座位行動を身体活動へ置き換えることは抑うつを軽減する 

今回は,運動特化型デイサービス施設を利用する虚弱高齢者を対象に,加速度計で評価した座位行動を身体活動時間に置き換えることと抑うつの関連について調査した研究を紹介します.

 

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活動量と全身状態や運動機能が関連しそうなことは想像つきますが、活動性は心理面とも関係するともいわれています。

 

実際に、心理的に不安やうつがある方は活動量が低下していますし、逆もまた多い印象ですね。

心理面を改善するためにも、まずは動くことから始めましょうと指導することも多いです。

それでは、実際に座りっぱなしの時間を活動時間に変えれば、心理面に改善は認められるのでしょうか?

 

そこで、今回は、運動特化型デイサービス施設を利用する虚弱高齢者を対象に,加速度計で評価した座位行動を身体活動時間に置き換えることと抑うつの関連について調査した研究を紹介します.

まとめ
・運動特化型デイサービス施設を利用する虚弱高齢者を対象に,加速度計で評価した座位行動を身体活動時間に置き換えることと抑うつの関連について調査した研究を紹介。

・低強度身体活動時間は抑うつとの関連を示した.。

・1 日10分の座位行動と等量の低強度身体活動への置き換えが,抑うつの改善との関連を示した.

・身体に負荷のかかりにくい軽い運動でも、心理面に対しては十分な効果が期待できますので、できる範囲での運動を積極的に行いましょう。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、運動特化型デイサービス施設を利用する虚弱高齢者を対象に,加速度計で評価した座位行動を身体活動時間に置き換えることと抑うつの関連について調査した内容になっています。

「荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号」 2022年に発行された最新の論文になります。

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対象

対象者はA社が管理運営する運 動特化型デイサービスのうち東京都内 5 施設を週 1 回以 上利用する総合事業対象者ならびに要支援・要介護高齢 者791名とした.除外基準は重度のコミュニケーション 障害を有する者,認知症または認知症が疑われる者とし た.研究実施者が施設を訪問し,対面にて研究説明を行 い,研究への参加協力を依頼した.その結果,146名から 質問紙調査ならびに活動量計を 1 週間装着することに協 力することへの同意を得た.

荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号

本研究では,2019年10月28日~2020 年 5 月24日に実施した「座りすぎを解消させる技術を加えた新しい介護予防運動プログラム の開発と効果検証」のベースライン調査データを用いて調査を行っています。

質問紙調査は自記式 としたが,自己対応が難しい者は,家族あるいは施設従 事者が本人より対面にて聞き取り,回答を得ています.

調査回答時に認知症が疑われた者 7 名を除く 139名のデータを最終的な解析に用いています.

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方法

基本属性および身体的健康度 自記式の調査票を用いて,年齢,性,介護度,婚姻状 況(未婚, 既婚, 離死別),教育歴(小学校卒, 中学校卒,高等学校卒, 短大・専門学校卒, 大学卒以上),身体的健 康度,睡眠状況(十分とれている, まあまあとれている, あまりとれていない, まったくとれていない),同居状 況(一人暮らし, 夫婦のみ, 親と子供・他の親戚との同居 を含む二世帯以上同居)を評価した.

対象者の抑うつの程度は,高齢者用うつ尺度短縮版- 日本語版(Geriatric Depression Scale-Short VersionJapanese;以下, GDS-S-J)27)で評価した.

座位行動および身体活動の計測には, 3 軸加速度計を 内蔵した活動量計(Active style Pro HJA-750C, オムロン ヘルスケア社製, 京都)を用いた.

荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号

本研究は、基本属性および身体的健康度,抑うつ,座位行動及び身体活動について調査を行っています。

活動量に関しては、3.0 METs以上を中高強度身体活動と定義し,座位行動,低強度身体活動,中高強度身体活動および加速度計の装着時間につ いて算出しています。

 

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結果

荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号

こちらの表は、対象者の基本属性になります。

対象者全体の64%が女性であり,平均年齢 は83.1±5.9歳でした.

介護度は,総合事業対象者が 5.0%,要支援Ⅰが41.0%,要支援Ⅱが27.3%,介護度 1 が12.2%,介護度 2 が12.8%,介護度 3 ・ 4 がそれぞれ 1.4%,介護認定非該当者が4.3%です.

GDS-S-J得点は平均4.0± 2.9点,カットオフ値 6 点以上は28.8%でした。

総座位時間は 1 日平均562.7±95.7分,低強度身体活動は 1 日平均263.4 ±94.5分,中高強度身体活動は 1 日平均8.7±9.7分,活動量計の装着時間は834.2±103.2分でした.

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荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号

こちらの表は、座位時間,低強度および中高強度身体活動時間と抑うつの関連を示しています。

低強度身体活動時間はGDS-S-J得点と負の関連を示しました.

また,1 日10分の座位行動と等量の低強度身体活動への置き換えが,GDS-S-J得点と統計学的に有意な負の関連を示しました.

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結論

本研究から得られた 結果は,総合事業対象者,要支援・要介護認定を受けた 虚弱高齢者において,座位行動を減らし,低強度身体活 動を賦活させていくことが抑うつ改善方策の 1 つとなる 可能性があるという貴重な知見である.今後,座位行動 の低強度身体活動への置き換えという視点をもって虚弱 高齢者のメンタルヘルスの維持・改善に向けた座りすぎ 対策を推進していくことが重要である

荒木 邦子, 安永 明智, 柴田 愛, 他. 虚弱高齢者における加速度計評価による座位行動を身体活動へ置き換えることと抑うつの横断的関連: Isotemporal Substitution modelによるアプローチ. 体力科学/71 巻 (2022) 2 号

健常高齢者だけでなく虚弱高齢者においても,日常生活の中で座位行動を低強度身体活動に置き換えることが抑うつにより良い影響をもたらす可能性が示唆されたという結果になっています.

座りっぱなしより、立位や歩行といった軽い運動は心理面にも好影響をもたらすようですね。

運動機能ばかりでなく、ウォーキングなんかは心理面にとっても効果が期待できます。

 

負荷の高い中強度の運動でなく、低強度の運動で効果があったというのがポイントです。

身体に負荷のかかりにくい軽い運動でも、心理面に対しては十分な効果が期待できますので、できる範囲での運動を積極的に行いましょう。

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まとめ
・運動特化型デイサービス施設を利用する虚弱高齢者を対象に,加速度計で評価した座位行動を身体活動時間に置き換えることと抑うつの関連について調査した研究を紹介。

・低強度身体活動時間は抑うつとの関連を示した.。

・1 日10分の座位行動と等量の低強度身体活動への置き換えが,抑うつの改善との関連を示した.

・身体に負荷のかかりにくい軽い運動でも、心理面に対しては十分な効果が期待できますので、できる範囲での運動を積極的に行いましょう。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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