高齢者の生活機能低下には痛みの部位数が関連する

今回は,基本チェックリストの社会・認知・精神的側面に着目して地域在住高齢者の生活機能を評価し,生活機能低下に与える心身機能および痛みの影響について調査した論文を紹介します.

 

このブログでは、高齢者やがん患者さんのフレイル予防が大事であることを紹介しています。

がん患者の運動機能低下~フレイルについて~

2022年2月21日

フレイルといえば、身体的に弱っている印象ですが、身体的フレイル以外にも心理や認知、社会面もフレイルに関わるんでしたね。

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2022年5月1日

 

一方で、がん患者さんは、日常生活で痛みが問題となることが多いです。

がん患者の痛みの原因、評価について解説

2022年2月25日

慢性的な痛みがあると、運動療法の効果が減少してしまうという悪影響も紹介しましたね。

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2022年6月16日

 

痛みが強いと運動機能が低下することは知られていますが、痛みと社会・認知・精神的側面の関連性について調査した研究は少ない現状です。

そこで、今回は,基本チェックリストの社会・認知・精神的側面に着目して地域在住高齢者の生活機能を評価し,生活機能低下に与える心身機能および痛みの影響について調査した論文を紹介します.

まとめ
・基本チェックリストの社会・認知・精神的側面に着目して地域在住高齢者の生活機能を評価し,生活機能低下に与える心身機能および痛みの影響について調査した論文を紹介。

・基本チェックリストの結果から,生活機能低下群103名と生活機能維持群122名の2群に分類して比較した。

・痛みの部位数が生活機能低下に影響を及ぼす要因として選択された。

・高齢者が抱える痛みの問題に関しては、痛みの有無や強さだけでなく、部位数も含めた多面的な評価が必要と思われる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、基本チェックリストの社会・認知・精神的側面に着目して地域在住高齢者の生活機能を評価し,生活機能低下に与える心身機能および痛みの影響について調査した内容になっています。

「菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号」 2021年に発行された論文になります。

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対象

225名の地域在住女性高齢者を対象に基本チェックリストによる評価を実施し,生活機能低下群(103名)と生活機能維持群(122名)に分類した。

菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号

対象は,2019年9月に開催されたY市の体力測定会 の参加者305名です。

男性の参加者 は57名であり,十分な参加人数が得られなかったため, 対象を女性高齢者に限定したようです。

なお,本研究対象者は 全員が自宅で生活しており,グループホームや老人 ホームといった施設に入居している高齢者はいませんでした。

除外基準は,Mini Mental State Examination (MMSE)が23点以下の者(4名)、 欠損値を認めたデータ(19名)として, 225名が最終解析対象者となっています。

基本チェックリストの結果から,生活機能低下群103名と生活機能維持群122名の2群に分類して比較しています。

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方法

評価項目は以下の通りです。

 

1)基本チェックリスト

認知機能低下、閉じこもり、抑うつの3つの基準を評価した。

2)基本属性

年齢、身長、体重を調査した。

3)身体機能評価

握力,上体起こし,長座体前屈, 開眼片足立ち,5m 最速歩行,TUG,30秒椅子立ち 上がりテスト(30‐seconds Chair-Stand test;CS‐30)を行った。

4)認知機能評価

認知機能評価にはMMSE、注意機能にはTrail Making Testを用いた。

5)心理・精神機能評価

主観的健康感は,「あなたの健康状態について」と いう質問について,visual analogue scale(VAS)に 準じて回答を求めた。

6)疼痛評価

「過去1ヶ月間に,体が痛むことはありましたか」という質問に,「はい(0点)」もしくは「いいえ(1点)」の2択で痛みの有無を調査した。

痛みの部位数は,「体が痛む部位はどこですか?」という質問に,「頭・頸・肩・背中・腰・股関節・膝関節・足関節」の選択肢から複数選択可能として調査した。

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結果

菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号

各基準への該当人数は,「閉じこもり」11名(4.9%),「認知機能」76名(33.8%),「抑うつ気分」40名(17.8%)でした。

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菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号

こちらの表は2群を比較した結果を示しています.

2群比較の結果,生活機能維持群と比較して生活機能低下群では,痛みの有無,痛みの部位数が有意に高値を示していました。

それ以外の心身機能には有意差は認められませんでした。

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菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号

さらに、基本チェックリストの結果を従属変数,2群比較において有意差が認められた痛みの有無,痛みの部位数を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施した結果,痛みの部位数が生活機能低下に影響を及ぼす要因として選択されました。

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結論

基本チェックリストの社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能には,痛みの要因が関連することが明らかとなった。また,高齢者の抱える痛みは,たんに痛みの有無の聴取のみならず,痛みの部位数について詳細に評価することが重要であることが示唆された。

菊地 雄貴, 村田 伸, 安彦 鉄平, 他. 社会・認知・精神的側面から捉えた生活機能に影響を及ぼす 心身機能および痛みの要因についての検討. ヘルスプロモーション理学療法研究/11 巻 (2021) 2 号

認知、心理、社会的側面と痛みの部位数が関連しているという結果ですね。

認知、心理、社会的側面というのは、慢性痛患者が抱えている問題と重複する点が多いでしょうから、単純に痛みの有無だけでなく、痛みの部位数などといったことにも関連するのでしょうね。

痛みに関しては、痛みの強さだけでなく、多面的な評価が必要のようですね。

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まとめ
・基本チェックリストの社会・認知・精神的側面に着目して地域在住高齢者の生活機能を評価し,生活機能低下に与える心身機能および痛みの影響について調査した論文を紹介。

・基本チェックリストの結果から,生活機能低下群103名と生活機能維持群122名の2群に分類して比較した。

・痛みの部位数が生活機能低下に影響を及ぼす要因として選択された。

・高齢者が抱える痛みの問題に関しては、痛みの有無や強さだけでなく、部位数も含めた多面的な評価が必要と思われる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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