今回は、慢性痛を有する地域在住高齢者に対して運動療法に心理社会的アプローチを組み合わせた介入の効果について検討した論文を紹介します。
前回は痛みで日常生活に支障がある高齢者は運動療法の効果が乏しい可能性があるという内容の論文を紹介しました。
日本では介護予防の運動教室が行われており,身体,心理,活動において,その効果を認めていますが、疼痛が強い患者さんには効果が乏しいとなると、介入方法を検討する必要があります。
そこで、今回は、慢性痛を有する地域在住高齢者に対して運動療法に心理社会的アプローチを組み合わせた介入の効果について検討した論文を紹介します。
・地域在住高齢者の介護予防事業に参加している方を2群に分け、コントロールは従来の運動教室のみで、介入群は活動や痛みに対するモニタリングとフィードバックを実施した。
・12週間の介入を行うことにより、PDAS、PCS、歩数、活動量といった項目の改善が期待できるという結果であった。
・慢性痛を有する高齢者に対しては、単純な運動だけでなく、モニタリングとフィードバックがやはり大事なようである。
今回紹介する研究の概要
今回紹介する論文は、慢性痛を有する地域在住高齢者に対して運動療法に心理社会的アプローチを組み合わせた介入の効果について検討した内容になっています。
「Hirase T, Kataoka H, Nakano J, et al. Effects of a psychosocial intervention programme combined with exercise in community-dwelling older adults with chronic pain: A randomized controlled trial. Eur J Pain. 2018 Mar;22(3):592-600. doi: 10.1002/ejp.1149. Epub 2017 Nov 21.」 2018年に発行された論文になります。
入会金月額料金なし!楽しく続けるなら【オンラインエクササイズLOOOM】対象
We enrolled older adults participating in community exercise classes once a week in the Japanese city of Unzen, selecting seven exercise classes supported by physical therapists. Physical therapists were asked to choose potential participants aged ≥65 years who were living at home, able to walk outdoors without a cane, independent in ADL and who had chronic pain defined as an affirmative answer to the question, ‘Do you have any chronic pain lasting 3 months or more, either all the time or intermittently (excluding toothache, migraine, and menstrual pain)?’ (Inoue et al., 2015). The inclusion criterion specifying that patients be independent in ADL relates to the fact that the older population in Japan is more mobile compared with Western populations because of a longer healthy life expectancy (Saloman et al., 2012). Also, healthcare for older adults in Japan involves a community-based preventive programme to delay the need for long-term care (Tsutsui and Muramatsu, 2007). Our participants were enrolled in this preventive programme; therefore, they were more active, and their activity was not restricted. We excluded individuals who exercised at least four times a month before the intervention and those who had musculoskeletal, neurological or cardiovascular conditions that might be aggravated by exercise based on the judgements of their primary care doctors. We also excluded individuals who were unable to respond to interview questions because of cognitive impairment.
Hirase T, Kataoka H, Nakano J, et al. Effects of a psychosocial intervention programme combined with exercise in community-dwelling older adults with chronic pain: A randomized controlled trial. Eur J Pain. 2018 Mar;22(3):592-600. doi: 10.1002/ejp.1149. Epub 2017 Nov 21.
対象は、週1回、地域の運動教室に参加している65歳以上の高齢者で、自宅で生活し、杖なしで屋外歩行を含むADL自立している者としています。
慢性痛に関しては、『常時または断続的に3カ月以上続く慢性的な痛みがありますか(歯痛、片頭痛、生理痛を除く)』に対して、「はい」と答えた者と定義しています。
除外基準は、介入前に月4回以上の運動をしていた者、運動によって悪化する可能性のある筋骨格系、神経系、心血管系の疾患がある者、認知機能障害のためにインタビューの質問に答えられない者となっています。
介護予防事業に参加できているので、日常生活動作は概ね自立できている患者さんをイメージしてもらえればいいと思います。
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We randomized 128 older adults with chronic pain to either an intervention group (n = 64) involving exercise training combined with psychosocial intervention, or a control group (n = 64) involving only exercise training. Exercise training comprised weekly 60-min sessions for 12 weeks. Psychosocial intervention involved changing participants’ focus on pain using self-management education and cognitive behavioural therapy, and participants recorded their daily pain intensity and step counts. Pain intensity, psychological status and physical activity were assessed before and 12 weeks after the intervention.
Hirase T, Kataoka H, Nakano J, et al. Effects of a psychosocial intervention programme combined with exercise in community-dwelling older adults with chronic pain: A randomized controlled trial. Eur J Pain. 2018 Mar;22(3):592-600. doi: 10.1002/ejp.1149. Epub 2017 Nov 21.
こちらの図のような介入方法を実施しています。
コントロールは従来の運動教室のみで、介入群は活動や痛みに対するモニタリングとフィードバックを実施しているというわけですね。
具体的なフィードバック内容は以下の通りです。
・痛みをなくすことよりも、痛みがあっても買い物や散歩などの日常生活を増やすことに焦点を当てて、痛みの意識を変えるようにアドバイスした。
・例えば、日記でその日のNRSスコアが8点だったにもかかわらず、旅行のために電車に乗ることができた参加者に対して、理学療法士は『痛みの強さが非常に高いにもかかわらず、動いて日常活動を増やすことができていますね』とフィードバックした。
・1ヶ月目は1日の歩数をベースラインに対して約10%増加、2ヵ月目と3ヵ月目は、それぞれ約20%と約30%の歩数増加を目標とした。
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Hirase T, Kataoka H, Nakano J, et al. Effects of a psychosocial intervention programme combined with exercise in community-dwelling older adults with chronic pain: A randomized controlled trial. Eur J Pain. 2018 Mar;22(3):592-600. doi: 10.1002/ejp.1149. Epub 2017 Nov 21.
こちらの表は、2群のベースラインでの評価結果になります。
ベースラインではすべての項目において2群で差は認められませんでした。
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こちらの表は2群を縦断的に解析し、群の違いや時間経過の影響などを解析しています。
それらの結果をまとめたのがこちらになります。
まとめると、こんな感じですね。
入会金月額料金なし!楽しく続けるなら【オンラインエクササイズLOOOM】結論
Our exercise programme was shown previously to effectively improve the physical function of Japanese community-dwelling older adults with chronic pain. Adding a psychosocial intervention component in this study was even more effective, reducing participants’ pain intensity and preventing a decline in ADL because of improved psychological status and physical activity levels. The combined exercise and psychosocial intervention programme was also widely accepted by the older adults who participated. Therefore, we believe that the combined programme is an effective and feasible addition to community exercise classes for older adults with chronic pain.
Hirase T, Kataoka H, Nakano J, et al. Effects of a psychosocial intervention programme combined with exercise in community-dwelling older adults with chronic pain: A randomized controlled trial. Eur J Pain. 2018 Mar;22(3):592-600. doi: 10.1002/ejp.1149. Epub 2017 Nov 21.
本研究では、心理社会的介入の要素を加えることで、さらに効果的であり、参加者の痛みの強さを軽減し、心理状態と身体活動レベルの改善によりADLの低下を防止することができました。
また、運動と心理社会的介入を組み合わせたプログラムは、参加した高齢者に広く受け入れられました。
したがって、この複合プログラムは、慢性疼痛を持つ高齢者のための地域運動教室に効果的かつ実現可能な追加プログラムであると考えられます。
前回紹介した論文では、痛みのある高齢者は活動量が低下していることが問題となっていましたが、今回の介入ではしっかりと活動量をアップさせ、痛みに対する考え方も変化できていますね!
単純な運動だけでなく、モニタリングとフィードバックがやはり大事なようです。
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・12週間の介入を行うことにより、PDAS、PCS、歩数、活動量といった項目の改善が期待できるという結果であった。
・慢性痛を有する高齢者に対しては、単純な運動だけでなく、モニタリングとフィードバックがやはり大事なようである。
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