高齢がん患者の機能低下を予防するにチェックすべきこと

今回は高齢のがん患者における機能低下予防と管理の戦略について解説している論文を紹介します。

 

前回は、がんサバイバーが自分で行う5回起立テストが有用であることを紹介しました。

がんサバイバーのセルフ運動機能チェックは有用か?

2022年4月7日

運動機能のチェックを自分でできるということは非常に有用なことですね。

しかし、5回起立テストだけで運動機能低下をすべてチェックできるわけではありません。

そこで今回は高齢のがん患者における機能低下予防と管理の戦略について解説している論文を紹介します。。

まとめ
・高齢のがん患者における機能低下予防と管理の戦略について解説している論文を紹介。

・治療前後に日常生活や運動機能などの評価を行い、フレイルに陥っていないかを評価する。

・喫煙や肥満などがある患者さんは特に注意。

・やっぱり運動と栄養が大切。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、高齢のがん患者における機能低下予防と管理の戦略について解説している内容になっています。

「Muhandiramge J, Orchard SG, Warner ET, et al. Functional Decline in the Cancer Patient: A Review. Cancers (Basel). 2022 Mar 8;14(6):1368.」、2022年に発行された新しい論文です。

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高齢のがん患者の機能状態を評価するために使用できるツール



Muhandiramge J, Orchard SG, Warner ET, et al. Functional Decline in the Cancer Patient: A Review. Cancers (Basel). 2022 Mar 8;14(6):1368.

Barthel Index:日常生活動作の評価

Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status:全身状態の評価

Karnofsky Performance Status Scale:全身状態の評価

Katz Index of Independence in Activities of Daily Living Scale:日常生活動作の評価

Lawton Instrumental Activities of Daily Living Scale :日常関連動作の評価

Functional Independence Measure (FIM):日常生活動作の評価

Frail Elderly Functional Assessment Questionnaire:フレイルの評価

Grip strength:握力の評価

Gait speed:歩行速度の評価

6-Minute Walk Test:6分間歩く持久力の評価

Timed Up and Go Test:動的バランスの評価

Short Physical Performance Battery:バランスや歩行などの複合的評価

 

以上が評価項目の一部です。

基本的には日常での生活が介助なく行えてるか、さらに買い物や外出などの日常生活関連の動作も評価します。

運動機能としては、握力、歩行速度、持久力、バランスなどの評価が推奨されています。これらの項目も含めてフレイルを評価するのがいいでしょう。

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がん患者の機能低下

がん患者さんは、がん自体の要因や化学療法、放射線療法、手術といった治療が要因で機能低下を引き起こします。

 


Muhandiramge J, Orchard SG, Warner ET, et al. Functional Decline in the Cancer Patient: A Review. Cancers (Basel). 2022 Mar 8;14(6):1368.

こちらの図はがんの高齢者に見られる機能低下に簡単に適用できる加速劣モデルについて説明しています。

ここでは、患者は年をとるにつれてゆっくりと機能を失い、ライフスタイルの行動が悪くなり、がん治療などが機能低下を加速させます。

 

 


Muhandiramge J, Orchard SG, Warner ET, et al. Functional Decline in the Cancer Patient: A Review. Cancers (Basel). 2022 Mar 8;14(6):1368.

こちらの表は、高齢のがん患者の機能低下を予測する可能性のある要因です。

喫煙は肺機能低下の強力な危険因子であり、がんの状態に関係なく機能状態に悪影響を及ぼします。

また、喫煙は多くの種類のがんと強く関連しており、肺がんの80%近くが喫煙によって引き起こされていることを考えると、喫煙歴のある高齢のがん患者は、がんの診断や治療に関係なく、喫煙に関連した機能低下を経験している可能性があります。

さらに肥満も、独立して機能低下を加速する可能性があります[ 69 ]。

また、痛み、倦怠感、抑うつ症状などのがんに関連した症状が機能障害を加速させる可能性もあります。

そして、栄養障害や薬剤の種類が大量になることにも注意が必要です。

このような症状は早めに対処したほうが機能低下を防げるというわけです。

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機能低下の予防と管理

機能低下の予防と管理の原則は、治療前と治療後の両方において、フレイルの早期発見、身体活動、および食事療法となります。

以前から話しているように、治療前からフレイルを発見することは治療成績や予後に影響します。

フレイルの評価を医療者も患者さんも意識しましょう。

食道がん患者の予後とフレイルは関連するのか?

2022年4月3日

がん患者の運動機能低下~フレイルについて~

2022年2月21日

高齢者における運動の効果は、週に複数回を30〜45分実施して少なくとも5か月続く場合、運動介入が機能状態を改善できることを示唆しています[ 117]。

長期間の運動継続がカギになるようですね。根気強く頑張りましょう。

治療前の運動、栄養介入、およびストレス軽減を含む「プレハビリテーション」も、ある程度の利益をもたらす可能性があるようです。

 

栄養介入も機能低下を減らすのに有望であることが示されています。

カロリー摂取と、ビタミンとサプリメントを使用したランダム化比較試験の介入群(n = 151)は、3、6、および12か月でフレイルスコアの低下を示し、コントロールと比較してフレイルの低下を経験する可能性がかなり高かった(OR 2.98、95%CI 1.10–8.07) と報告されています[ 123 ]。

栄養をしっかり取らないと、運動の効果も半減してしまいますね。

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結論

高齢のがん患者さんには治療前後に、日常生活や運動機能などの評価を行い、フレイルに陥っていないかを評価する。

特に、喫煙、肥満、痛み、打つなどがある患者さんは注意する。

運動をしっかりと行い、栄養を摂ることが大事であるという基本的な内容になりますが、改めて論文にまとめられているので参考にしましょう。

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まとめ
・高齢のがん患者における機能低下予防と管理の戦略について解説している論文を紹介。

・治療前後に日常生活や運動機能などの評価を行い、フレイルに陥っていないかを評価する。

・喫煙や肥満などがある患者さんは特に注意。

・やっぱり運動と栄養が大切。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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