大腸がん手術後の合併症は高齢だから増えるわけではない

今回は、大腸がん術後の合併症の発症と年齢の関係性を調査した論文を紹介します。

 

最近は、高齢がん患者さんのことについての論文をよく紹介しています。

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最近は長生きする方が増えてきているので、高齢であっても手術などの治療を行うことが増えていますね。

だからこそ、元気に長生きするためにフレイル予防が大事になってきます。

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高齢になると手術後の合併症の発生などが心配になってきますが、年齢が高くなるにつれて合併症は発生しやすくなるのでしょうか?

そこで今回は、大腸がん術後の合併症の発症と年齢の関係性を調査した論文を紹介します。

まとめ
・大腸がん術後の合併症の発症と年齢の関係性を調査した論文を紹介。

・高齢だからと言って、術後に合併症が多くなり、早期に死亡するというわけではないようである。

・年齢に関わらずフレイルや栄養指数が、大腸がん手術と無関係の死亡率と関係していたため、これらの要因を術前に確認することは重要だと考えられる。

・何歳になっても治療の選択肢を増やすためにも、しっかり食事と運動を頑張りましょう!

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、大腸がん術後の合併症の発症と年齢の関係性を調査した内容になっています。

「Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148..」、2022年に発行された新しい論文です。

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対象

The present study was performed retrospectively on 346 patients (median age 70.5 years; range, 29–103 years) who underwent elective colorectal resection with curative intent (R0 and R1 resection) for primary colon cancer (n=283) or rectal cancer (n=63) between January 2013 and December 2017 at St. Mary’s Hospital. Patients with stage IV CRC (n=67) and those who underwent emergency surgery (n=23) were excluded from the study. Informed consent was obtained from individual patients and all data was collected retrospectively. The study was conducted in accordance with the Declaration of Helsinki (as revised in 2013) and was approved by the institutional review board of St. Mary’s Hospital in Kurume, Japan (approval number 20-0701).

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

対象は、2013年1月から2017年12月までの間にセントメアリーズ病院で原発性結腸がん(n = 283)または直腸がん(n = 63)に対して手術を行った346名です。

ステージIVの患者(n = 67)および緊急手術を受けた患者(n = 23)は研究から除外されています。

年齢の中央値が70.5歳ですが、29-103歳と幅広い年齢層となっています。103歳でも手術って行えるものなんですね!!

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方法

Patients were divided into three age groups: younger than 60 (n=47), between 60 and 79 (n=218), and 80 years and older (n=81), as younger age, elderly age, and very elderly age group, respectively, as previously reported (9,1618). Preoperative data included gender, comorbidity (cardiovascular disease, hypertension, cerebral disease, renal disease, respiratory disease, diabetes mellitus, liver disease, cancer in other organs), American Society of Anesthesiologists Physical Status (ASA-PS) class, body mass index (BMI), and preoperative blood tests [hemoglobin, albumin, carcinoembryonic antigen (CEA), and prognostic nutrition index (PNI) calculated as 10 × serum albumin (g/dL) + 0.005 × total lymphocyte count (/mm3)] (19). The modified frailty index was determined by four comorbid conditions and one functional variable (13,20): a history of chronic obstructive pulmonary disease, congestive heart failure within 30 days of operation, diabetes mellitus requiring oral agents or insulin, hypertension requiring medication, and functional health status before operation (independent, partially independent, dependent). Each variable represents 1 point, for a total possible score of 5 points. A score of 2 or greater indicates frailty status (21). Intraoperative data included blood loss, operation time, and surgical method (open vs. laparoscopic). Tumor-related data included tumor location (right-sided/cecum to splenic flexure, left-sided/splenic flexure to sigmoid colon, or rectum), tumor margin status (R0/R1), tumor differentiation (well and moderate/poor and mucin), and tumor stage according to the 7th edition of the Union of International Cancer Control (UICC) (22). Immediate postoperative data included length of hospital stay, morbidity as denoted by a Clavien-Dindo class of III or greater (23), mortality within 30 days, and use of adjuvant chemotherapy. Parameters for postoperative outcome included mortality at 1 and 5 years in addition to cause of death, from which overall survival and disease-free survival rates were determined. Cause of death was categorized into CRC-related and “other”, which encompassed respiratory disease, cardiovascular disease, other primary cancer, sepsis, etc. The median follow-up period was 45.6 months (range, 0.2–92.1 months).

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

60歳未満(n = 47)、60〜79歳(n = 218)、80歳以上(n = 81)の若い年齢、高齢者、および非常に高齢の年齢グループに分けて比較しています。

術前データには、性別、併存疾患米国麻酔学会の身体状態(ASA-PS)クラス、体重指数( BMI)、および術前血液検査[ヘモグロビン、アルブミン、CEA、栄養指数(PNI )を調査しています。

また、慢性閉塞性肺疾患の病歴、手術から30日以内のうっ血性心不全、経口剤またはインスリンを必要とする糖尿病、投薬を必要とする高血圧、および手術前の機能的健康状態を評価して、2項目以上に該当した場合にフレイルと判定しています。

術中データには、出血量、手術時間、手術方法(開腹、腹腔鏡)を調査しています。

そして、腫瘍の位置や腫瘍の病期などの、がんの状態も調査しています。

術後のデータには、入院期間、術後合併症の発生率、30日以内の死亡率、補助化学療法の使用、1年および5年での死亡率、全生存率および無病生存率を調査しています。

追跡期間の中央値は45.6か月(範囲、0.2〜92.1か月)となっています。

4年近く追跡している長期的な研究ですね。

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結果

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

こちらの表は対象者の特徴を示しています。

346人の患者のうち、47人(13.6%)は60歳未満、218人(63.0%)は60歳から79歳、81人(23.4%)はそれぞれ80歳以上でした。

女性の方が年齢層が高くなっています。

3つのグループ間でBMIに有意差はありませんでした。

80歳以上の患者は、他の年齢層よりも併存疾患の発生率が高く、フレイル指数の割合が高くなっています。

さらに、80歳以上のグループでは栄養指数、ヘモグロビン、およびアルブミンのレベルが有意に低く、CEAのレベルが若いグループよりも有意に高いことが明らかになりました。

  

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

こちらの表は、3グループ間の手術やがんの状態を比較した結果です。

手術の成果は3つのグループ間で変わりありませんでした。

腹腔鏡手術と開腹手術、出血量、手術時間に統計的な違いはありませんでした。

がんの病期などの、がんの状態や手術の結果もグループ間で差は認めていません。

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Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

こちらは3つの年齢グループ間の術後直後の経過の違いを示しています。

手術後の入院期間(平均±標準偏差)は、60歳未満のグループで17.2±15。6日、60〜79グループで20.9±17。7日、80歳以上のグループで21.8±17と高齢になるほど長くなっています。

術後30日以内の合併症の発生率、死亡率は、年齢によって差は認められませんでした

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

こちらのグラフは長期の無病生存率と全生存率を年齢別に比較しています。

左の無病生存率は年齢で差は認めません。

しかし、全生存率では、長期になると80歳以上の患者さんの生存率が低下していく結果となっています。

 

死因の要因として単変量解析では、腫瘍の辺縁状態、がんのステージ、CEA、腫瘍の分化、合併症発生率、BMI、手術による失血が死因に影響を与える重要な要因であることが明らかになりました。

多変量解析では、がんの状態、がんのステージ、CEA、腫瘍の分化、および術後の入院が重要な危険因子であることが判明しました。

年齢は術後の死亡の重要な要因ではありませんでした。

また、大腸がん手術と無関係な死因の要因としては、フレイルや栄養指数が関連していました。

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結論

Elderly patients undergoing CRC surgery appeared to enjoy similar oncological benefits as younger age groups. Since both modified frailty index and PNI were correlated with mortality unrelated to CRC, preoperative assessment of these factors can be important for predicting outcome and selecting patients for prehabilitation.

Ogata T, Yoshida N, Sadakari Y, et al. Colorectal cancer surgery in elderly patients 80 years and older: a comparison with younger age groups. J Gastrointest Oncol. 2022 Feb;13(1):137-148

大腸がん手術を受けている高齢の患者は、若い年齢層と同様に手術の効果が期待できると考えられそうです。

高齢だからと言って、術後に合併症が多くなり、早期に死亡するというわけではないようです。

しかし、年齢に関わらずフレイルや栄養指数が、大腸がん手術と無関係の死亡率と関係していたため、これらの要因を術前に確認することは重要だと考えられます。

フレイルや栄養状態不良があると、プレリハビリテーションの対象となる患者を選択するために重要です。

年齢が問題になるというわけでなく、高齢になるにつれて体力低下や栄養状態不良になることが、手術の成績に関係するということですね。

何歳になっても治療の選択肢を増やすためにも、しっかり食事と運動を頑張りましょう!

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まとめ
・大腸がん術後の合併症の発症と年齢の関係性を調査した論文を紹介。

・高齢だからと言って、術後に合併症が多くなり、早期に死亡するというわけではないようである。

・年齢に関わらずフレイルや栄養指数が、大腸がん手術と無関係の死亡率と関係していたため、これらの要因を術前に確認することは重要だと考えられる。

・何歳になっても治療の選択肢を増やすためにも、しっかり食事と運動を頑張りましょう!

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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