身体的プレフレイルは,立ち上がり動作,転倒恐怖感,認知機能が関連する

今回は,通いの場に参加する健常高齢者と身体的プレフレイル高齢者を比較して関連要因を身体・心理・社会面に着目して検討した研究を紹介します.

 

このブログでは高齢者でもがん患者さんでもフレイルの予防が重要なことを紹介してきました。

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しかし、1 万人を超える高齢者の追跡では 2 年半後 にフレイルから健常への改善割合は 6.5%,プレフレイ ルから健常へは 32.5%でプレフレイルはフレイルと比 べると健常への改善割合が高いという報告もあります。

つまり、プレフレイルの方が改善しやすいということですので、フレイルに陥る前に早めの対応が必要というわけですね。

そのためには、プレフレイル高齢者がどのような問題点を抱えているかを整理して、対応策を検討する必要があると思われます。

 

そこで、今回は、通いの場に参加する健常高齢者と身体的プレフレイル高齢者を比較して関連要因を身体・心理・社会面に着目して検討した研究を紹介します.

まとめ
・通いの場に参加する健常高齢者と身体的プレフレイル高齢者を比較して関連要因を身体・心理・社会面に着目して検討した研究を紹介。

・身体的プレフレイル該当群 102 名,健常である身体的プレフレイル 非該当群86 名で解析を行った。

・通いの場に参加する高齢者の身体的プレフ レイルには,立ち上がり着座動作といった運動機能低下に加えて,転倒恐怖感や認知機能低下も関連していた。

・プレフレイル改善のためには、運動機能を高めるだけでなく、心理面や認知面の評価や改善を図る必要がある考えられる。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、通いの場に参加する健常高齢者と身体的プレフレイル高齢者を比較して関連要因を身体・心理・社会面に着目して検討した内容になっています。

「森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022) 」 2022年に発行された最新の論文になります。

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対象

森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022)

対象は平成 29 年 4 月から平成 29 年 12 月の期間に通いの場 13 箇所のいずれかに参加していた地域在住高齢者 223 名と し,自記式調査票を用いた調査と検査測定を実施しています。

このうち分析対象の選択基準は日本版 CHS 基準を用いています。

除外基準として, 1)65 歳未満,2)要介護 ・要支援の認定を受けている, 3) 循環器疾患,呼吸器疾患,神経疾患,整形外科疾患を 認め,かかりつけ医より運動実施の制限を指示されてい る,4)CHS 基準で 3 項目以上該当の身体的フレイルとしました。

最終的な分析対象は,身体的プレフレイル該当群 (以下,該当群)102 名,健常である身体的プレフレイル 非該当群(以下,非該当群)86 名の計 188 名です。

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方法

目的変数は身体的プレフレイル該当・非該当,説明変数を基本属性,身体,心理,社会的側面としたロジスティック回帰分析を行った。

森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022)

分析方法として,基本属性,身体的要因,生活機能,認知機能,精神・心理的要因,社会的要因のうちで,単変量解析の結果で有意 であった項目と先行研究で関連があるとされている 項目として,年齢・性別・疾患の有無・老研式総合計・ GDS-5・転倒不安感・基本チェックリストの認知機能・ LSNS-6・片脚立位時間・CS-30 の計 10 項目を説明変数 として抽出して二項ロジスティック回帰分析を行っています。 

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結果

森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022)

こちらの表は、身体的プレフレイルの有無で群分けして比較した結果になります。

身体的プレフレイル該当群で有意差を認めた変数は,年齢が75 歳以上,老研式総合計が 13 点未満の非自立,GDS-5 でうつ該当,基本チェックリスト認知項目低下あり,片脚立位時間 ・CS-30 ・LSNS-6 がそれぞれ低値でした。

森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022)

こちらはロジスティック回帰分析の結果になります。

身体的プレフレイルとの関連で有意差を認めた項 目は, 転倒不安感・基本チェックリスト認知項目・ CS-30でした。

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結論

本研究は,通いの場に参加する身体的プレフレイル高 齢者における関連要因を身体・心理・社会面に着目して 検討した。身体的プレフレイル該当 54.3%,非該当 45.7% であり,2 群共に通いの場参加後に良好な心理社会的な 変化を示した。

身体的プレフレイルとの関連で有意差を 認めた項目は,転倒不安感・基本チェックリスト認知項 目・CS-30 であった。通いの場に参加する身体的プレフ レイル高齢者では,立ち上がり着座動作に加えて,転倒 恐怖感や認知機能に関する評価の実施が求められる。

森 優太 , 竹田 徳則. 通いの場参加高齢者における身体的プレフレイルと関連要因の検討 ―身体・心理・社会面に着目した横断研究―. 日本予防理学療法学会雑誌/1 巻 (2022)

通いの場に参加する高齢者の身体的プレフ レイルには,立ち上がり着座動作といった運動機能低下に加えて,転倒恐怖感や認知機能低下も関連するようです。

身体的なプレフレイルであっても、認知面や心理面が影響するというのは興味深い結果ですね。

運動機能を高めるだけでなく、心理面や認知面の評価や改善を図る必要があるということですね。

 

特に認知機能とフレイルや要介護との関連性は以前もこのブログでも紹介していますし、先行研究も多いようです。

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医療者も高齢者自身も認知機能低下に注意しておく必要がありますね。

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まとめ
・通いの場に参加する健常高齢者と身体的プレフレイル高齢者を比較して関連要因を身体・心理・社会面に着目して検討した研究を紹介。

・身体的プレフレイル該当群 102 名,健常である身体的プレフレイル 非該当群86 名で解析を行った。

・通いの場に参加する高齢者の身体的プレフ レイルには,立ち上がり着座動作といった運動機能低下に加えて,転倒恐怖感や認知機能低下も関連していた。

・プレフレイル改善のためには、運動機能を高めるだけでなく、心理面や認知面の評価や改善を図る必要がある考えられる。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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