平均 して 1 週間に 5.1 日と最も多くなっています.

また,「感 謝したことを取り上げ日記につける」「大笑いす る」「自分にプレゼントをする」「親切な行動をす る」「人が見ていなくても良いことをする」「近所 の人に挨拶をする」については,平均して 1 週間 に 2 日以上実践していました.

一方,「感謝の手紙(はがき)を出す」「友 人や知人に連絡をとる」課題は,それぞれ平均し て 1 週間に 0.6 回実践とすくなくなっています.

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安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

こちらの表は介入効果の結果を示しています.

結果, GDS 得点,AIS 得点,SAI 得点,TAI 得点におい て,群と調査時期の 2 要因間に有意な交互作用が 認 め ら れ,いずれの 評価指標も介入群でのみ事前事後で平均得点の有 意な低下が認められています.

一方, FEQ 得点では,群と調査時点の 2 要因間による交 互作用は認められていません.

 

つまり、うつ(GDS 得点),睡眠(AIS 得点),不安(SAI 得点,TAI 得点)に対して効果が認められたが、主観的幸福感(FEQ得点)の改善は見られなかったということですね。

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結論

本研究では,地域在住高齢者を対象にポジティ ブ心理学的介入の手法を取り入れた「ハッピープ ログラム」の介入が,抑うつを含む心理・精神的 健康に及ぼす効果を検証することを目的としてい た.

約 3 ヵ月間のハッピープログラムを実施し た結果,介入群では事前事後において,抑うつ状 態,不眠,不安の改善が認められた.

一方,対照 群においては,介入前後で変化がみられなかった.

「ハッピープログラム」の実施が,地域在住高齢 者の心理・精神的健康の向上に有効であることが 示唆された.

安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 他. 地域在住高齢者におけるポジティブ心理学的介入を取り入れたうつ予防プログラムの効果. 日本保健福祉学会誌/28 巻 (2021) 1 号

ポジティ ブ心理学的介入の手法を取り入れた「ハッピープ ログラム」の介入が,抑うつを含む心理・精神的健康の向上に効果があるという結果です。

心理面に問題が生じてくると、活動性が低下して、さらにその活動性低下によって心理的問題が増悪するという悪循環が生じると言われています。

どこかでその悪循環から脱却することが大事なのですが、「気持ち」を変えるのは簡単にはいかないので、まずば「行動」から変えていくのが有効ということでしょうね。

気持ちが落ち込み気味の方などは、今回の記事を参考に、まずは「行動」を変えてみるのを意識してみるのもいいかもしれませんね。

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まとめ
・ポジティブ心理学的介入を取り入れたハッピープログラムが地域在住高齢者の抑うつを含む心理・精神的健康に及ぼす効果を検証した研究を紹介。

・介入群に対し週 1 回,1 回 120 分,全 12 回の教室を開催した。

・毎回の教室は,「a. うつについての講義 」「b. ハッピースキルの講義」「c. グループワーク」 「d. リラクゼーション法」の流れとし,教室終了 後に自宅に戻っての「e. ホームワーク」の実践を促すこととした。

・ポジティ ブ心理学的介入の手法を取り入れた「ハッピープ ログラム」の介入が,抑うつを含む心理・精神的健康の向上に効果があった。

・悪循環から脱却するために、「気持ち」を変えるのは簡単にはいかないので、まずば「行動」から変えていくのが有効ということだと思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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