高齢者の要介護、要支援のリスクを高める項目は? 

今回は,地域在住高齢男性と女性における新規要介護認定発生と健康関連状態との関連性を明らかにすることを目的として調査を行った論文を紹介します.

 

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介護予防を行うためには、どのような項目に該当すると要介護になりやすいかを把握しておく必要がありますね。

 

そこで、今回は,地域在住高齢男性と女性における新規要介護認定発生と健康関連状態との関連性を明らかにすることを目的として調査を行った論文を紹介します.

まとめ
・地域在住高齢男性と女性における新規要介護認定発生と健康関連状態との関連性を明らかにすることを目的として調査を行った論文を紹介。

・男性 では,運動器機能および主観的健康観において,否定的 な回答をした者の要介護認定の新規発生リスクが高くなっていた。

・女性では,運動器機能,認知機能および主観的健康観において否定的に回答した人ほど要介護認定の新規発生リスクが高くなっていた。

・男女で要介護のリスクになる項目が異なる可能性が考えられ、介護予防も男性・女性で適切な対応を考慮する必要があるのかもしれない。

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今回紹介する研究の概要

今回紹介する論文は、地域在住高齢男性と女性における新規要介護認定発生と健康関連状態との関連性を明らかにすることを目的として調査を行ったという内容になっています。

「林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号」 2022年に発行された最新の論文になります。

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対象

本研究の対象者は,2017年3月時点で美濃加茂市に在住する65歳から78歳の全高齢者であった.ただし,同時期に介護予防・日常生活圏域ニーズ調査(以下,ニーズ調査)が実施されたため,ニーズ調査のために無作為に選択された2,000名およびその時期に既に要介護認定を受けていた者は本調査から除き,5,900名を研究対象者とした.

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

美濃加茂市の高齢者全体に対する大規模なアンケート調査となっております。

1000名以上を対象にするというのはかなり大変な調査となりますね。

質問調査表を配布しているので、集計をするだけでも大変な労力です。

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方法

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

本研究は厚生労働省の基本チェックリストを参考にして独自に作成された、こちらの質問紙調査票を用いて行っています

内容は,健康に関する30項目となっています。

 

質問紙調査票は4,417名(男性2,129名,女性2,288名)から回答を得ました(回収率74.9%).

調査回答者4,417名のうち,質問紙調査票に欠損データがあった男性327名,女性486名は分析対象から除外して、最終的な分析対象者は,男性1,802名,女性1,802名の合計3,604名(全対象者の61.1%)でした.

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結果

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

こちらの表は、男女別の要介護のリスクになる項目の結果を示しています。

男性 では,運動器機能および主観的健康観において,否定的 な回答をした者の要介護認定の新規発生リスクが高くなっていました.

女性では,運動器機能,認知機能および主観的健康観において否定的に回答した人ほど要介護認定の新規発生リスクが高くなっていました.

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

こちらの表は、男性の要介護のリスク項目を質問ごとに解析しています。

男性に関しては,運動器機能の「1回10分以上の運動をする機会が週3日以上ありますか」の項目を除くすべての項目が、要介護のリスクとなっています。

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

こちらの表は、女性の要介護のリスク項目を質問ごとに解析しています。

女性に関しては,運動器機能のすべての項目および認知機能の「もの忘れが多いと感じますか」を除くすべての項目において,要介護認定の新規発生状況に有意な関連がありました。

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結論

本研究では,地域在住高齢者の要介護認定の新規発生リスクとなる健康関連状態は,性別で異なることを明らかにした.女性においては,運動器機能,主観的健康観だけではなく,認知機能の低下もまた要介護認定の新規発生リスクとなる可能性がある.本研究結果は地域在住高齢者を対象とした作業療法実践へ応用可能な基礎的資料になり得る.地域での作業療法の発展のためには,本研究の限界を考慮したさらなる研究や実践の効果検証も必要である.

林 浩之, 窪 優太, 林 尊弘, 他. 地域在住の高齢男性および女性の要介護認定発生リスクを高める健康関連状態 作業療法/41 巻 (2022) 2 号

運動機能や主観的健康感が要介護リスクと関係するのは予想できましたが、女性のみ認知機能が要介護リスクと関連するのは興味深い結果ですね。

考察では、地域在住高齢者の家庭内役割において,食事の支度や近所づきあい,神棚・仏壇の管理など,多くは女性のほうが実施しており、このような活動は認知機能が反映されるため,特に女性においては遂行の不備に他者から気づかれやすく介護保険申請に至ることもあると推測されると記載されています。

介護予防も男性・女性で適切な対応を考慮する必要があるのかもしれないですね。

 

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まとめ
・地域在住高齢男性と女性における新規要介護認定発生と健康関連状態との関連性を明らかにすることを目的として調査を行った論文を紹介。

・男性 では,運動器機能および主観的健康観において,否定的 な回答をした者の要介護認定の新規発生リスクが高くなっていた。

・女性では,運動器機能,認知機能および主観的健康観において否定的に回答した人ほど要介護認定の新規発生リスクが高くなっていた。

・男女で要介護のリスクになる項目が異なる可能性が考えられ、介護予防も男性・女性で適切な対応を考慮する必要があるのかもしれない。。

注意
このブログは、ガイドラインや論文などの根拠をもとに情報を発信していく予定です。

しかし、がんの病態や治療方法によっては、お読みになっているがん患者さんにはその情報が当てはまらない場合もあります。

記事の内容を参考に新しく何かを始める場合には、担当の医師や医療従事者にご確認いただくようお願いいたします。

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