乳がん患者のがん関連疲労を改善するための新しいアプローチ

     

がんサバイバーの運動実施の実態について、以前紹介しました。

    

がんサバイバーが行っている運動の実態は??

2022年3月4日

          

運動を行うのはいいのはわかっていても、継続して実施してもらうのは難しいですよね。

      

    

今回紹介する論文は、Social Capital-Based Exerciseというプログラムの長期的な効果を調べたものです。

           

Social Capital-Based Exerciseとは、仲間と一緒に運動することで、社会的なつながりや支え合いを強化することを目的としたエクササイズです。

           

このプログラムは、乳がんの治療後に疲労感が強い方に特に有効だと考えられています。

            

なぜなら、疲労感は、運動不足や孤立感などの要因と関係しているからです。

          

運動は、疲労感を減らすだけでなく、免疫力や心身の健康にも良い影響を与えます。

             

        

しかし、運動を始めるのは簡単でも、続けるのは難しいものです。

          

そこで、Social Capital-Based Exerciseは、仲間と一緒に運動することで、運動の楽しさやモチベーションを高めるとともに、社会的な資源や支援を得ることができるというメリットを提供します。

         

乳がんの治療後に疲労感を感じる方にとって、Social Capital-Based Exerciseは、より良い生活のための一つの選択肢になるかもしれません。

                       

       

     

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今回紹介する論文の概要

    

   

今回紹介する論文は、Social Capital-Based Exerciseというプログラムの長期的な効果を調べた内容となっています。

 

   

「Han J, et al. Long Term Effects of a Social Capital-Based Exercise Adherence Intervention for Breast Cancer Survivors With Moderate Fatigue: A Randomized Controlled Trial. Integr Cancer Ther. 2023 Jan-Dec;22:15347354231209440. doi: 10.1177/15347354231209440. 」。

2023年の論文になります。

    

    

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対象と方法 

   

この研究に参加したのは、乳がんの手術と抗がん剤治療を終えた女性の方で、疲労感が中程度以上の方です。

参加者は、運動プログラムを受けるグループと、運動プログラムを受けないグループに、コンピューターでランダムに割り当てられました。

運動プログラムを受けるグループは、12週間にわたって、Social Capital-Based Exerciseというプログラムを実施しました。

Social Capital-Based Exerciseとは、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせた運動で、仲間と一緒に行うことで、社会的なつながりや支えを感じることができる運動です。

運動プログラムを受けないグループは、運動に関する一般的な情報を書いた資料をもらいました。

両方のグループには、毎週テキストメッセージで疲労感を自己評価してもらい、運動をすることを励ましました。

この研究では、運動プログラムの効果を測るために、参加者の疲労感や生活の質、運動量、うつや不安、睡眠の質、社会的な資本という要素を、4回の時点で調査しました。

調査の時点は、運動プログラムを始める前(M1)、運動プログラムを終えた直後(M2)、運動プログラムを終えてから1ヶ月後(M3)、運動プログラムを終えてから6ヶ月後(M4)です。

調査の方法は、各要素に対応した質問紙を参加者に記入してもらうというものでした。

質問紙の内容は、疲労感の程度や種類、生活の質の主観的な感じ、運動量の目安、うつや不安の症状、睡眠の質の評価、社会的な資本の程度というものでした。

質問紙の得点は、それぞれの要素の状態を数値化することができます。

                 

       

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結果

Han J, et al. Long Term Effects of a Social Capital-Based Exercise Adherence Intervention for Breast Cancer Survivors With Moderate Fatigue: A Randomized Controlled Trial. Integr Cancer Ther. 2023 Jan-Dec;22:15347354231209440. doi: 10.1177/15347354231209440. 

 

Figure 1. Consort diagramは、Social Capital-Based Exerciseの介入の長期効果を検証するために行われたランダム化比較試験の参加者の流れを示しています。

以下にその内容を簡単に説明します。

  • この試験には、乳がんの治療を終えてから6か月以上5年以内に診断され、中等度以上の疲労感を持つ女性が対象でした。

  • この試験には、介入群と対照群の2つのグループがありました。介入群は、12週間のSocial Capital-Based Exerciseのプログラムに参加しました。対照群は、一般的な運動の情報を書面で受け取りました。

  • この試験には、合計で50人の参加者が登録されました。そのうち、24人が介入群に、26人が対照群に割り当てられました。

  • この試験の結果は、基準時点(M1)、介入終了時点(M2)、介入終了後1か月(M3)、介入終了後6か月(M4)の4つの時点で測定されました。

  • この試験の最終的な分析には、介入群から20人、対照群から20人の合計40人の参加者が含まれました。10人の参加者が途中で試験を中止しました。

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Han J, et al. Long Term Effects of a Social Capital-Based Exercise Adherence Intervention for Breast Cancer Survivors With Moderate Fatigue: A Randomized Controlled Trial. Integr Cancer Ther. 2023 Jan-Dec;22:15347354231209440. doi: 10.1177/15347354231209440. 

      

       

Table 1. Sociodemographics of the Study Sample (N = 46)は、Social Capital-Based Exerciseに参加した乳がん患者の特性を示す表です。

この表には、以下のような情報が含まれています。

  • 年齢:介入群と対照群の平均年齢はそれぞれ49.91歳と47.91歳で、両群間に有意差はありませんでした。

  • 結婚状況:介入群と対照群の約7割が既婚で、両群間に有意差はありませんでした。

  • 収入:介入群と対照群の約半数が月収30万円未満で、両群間に有意差はありませんでした。

  • 就業状況:介入群と対照群の約3割が就業しており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 宗教:介入群と対照群の約7割が宗教を持っており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 経済的負担:介入群と対照群の約半数が経済的負担を感じており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 教育水準:介入群と対照群の約96%が高校以上の学歴を持っており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 親の有無:介入群と対照群の約8割が親と同居しており、両群間に有意差はありませんでした。

  • がんのステージ:介入群と対照群の約6割がステージIIで、両群間に有意差はありませんでした。

  • 手術の種類:介入群と対照群の約8割が乳房温存手術を受けており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 診断からの経過時間:介入群と対照群の約9割が診断から2年以内で、両群間に有意差はありませんでした。

  • 化学療法:介入群と対照群の約9割が化学療法を受けており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 放射線療法:介入群と対照群の約9割が放射線療法を受けており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 内分泌療法:介入群と対照群の約5割が内分泌療法を受けており、両群間に有意差はありませんでした。

  • 分子標的療法:介入群と対照群の約4割が分子標的療法を受けており、両群間に有意差はありませんでした。

  • トリプルネガティブ:介入群と対照群の約3割がトリプルネガティブで、両群間に有意差はありませんでした。

以上の結果から、介入群と対照群は社会人口学的および臨床的特性において均質であると言えます。

したがって、Social Capital-Based Exerciseの効果を比較する際に、これらの特性が交絡因子となる可能性は低いと考えられます。

      

      

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Han J, et al. Long Term Effects of a Social Capital-Based Exercise Adherence Intervention for Breast Cancer Survivors With Moderate Fatigue: A Randomized Controlled Trial. Integr Cancer Ther. 2023 Jan-Dec;22:15347354231209440. doi: 10.1177/15347354231209440. 

 

表2は、Social Capital-Based Exerciseという介入の効果を様々な指標で比較したものです。

表2の内容を詳細に説明すると以下のようになります。

  • 表2は、介入群(Int.)と対照群(Cont.)の二つのグループに分けて、がん関連疲労(Fatigue)、生活の質(Quality of life)、身体活動(Physical activity)、うつ(Depression)、不安(Anxiety)、睡眠の質(Sleep quality)、社会的資本(Social capital)という7つの指標の平均値と標準偏差を示しています。

  • これらの指標は、介入前(M1)、介入後(M2)、介入後1か月(M3)、介入後6か月(M4)の4つの時点で測定されました。

  • 表2から分かることは、介入群ではがん関連疲労の行動的・重症度(Behavioral/severity)と身体活動が介入後に有意に改善したことです。対照群では、これらの指標に有意な変化は見られませんでした。

  • また、両群ともに、睡眠の質、うつ、不安、生活の質は介入後に改善傾向にあることが分かります。しかし、これらの指標については、介入群と対照群の間に有意な差は見られませんでした。

  • 社会的資本については、介入群と対照群の間に有意な差は見られませんでしたが、介入群では介入後にわずかに増加し、対照群ではわずかに減少する傾向が見られました。

       

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この図は、Social Capital-Based Exerciseの介入とコントロールのグループにおける、疲労、社会資本、身体活動、睡眠の質、うつ、不安、生活の質という7つの変数の平均値の変化を示しています。

以下に、各変数について説明します。

  • 疲労: 介入グループは、12週間の介入後(M2)に、行動的/重症度の疲労がコントロールグループよりも有意に低下しました。しかし、その後の1か月(M3)と6か月(M4)では、両グループともに疲労が減少し、有意差は見られませんでした。感情的、感覚的、認知的/気分的な疲労についても、同様の傾向が見られました。

  • 生活の質: 両グループともに、12週間の介入後(M2)に、生活の質が有意に向上しました。その後の1か月(M3)と6か月(M4)でも、両グループともに生活の質が高くなりましたが、グループ間に有意差はありませんでした。

  • 身体活動: 介入グループは、12週間の介入後(M2)に、身体活動がコントロールグループよりも有意に増加しました。しかし、その後の1か月(M3)と6か月(M4)では、両グループともに身体活動が増加し、有意差は見られませんでした。

  • うつ: 両グループともに、12週間の介入後(M2)に、うつが減少しましたが、有意差はありませんでした。その後の1か月(M3)と6か月(M4)でも、両グループともにうつが低くなりましたが、グループ間に有意差はありませんでした。

  • 不安: 両グループともに、1か月(M3)と6か月(M4)の介入後に、不安が有意に減少しました。しかし、グループ間に有意差はありませんでした。

  • 睡眠の質: 両グループともに、12週間の介入後(M2)に、睡眠の質が改善しましたが、有意差はありませんでした。その後の1か月(M3)と6か月(M4)でも、両グループともに睡眠の質が高くなりましたが、グループ間に有意差はありませんでした。

  • 社会資本: 両グループともに、12週間の介入後(M2)に、社会資本が増加しましたが、有意差はありませんでした。6か月(M4)の介入後では、両グループともに社会資本が減少しましたが、グループ間に有意差はありませんでした。

        

       

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Han J, et al. Long Term Effects of a Social Capital-Based Exercise Adherence Intervention for Breast Cancer Survivors With Moderate Fatigue: A Randomized Controlled Trial. Integr Cancer Ther. 2023 Jan-Dec;22:15347354231209440. doi: 10.1177/15347354231209440. 

 

able 3は、Social Capital-Based Exerciseの介入と時間の効果について一般化推定方程式(GEE)モデルを用いて分析した結果を示しています。

介入群と対照群の間で、疲労、生活の質、身体活動、うつ、不安、睡眠の質、社会資本という変数について、介入前(M1)、介入後(M2)、介入後1か月(M3)、介入後6か月(M4)の時点での平均値と信頼区間を比較しています。

また、介入と時間の交互作用項も含めて、各変数について有意な差があるかどうかを検定しています。

Table 3の内容を詳細にわかりやすく説明すると、以下のようになります。

  • 疲労の全体的なスコアは、両群ともに介入後(M2)、介入後1か月(M3)、介入後6か月(M4)の時点で、介入前(M1)に比べて有意に低下しています。これは、介入によって疲労が軽減されたことを示しています。しかし、介入群の疲労の低下が対照群よりも有意に大きかったということはありませんでした。ただし、疲労のうち行動的/重症度の部分については、介入後(M2)の時点で、介入群の低下が対照群よりも有意に大きかったことが分かりました。

  • 生活の質のスコアは、両群ともに介入後(M2)、介入後1か月(M3)、介入後6か月(M4)の時点で、介入前(M1)に比べて有意に上昇しています。これは、介入によって生活の質が改善されたことを示しています。しかし、介入群の生活の質の上昇が対照群よりも有意に大きかったということはありませんでした。つまり、両群ともに生活の質の向上の傾向が似ていたと言えます。

  • 身体活動のスコアは、全体的なモデルでは介入の効果が有意ではありませんでした。しかし、介入後(M2)の時点で、介入群の身体活動の増加が対照群よりも有意に大きかったことが分かりました。これは、Social Capital-Based Exerciseが身体活動の継続性を高める効果があったことを示しています。しかし、介入後1か月(M3)と介入後6か月(M4)の時点では、両群ともに身体活動のスコアが似ていたことが分かりました。

  • うつと不安のスコアは、両群ともに介入後1か月(M3)と介入後6か月(M4)の時点で、介入前(M1)に比べて有意に低下しています。これは、介入によってうつと不安が軽減されたことを示しています。しかし、介入群のうつと不安の低下が対照群よりも有意に大きかったということはありませんでした。つまり、両群ともにうつと不安の改善の傾向が似ていたと言えます。

  • 睡眠の質のスコアは、両群ともに介入後(M2)、介入後1か月(M3)、介入後6か月(M4)の時点で、介入前(M1)と比べて有意な変化がありませんでした。これは、介入によって睡眠の質に影響がなかったことを示しています。また、介入群と対照群の間にも睡眠の質について有意な差がありませんでした。

  • 社会資本のスコアは、両群ともに介入後(M2)と介入後6か月(M4)の時点で、介入前(M1)と比べて有意な変化がありませんでした。これは、介入によって社会資本に影響がなかったことを示しています。また、介入群と対照群の間にも社会資本について有意な差がありませんでした。

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考察

                                      

このプログラムは、12週間の実施後に、行動的・重症度の疲労と運動量において、対照群よりも有意に改善したことがわかりました。

つまり、このプログラムに参加した患者さんは、疲労が日常生活に及ぼす影響が減り、運動する時間や強度が増えたということです。

これは、運動が疲労のメカニズムに関係する生理学的、免疫学的、行動的な要因に良い影響を与えることを示唆しています。

また、社会的資本の活用が、運動の動機づけや継続に役立った可能性もあります。

同じ境遇の仲間と一緒に運動することで、運動に対する正の社会的規範が形成され、グループのメンバーとのつながりや支援が得られたのでしょう。

次に、このプログラムは、1ヶ月後と6ヶ月後の追跡調査では、疲労や運動量において、対照群との有意差が見られなくなりました。

しかし、両群ともに、疲労や生活の質、不安などが、実施前に比べて有意に改善していました。

これは、このプログラムが短期的な効果はあるものの、長期的な効果は持続しないことを示しています。

しかし、対照群も同様に改善したことから、自然な経過による疲労の減少や、テキストメッセージによる動機づけの効果も考えられます。

また、この研究の対象者は、診断から2年以内の患者さんが多かったことも影響しているかもしれません。

以前の研究では、乳がん患者さんの疲労や生活の質は、診断から2年経過すると自然に回復することが報告されています。

したがって、このプログラムの効果をより正確に評価するには、より長期間の追跡調査や、より多様な患者さんの参加が必要です。

最後に、このプログラムは、抑うつ、睡眠の質、社会的資本については、有意な効果を示しませんでした。

これは、このプログラムの内容や期間が、これらの要因に影響を与えるには十分ではなかったことや、測定方法の問題などが原因として考えられます。

今後の研究では、より精密な測定法や、より多様な心理社会的介入を組み合わせたプログラムの開発が望まれます。

以上が、この論文の考察の内容をまとめたものです。

このプログラムは、乳がん患者さんの疲労を改善するための有望な方法の一つと言えるでしょう。

しかし、その効果を持続させるためには、さらなる研究や改善が必要です。

乳がん患者さんの疲労に関心のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

                    

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2022年6月24日

    

まとめ
・乳がん患者のがん関連疲労を改善するためのSocial Capital-Based Exerciseの長期的な効果を検証した。

・Social Capital-Based Exerciseとは、仲間と一緒に運動したり、リーダーシップや自己表現のスキルを学んだりすることで、運動を続けるモチベーションや支援を高めるプログラムです。

・このプログラムに参加した乳がん患者、12週間後には行動的・重症度のがん関連疲労が有意に低下し、身体活動量が有意に増加しました。

・しかし、この効果は1ヶ月後や6ヶ月後には持続しなかった。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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